村全体が寝静まる頃、白装束に緋袴を身につけた一人の女が村長の屋敷を訪れていた。彼女の名は美琴。数年前まで鈴音と共に自分たちの村を守っていた巫女である。
鈴音が旅に出てからまもなく、美琴もまた村を離れていた。鈴音を遠くから見守り、もしもの事があればすぐにでも鈴音のもとへ駆けつける事ができるように。
しかし、その鈴音の挙動が今朝から妙なのだ。
昨晩村の近くの湖へ美琴が駆けつけた時には、すでに妖怪は鈴音の笑い声によって退散した後だった。
その後、鈴音は村のほぼ中央にある屋敷に入ったまま一歩も外へ出ていない。いや、正確に言えば、居場所がつかめなくなっているのだ。
夕刻に妖怪の大群を一層した閃光は、鈴音の放ったあやけしの炎に間違いない。それに、村の周りに張りめぐらされてる結界も、鈴音のものだ。
鈴音の霊力が昔に比べて高まっているとはいえ、屋敷から一歩も外へ出ずに村の周りにこれだけの結界を張れるものではない。
昨晩の湖の妖怪、そして夕刻の妖怪の大群。今後も何が起こるか分からない。鈴音が屋敷の外にいるのだとすれば、一刻も早く本当の場所を掴まなければ、いざという時にお守りする事ができない。
幸い屋敷にはまだ灯りが点いており、玄関の戸を叩くと村長とおぼしき女がすぐに現れた。
「はて、このような顔の女子には、とんと心当たりがござらぬが」
美琴の差し出した似顔絵を見た村長は即答した。無論、美琴には納得できない。
「ここに来た事は間違いないのだ。隠しだてされれば身のためになりませぬぞ」
「そこまで強気な所をみると、何か居場所を知るための仕掛けでも? それともこの近くまで後をつけておったか? 相手はその事を知っておるのか?」
語気を強める美琴を面白がるかのように、村長が聞き返す。その態度に、美琴は苛立ちを隠せなかった。
「そなたには関係なかろう。早く質問に答えよ」
村長は眺めていた紙の表を美琴に向けた。そこには昔の、絶えず村人たちの心を和ませ続けていた鈴音の輝くような笑顔が描かれている。
「確かに並外れた霊力を持つ巫女が一人今朝ここに来たが、このような無邪気な顔ではござらぬ。何かの間違いであろう」
村長の言うとおり、今の鈴音は昔のような無邪気な笑顔を見せる事はない。だがそれでも似顔絵とまったく別人というわけではないのだし、巫女がここに来たのなら最初からそう言ってくれれば……いや、そのような事は今はどうでもよい。
美琴は怒りを抑えて尋ねた。
「今どこにいるのだ」
「そう慌てるでない。立ち話もなんだ。まずはこの村特産の茶でも召し上がり、我が村の巫女のもてなしを受けるがよい。さすれば少しは落ち着くじゃろう」
村長がそう答えたのに続いて、その隣に立っていた二人の巫女が声を揃えた。
「「どうぞ中へ。私たちが御案内いたしますわ」」
一体この者たちは何を考えているのか。質問に素直に答えようとせず相手の図星を言い当てて面白がるような無礼者たちと共に、ゆっくり茶など飲む気になる者がいると思っているのだろうか。
美琴の怒りが頂点に達した。
「あいにく茶など頂く気にはなれぬ。やはりここは強行手段を取らせて頂こう」
美琴は村長たち三人に向けて掌を突き出した。その掌から細い糸が何本も放たれる。粘着性の糸の先端が、三人の身体に貼り付いた。
「むむっ」
「ひゃうっ!」
二人の巫女が悲鳴を上げる。
糸は一瞬のうちに蜘蛛の巣のように広がり、三人は両手を上に上げた状態で拘束された。
「一体何の真似だ」
