「これが第1世代のエリートによる拷問状況。本屋さんの理工系図書コーナーなどに置いてある教科書で説明されているとおり、普通、遺伝的アルゴリズムで基礎的な組み合わせ最適化問題、例えば巡回セールスマン問題などを解く場合、第1世代は乱数によって生成するものだけど、このシミュレーションシステムの場合は完全にランダムというわけではなくて、過去の実験である程度の実績を持ったパラメータに突然変異を加えたものを使っているの。だから、とっても雰囲気出てるでしょ?」
美女たちに囲まれた美雪の様子を映し出した3次元映像の画面を杏子に見せながら、寺沢が言った。
さきほどから画面を見つめている杏子の息が荒くなっているのを、寺沢は見逃していなかった。
「あなたもあんなふうにされてみたくないかしら?」
寺沢は杏子の顔を間近に覗き込みながら聞いた。
「ば……馬鹿な事言わないでよ……」
言いかけた杏子の唇を、寺沢の唇が塞いでいた。
「う……」
咄嗟に身を引こうとする杏子を逃すまいと、寺沢は恵子の耳を押さえ、唇をついばみ吸い上げる。
そして舌を差し入れ、杏子の舌に絡ませる。
杏子の頭の中にピチャピチャと淫らな音が響き、甘い痺れが唇から口の中へと広がった。
杏子の抵抗が弱まった隙に、寺沢は片手を服の中に潜り込ませ、ブラの上から胸の膨らみをそっと掴んだ。
甘い疼きが杏子の胸の膨らみの奥に広がる。
身体が震え、自然にのけぞってしまう。
その反応を確かめると、寺沢はもう片方の手を下の方へ滑らせ、杏子のスカートのファスナーを降ろすと素早く中へと潜りこませる。
パンティの上から大切な部分を指でなぞると、杏子の身体がガクガクと震える。
そこはもう女の恥かしい蜜でぐっしょりだった。
「ちょ、ちょっと、やめてよ、ああっ!」
激しくもがきながら寺沢の唇からようやく唇を引き離した杏子は、その口から抗いの言葉と共に切ない喘ぎ声を漏らしていた。
「ふふっ、美雪ちゃんが責められるのを見ながら我慢できないくらいに感じちゃってる事くらい、ちゃんと分かってるんだから。かっこ付けたって、女同士、全てお見通しなのよ。ほおら、ここ、もうこんなにぐしょぐしょじゃないの。もっと素直になって、あたしと一緒にもっと楽しみましょうよ」
寺沢は杏子の耳元で恥かしい言葉を歌うように囁きながら、杏子の敏感な部分をさらに激しくまさぐり続けた。
ブラの中に侵入し固く膨らみきった蕾を探り当てた指がそれを激しく転がしながら、もう片方の手の指はなおも激しく女の敏感な部分をまさぐり続ける。
時には強く揉みしだくように、時にはタッチを弱めテンポを早めながらじらすように蠢く寺沢の指に誘惑され、杏子はいつの間にか寺沢のなすがままに腰を動かしていた。
「もうだめぇ、お願い、もうやめて……ああっ……」
「ほら、強がってないで、素直になりなさい。本当にやめてほしいのかしら? 正直に言わないと、本当にやめちゃうわよ」
寺沢は濡れそぼったパンティの底から意地悪く指を離した。
たまらない寂しさと悲しさが、杏子のその部分に生まれ、全身に広がる。
「ああっ、いやぁっ、やめないで!」
恥かしい叫びと共に泣きじゃくる女の涙が激しく溢れ、パンティの底をさらにぐっしょりと濡らし、太腿を伝い落ちる。
「ふふっ、やっと素直になったわね。御褒美にとってもいいものをあげるわ」
寺沢は杏子のぐっしょりと濡れたパンティの内側に指を潜り込ませ、割れ目の内側の小さな花びらをかき分けた。
そして、激しく蜜の湧き出す泉の入口を探り当てた。
その時、杏子は急に目を見開いた。
「ちょ、ちょっと、それはだめ、あたし、あたしまだ……」
「何を怖がってるのよ。パージンじゃあるまいし。大丈夫、とってもいい気持ちにしてあげるから」
杏子が慌てた口調で訴えるのに構わず、寺沢は泉の中へと指を沈めた
「ああっ……い、痛い!」
寺沢の指が中で激しく動いた時、杏子は悲鳴を上げた。
「え? 痛いって……まさか……まさかあなた……まだバージン?」
寺沢は目を見開き、杏子の顔を見詰めた。
「そ……そうよ」
杏子はか細い声で答えた。
「それじゃ、美雪ちゃんは、あなたの本当の子じゃないわけ?」
「本当の子よ。美雪には他の普通の家庭の子と同じように、母親である私の血が半分流れてるわ。疑うのなら、血液鑑定でもDNA鑑定でもしてみるといいわ」
寺沢は泉から指を引き抜き、杏子から離れた。
「分かったわ。もうすぐ人類始まって以来の革命をもたらすと言われている、あの装置の試作起動実験で生まれた子が、美雪ちゃんなのね」
寺沢の真剣な眼差しに、杏子は黙って頷いた。
「という事は、美雪ちゃんは、あれから生まれた最初で最後の女の子っていうわけなのね」
寺沢が視線を向けた先には、美雪がビニールの椅子に埋もれるようにして静かに眠っている。
自分の脳からコピーされた別な自分に対して執拗な拷問が繰り返されている事など知る由もないのだ。