「これからそなたたちを拷問にかけるのだ」
村長の質問にそう答えた美琴は、自分の前髪を数本引き抜いた。そしてそれらを自分の口許へ持って行き、息を吹きかけて宙に舞わせた。
次に起こった現象に、村長たちは目を見開いた。
宙を舞う髪の毛がみるみるうちに人の姿に変化していく。片方の端が丸くなって頭となり、もう片方の端は枝分かれして足となった。そして頭の根元からは手とおぼしき枝が生える。
地面に降りた髪の毛は、全裸である以外美琴とそっくりな姿になっていた。
やがて村長たち三人は、何人もの美琴の姿をした物に取り囲まれていた。
「分身の術?」
村長の顔に初めて怯えの色が走った。
「一体何を」
年長の巫女が呟いく。
その呟きに答えるかのように、分身たちの手が一斉に動き始めた。
村長や二人の巫女の、大きく広げられた無防備な腋の下や脇腹に這わされた手の指が激しく蠕き、腰やお腹へと這い回る。
「きゃははは、くすぐったい!」
あまりのくすぐったさに、村長が叫んだ。
必死に身をよじらせようとするが、彼女を拘束した蜘蛛の巣はそれを許さず、それをいい事に美琴の分身の一人が敏感な脇腹や腋の下をくすぐり続け、もう一人の分身がなおも弱点を探るように腰やお腹に蠢く指を這い回らせる。
「くすぐったくて死ぬぅ!」
「もうだめぇっ! もうやめてぇっ! きゃはははぁっ!」
分身たちの激しい指の動きのくすぐったさに、二人の巫女がかん高い悲鳴と笑い声を上げる。
「それなら早く居場所を言いたまえ」
笑いもだえるる三人の女たちにそう言いながら、美琴は分身たちになおも激しく指を動かすよう念を送る。
分身とは言え、これまで妖怪との戦いのために鈴音を何度も激しく笑わせた指なのだ。女の身体の弱点を知り尽くしたその指でくすぐられれば、屈伏するのは時間の問題。
だがその時間が長ければ、鈴音を永久に失ってしまうかも知れないのだ。
激しさを増す分身たちの指の動きに、三人の女たちはなおも激しく笑い悶え続けた。
「鈴音さま、鈴音さま」
名前を呼ぶ揚羽の声に、鈴音は目覚めた。そして周りの光景に目を見開いた。
「ここは……」
あまりの不気味さに、思わず呟く鈴音。
そこは紅色の光で淡く照らされた、広い洞窟のような場所だった。しかし洞窟とは明らかに異なるのは、周りの壁や地面や天井が岩ではなく、紅色の肉で出来ている事だった。
「良くは分かりませんが、恐らく千手妖華の最深部かと」
鈴音の呟きに答えた目の前の揚羽の姿を見て、鈴音は息を飲んだ。生まれたままの姿で鈴音と同じように上に上げた両手を拘束されている揚羽は、紅色の肉でできた地面の上に立っているのではなく、その足が地面から生えているのだ。
肉に埋もれているのではない。その証拠に、揚羽の脹脛は下半分ほどが肌の色をしておらず、紅色に染まっている。
そして上に上げて拘束されている手も良く見ると、足と同じように天井の肉と融合しているのが見て取れた。
そして、鈴音は自分の手足もまた、揚羽と同じように紅色の光を放つ地面や天井の肉と同化している事に気付いた。
「こ、これは一体どういう事だ。我々の身体は一体どうなってしまったのだ」
「恐らく千手妖華と同化したのではと」
そう答えた揚羽は、このような状況であるにも関わらず、至って落ち着いていた。
「そんなバカな事が……」
「私は聞かされていました。千手妖華の生け贄となった者は、かの華の一部となって咲き誇るのだと」
「同化を解く方法はないのか?」
「分かりません」
揚羽が答えた時、二人から少し離れた場所で、肉でできた地面の一部が盛り上がり始めた。
「鈴音さま、あれは……」
鈴音は盛り上がる肉の塊に目を凝らした。膨らんで頭のような形になった部分が紅色から肌の色へと変化し、胴体や腕とおぼしき部分も徐々に形成されて行く。
やがて頭が髪の毛に覆われ、顔の部分に目や鼻が現れた。その顔に、鈴音は見覚えがあった。
「あれは……毬藻?」
「毬藻……あれが」
鈴音と揚羽が呟いた時、毬藻はもはや肉の塊ではなく、生まれたままの少女の姿をしていた。しかし、やはり鈴音や揚羽と同じように足先は肉の地面と融合ししており、異様にに長く伸びた腕もまた、手首の部分が地面の肉と繋がっている。
「お久しぶりです、鈴音さま」
鈴音の知っている毬藻の声だった。
「やはり毬藻なのか。その身体は一体どうしたというのだ」
「鈴音さまと同じ。この妖怪と同化したのです」
鈴音の質問に対し、そのおぞましい事実を、まるで当然の事であるかのように答える毬藻。その顔には微笑みすら浮かんでいた。
「我と共に我が村へ帰ろう。どうすればそれができる」
「残念ながら、その方法はありません。でも今はその必要もないのではなくて? 鈴音さまがここに残ればよいのですから。ここなら誰にも邪魔される事なく愛し合う事ができますわ。彼女たちがそうであったように」
毬藻の片方の腕が地面と繋がったまま、その一部が変形して掌となった。その手で近くの肉の壁を、めくるように開く。
開かれた壁の向こうには、さらに異様な光景が広がっていた。
その光景に、揚羽は眉をひそめた。
「あれは今まで生け贄になった村人たち」
揚羽の言うとおり、何人もの少女たちがそこにいた。
彼女たちもまた手や足を地面や天井と同化させ、互いに絡み合い、淫らな悲鳴とかん高い笑い声を上げ続けている。
相手の少女の大きく開かれた足の付け根の女の子の部分を貪る少女たちの唇と舌の激しい動きは、まるで喉の渇きを淫らな蜜で潤そうとしているかのよう。そして、ある者は蛇のように長く伸びた相手の腕に絡まれ、指先で腋の下を、腕から生えた細長い枝分かれした触手で胸の膨らみや全身を撫で回され、ある者は地面から伸びた長い首だけの少女に胸の蕾を吸われている。地面や壁から生えた紅色の腕に全身をくすぐられている少女たちもいる。
「きゃははは、くすぐったい!」
「だめぇ、こんなの、気持ちよすぎておかしくなりそう」
「こちょこちょされながら、あそこチュルチュル吸われるの、すごくいいっ」
少女たちの淫らな叫び声に呆然としていた揚羽は、自分の周りの変化に気付き、顔をこわばらせた。
地面の肉が何箇所も盛り上がり、人の頭の姿になって行く。同時に紅色の腕の形をした触手が天井や地面から伸び、揚羽の身体に絡み付く。
「なっ、何?」
地面から生えた少女たちの唇が揚羽の胸の膨らみや足の付け根の女の子の部分に吸いつき、嘗めしゃぶる。同時に手の形をした触手が揚羽の腋の下や腰、太股に指を這わせ、蠢かせる。
「全身をくすぐられながら女の子の感じやすい部分を吸われる気分はいかがかしら」
毬藻が楽しそうに揚羽に尋ねる。
「いやぁっ、だめぇっ、くすぐったい、きゃはははぁっ」
少女たちの淫らな唇と舌の動き、そして触手によるくすぐりに、揚羽はたまらず淫らな悲鳴と笑い声を上げる。
「揚羽どのっ!」
そう呼びかけた鈴音の目の前に、毬藻が立っていた。
「よそ見をしてはダメです、鈴音さま。あなたのお相手は、この私なのですから」
毬藻の髪の毛が波打ちながら鈴音に向けて長く伸び始めた。
「できる事なら、私の指先でじっくりと鈴音さまの笑顔を取り戻して差し上げたいのですが、今の私にとって、それはとても危険な事。ですからそのかわり、私の女の命で気持ち良くして差し上げますわ」
毬藻の髪が鈴音の胸の膨らみや腋の下、そして脇腹へとはい回る。
「ひぃっ!」
何千本という小さな指に撫で回されているかのような感触に、鈴音は身を震わせた。
「くっ、くすぐったい。やめてくれ、このままでは……くっ、んあぁっ」
髪の毛のくすぐったさに思わず笑い出しそうになるのを、鈴音は必死に堪えた。もしも笑ってしまったら、妖怪と同化している毬藻がどうなってしまうか分からないのだ。
「本当に敏感な身体ですこと。私のために笑い声をこらえて下さっているのですわね。でも大丈夫ですわ。すぐに気持ち良くなりますから。それに、邪悪な存在を祓う笑い声も、ここを悪戯される邪な悦びが混じればその力を失うのでしょう?」
毬藻の髪が鈴音の胸の膨らみをはい回り、敏感な蕾を悪戯する。同時に毬藻の指が、鈴音の足の付け根の敏感な女の部分をまさぐった。
指によってかき分けられ、内側をかき回された花びらの奥から、淫らな蜜が滴る。
「ほおら、鈴音さまのここ、もうこんなに濡れてますわ」
蜜の絡み付いた指先を、見せつけるように鈴音の目の前に持っていく毬藻。
「気持ち良くてたまらないのですね。それでは、もっともっと気持ちよくしてさしあげますわ」
「ひいっ!」
鈴音は再び身を震わせた。毬藻の髪の毛が、鈴音の濡れそぼった敏感な女の部分を悪戯し始めたのだ。
割れ目や花びらの内側と外側、そして鞘から顔を出して固く尖った敏感なめしべを何千本もの毛に撫で回され、鈴音のそこは淫らな蜜をしとどに滴らせ続ける。
蜜でぐっしょりと濡れた髪の毛は、互いにより合わさり、さらにくっきりとした淫らな刺激を鈴音のその部分に送り込む。
「女の命で身体を撫で回されながら敏感な所をこうされる気分はいかがかしら。気持ちよくてたまらないでしょ?」
「あっ、ああっ、だめっ、だめぇっ」
「ここにいる他の女の子たちからも褒められましたのよ」
快感の嵐に必死に耐え続ける鈴音のお尻を、新たな髪の毛が容赦なく撫で回した。
身体の新たな部分に送られた刺激に、鈴音の身体がガクガクと痙攣する。
「あっ、ああっ、これ以上されたら、ああっ、もうだめぇ、あっ、ああっ」
鈴音の悲鳴と同時に、女の部分の秘めやかなすぼまりから、鈴音の身体を知りつくした恥ずかしい熱水が迸り、蜜と共に飛び散りながら毬藻の髪の毛を濡らした。
恥ずかしさと快感の嵐に身体を震わせつづける鈴音。
やがて、その激しい流水がおさまると、毬藻は熱水と水でぐしょぐしょに濡れた髪の毛を自分の口許へ持って行った。
「おいしいわ。鈴音さまの悦びのあかしも、女の子の口から言ってはいけない暖かな水も」
毬藻はうっとりとした表情で濡れた髪の毛に舌を這わせる。
髪の毛を濡らしたものをひとしきり味わうと、毬藻の足が地面に沈み始めた。低くなった毬藻の顔が、鈴音の足の付け根に近付く。
「今度は鈴音さまのここから直接吸わせて頂きますわ。同時に全身をもっともっと念入りにくまなく撫でまわして、もっともっと気持ちよくしてさしあげますわ」
毬藻の髪の毛が、鈴音の全身を完全に包み込んだ。
鈴音の身体のありとあらゆる部分から、無数の髪の毛による猛烈な妖しい刺激が送り込まれる。
その激しく渦巻く髪の毛のうねりの中心で、毬藻の唇と舌が淫らに蠢き、柔かい花びらや固く尖っためしべを舌で転がしながら吸い上げ、花びらの奥からしとどに溢れた蜜を吸い尽くす。
「ああっ、だめぇっ、もうだめえっ、身体がおかしくなるぅっ!」
想像を絶する妖しい刺激の嵐に、鈴音は何度も身体をのけぞらせる。
毬藻の舌は、やがて何本にも枝分かれした。そのうちの数本が、花びらの奥の襞の間に入り込み、さらに細かく生えた枝が襞の間で蠢きながら、しみ出した蜜を吸い取る。
一方、他の数本の舌が花びらの内側と外側、そして敏感なめしべを撫で回しながら、別な一本が最も秘めやかなすぼまりへと侵入し、その表面に生えた無数の小さな突起を蠢かせる。
「ひっ、ひぃっ!」
髪の毛に全身を撫で回されながら、女の部分にそのような変質的な悪戯をされてはたまらない。
「こんなの、こんなの、もうだめぇ、もう……」
鈴音の身体がガクガクと痙攣した。
「ああああぁぁぁぁっ!」
かん高い悲鳴と共に、鈴音は凄まじい変質的な快感の嵐によって天の高みへと打ち上げられた。鈴音の女の部分から淫らな蜜が吹き出し、毬藻の顔を濡らす。
その蜜をさらに吸いつくそうとするかのように、毬藻は襞の奥や秘めやかなすぼまりへ差入れた舌をさらに激しく蠢かせ続け、花びらや敏感なめしべを舐め続ける。
激しく渦巻き続ける全身の髪の毛と、女の部分を悪戯し続ける舌の動きに、鈴音の悲鳴と身体の震えはなかなかおさまらない。
やがて鈴音の身体が力を失い、ぐったりと動かなくなった時、毬藻はようやく鈴音の女の部分から唇を離した。
「あれほど蜜を吹き出したばかりなのに、もうこんなに。鈴音さまのあそこ、すごく敏感なのですね」
蜜に濡れた髪の毛を嬉しそうに揺らして見せる毬藻。
その毬藻の身体が再び元の高さに浮上し、今度は鈴音の足が肉の地面に沈み始めた。
「さあ、今度は鈴音さまの番ですわ。私のあそこをたっぷりと楽しませて頂きとうございます」
毬藻の蠢く髪の毛に包まれながら足の縮んだ鈴音の唇に、毬藻の女の子の部分が覆いかぶさった。
そこはすでに鈴音を誘うように淫らな蜜に濡れ光っていた。
――ここが毬藻の敏感な……
鈴音は毬藻の花びらを濡らしている蜜を舐め取り味わった。
「ああん、そこ、もっと強くなめしゃぶってぇ」
毬藻に言われるまま、激しく唇と舌を動かす鈴音。固く尖っためしべを舌先で転がすと、毬藻の身体がビクビクと震え、溢れる蜜もまたその量を増していく。
「そうよ、すごく良くなってきたわ」
言いながら、毬藻は鈴音の身体を包んでいた髪の毛を再び蠢かせ始めた。その髪の一部が鈴音の、肉の地面からさほど離れていない女の部分を再び悪戯し始める。
「うっ、むむっ」
髪の毛から与えられる耐え難い快感に、鈴音は悲鳴を上げる。しかし鈴音の口は毬藻の女の子の部分に塞がれ、声にならなかった。
「さあ、鈴音さまもいっしょに楽しみましょう」
歌うような毬藻の声を桃色の稲妻の中で聞きながら、鈴音は夢中で唇と舌を動かしつづけた。
「ああん、そこ、そこよ。そこをもっと激しく舌でかき回すの。もう少しで私も……あっ、ああっ、ああぁぁぁぁっ!」
毬藻の身体が鈴音の唇と舌から送り込まれる快感に激しく震える。
彼女たちの周りでは、揚羽が、そして生け贄となった少女たちが、他の少女たちによってくすぐられ、女の子の部分を吸われながら、淫らな悲鳴と笑い声を上げ続けている。その声に混じって、毬藻の淫らな悦びの悲鳴が、肉の洞窟にかん高く響き続けていた。
湖の上空を青い光が漂っていた。
あやけしの炎から伸びる糸の上に、美琴とその分身、そして上に上げた両手を光の糸で縛られた菖蒲と菫が乗っている。
四人は、湖の中央で紅色の大蛇をくねらせている不気味な妖怪を見下ろしていた。
「あれが千手妖華の姿……私も見るのは初めてです」
「揚羽さまの気持ちが分かるような気がしますわ」
村の守り神とされている千手妖華の本当の姿を初めて目の当りにした菖蒲と菫が呟いた。
二人の巫女に、美琴は言い聞かせる。
「あれは守り神などではない。この辺りに住む妖怪どもの親玉だ。それも身体の一部に過ぎぬ。恐らくこの湖の底の地中深くに本体がいるのだ。やつは妖怪にさらわれたり、あるいは生け贄となった女子の身体に淫らな悦びを与え続け、密を絞り取っては邪な力へと変化させ、それによて不死身の身体を維持しながら、その力を他の妖怪どもにも分け与えているのだ。そしてその力は女子にも分け与えられる。彼女たちは化け物の腹の中で永久に生き続けながら淫らな蜜を搾り取られ続け、やがては身も心もあの化け物と融合してしまうのだ」
四人の存在に気付いたのか、湖の妖怪の大蛇から触手が何本も伸び出し、四人の方へ迫ってきた。
「なっ、何なのこれは」
触手に身体を絡め取られそうになりながら、菖蒲が眉をひそめる。
「今ここで奴を鎮める方法はただ一つ」
美琴はすぐそばの菫の腋の下に手を当てた。
「ひぃっ!」
さきほどの分身どもによる拷問を思い出し、思わず声を上げる菫。
「それって、まさか……」
菫の不安げな声に答えるかのように、美琴の指が激しく動き始めた。
同時に分身の手もまた菖蒲の腋の下にあてがわれ、指が激しく蠢き始めた。
「きゃはははぁ、やっぱりこうなるのぉ?」
「だめぇっ、くすぐったい、くすぐったいのぉ、きゃははははぁ!」
激しい指の蠢きにたまらずかん高い笑い声を上げる菖蒲と菫。
「我が指に従いかん高き破魔の笑い声を上げたまえ」
美琴が自分と分身の指の動きに念を込めると、それが二人の巫女の笑い声となって放たれる。それは、この世のあらゆる邪悪な存在を消す力を持っているのだ。
鈴音を笑わせた時に出せる力ほどではないが、目の前の妖怪を一時的に黙らせるには十分だ。
湖の上で蠢いていた大蛇が悲鳴を上げながら、みるみるうちに青い光に包まれ燃え上がる。
その形が崩れ始めた時、美琴が菫をくすぐる手を止めた。同時に菖蒲をくすぐっていた分身が煙のように消失する。
「それでは鈴音さまの所へ、いざ参らん!」
「ちょっと、今度は何?」
菫が叫んだ時、美琴は青く燃え上がる妖怪めがけて光の糸から飛び降りていた。
手を大きく広げた美琴の周りに新たなあやけしの炎が無数に出現した。それらは互いに融合し、一つの巨大な火の玉となって美琴の身体を包み込んだ。
その火の玉が、燃え上がる妖怪の中央で見開かれていた巨大な目へと突進した。
美琴を飲み込んだ妖怪は、青い炎をさらに激しく吹き上げ、火柱を上げて爆発した。
その姿は、湖に咲いた青く美しい巨大な華のように見えた。
「ああ、何という事でしょう」
「千手妖華が散っていく」
菖蒲と菫は、風に吹かれた花のように砕けていく炎の渦を呆然と見つめていた。
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