「それにしても、こんなに素晴らしい女の悦びがもうすぐこの世から消えてしまうなんて、なんて寂しい事かしら……」
寺沢がなおも杏子の女の部分を弄ぼうとしたが、杏子の方が少しだけ動きが早かった。
寺沢から離れた杏子は、息を弾ませながら服装を整えた。
「それより、私の知りたい事は分かりそうなの?」
杏子に聞かれて、寺沢は淫らな遊びを諦め、再び椅子に戻った。
「難しいところね。今までの被験者では、多くとも10世代目までパラメータを進化させれば本当の事を言ってくれたわ。でも、この子の場合はそうじゃないみたいね。現在21世代目の評価中だけれど、今まで美雪ちゃんは、本当の事を言うべきかどうか一度も迷わず、黙り込みを決め込んでいたわ」
「そんな事が分かるの?」
「答えが何であるかは分からなくても、それを言おうかどうか迷っている事は、脳の活動パターンの変化である程度分かるわ。それによって、世代に含まれる各個体を評価するの。そして評価値の高い個体を選択して、その個体を構成するパラメータの列について交叉や突然変異といった遺伝的操作を行う事によって次世代の個体集団を生成するの。パラメータによって変化する項目には、さっき選択した『オシッコ我慢』『くすぐり』『生殺し』の3つの取り調べパターンの混ぜ合わせ方や、美雪ちゃんの最も苦手なくすぐり方や生殺しの仕方を学習する学習ルール、そして係官の姿や拷問を行う環境など、さまざまなものが含まれるわ」
寺沢の操作によって、何本かの折れ線グラフが画面に現れた。
「各世代中の個体の評価値の最大値の変化がこのグラフなんだけれど、今までの他の被験者の場合は10世代目までにいずれも自白決定域に到達したのに対して、美雪ちゃんの場合、第10世代目から現在の20世代目まで、ほとんど変わってないわ。こんな事は今までの実験で初めてよ。美雪ちゃん、よほど口が固いのか、どうしても秘密を守らなければならない理由があるのか……」
「美雪が今日あんな事したのは、多分、あの子の友達のせいね……」
杏子は視線を画面から机の上に落とし、呟いた。
「心当たりがあるの?」
寺沢の質問に対し、杏子は小さく頷いた。
「あの子が小学生の頃なんだけど、『将来の夢』っていう作文に『宇宙飛行士になりたい』って書いたの。たまたま作文の発表会が授業参観の時にあってね。でも、女性はやっぱり美しくしとやかであるべきものでしょ。まして、宇宙飛行士になりたいだなんて、女の子の持つべき夢ではないわ。だから私、後であの子を問いただしたの。そしたら、友達の中にSFに興味のある子がいて、その子の家にはSFアニメのプラモデルとかがいっぱいあったの。美雪はそれを見て宇宙飛行士になりたいって思ったらしいわ。だから、私はその子の親に、今後その子を決して美雪に近づかせない事を約束させたわ。おそらく今度の場合もそうなるんじゃないかと思って、口を閉ざしているのね」
「あなた、それで本当に美雪ちゃんの母親なの?」
「私は母親として、あの子のためになる事をやったまでよ」
杏子は思わず声を大きくしていた。
「あなた一人があの子のためになると思っている事でしょ?」
寺沢も思わず大声を上げ、椅子から立ち上がった。
杏子は黙ったまま机の上の一点を見つめているだけだった。
その様子を見ながら、寺沢は投げ捨てるように言った。
「まあいいわ。私の子ではないのだし。この分だとだいぶ時間がかかりそうだから、今日はこのくらいで引き上げましょう。それと、この子と遊んだ事のある友達の写真があったら、後で貸してもらえるかしら」
美雪は聡美と共に見知らぬ街を走る電車に乗り、長椅子に座っていた。
聡美に言われるまま電車に乗ってからもう30分以上も経つが、聡美は行き先を言おうとしない。
そしてその間、美雪はミニスカートから伸びた太腿をせわしなくモジモジと上下に擦りあわせ続けている。
そして、時々切なげに目を閉じたかと思うと、熱いため息が可愛らしい口から漏れるのだ。
「ねえ、美雪ちゃん、もじもじしちゃってどうしたのかしら?」
聡美は美雪の耳元で意地悪く質問する。
「もうだめ……お……お願い、トイレに行かせて……」
美雪はか細い声で答えた。
周りの乗客は、美雪の様子には今のところ気付いていないようだが、いつ気付かれてしまうか分からない。
「え? 何? よく聞こえないわ」
聡美はわざとらしく耳に手を当てて見せる。
美雪は聡美の耳に口を近づけて、もう一度言った。
「お願い、トイレに行かせて」
「あたし、あなたの行きたい所を聞いたんじゃないわ。どうしたのか聞いたのよ」
美雪は切羽つまった口調で言い直した。
「あたし、オシッコしたいの。だから、トイレに行かせて」
美雪が顔を赤らめながら口にした、女の子にとってたまらなく恥かしいその欲求は、今に始まった事ではなかった。
電車に乗ってから10分もしないうちに、すでに美雪のか弱い女の子の部分は、そこをこじ開けようとする恥かしい水の力に悩まされていたのだ。
しかし、美雪が何度頼んでも、聡美は美雪をトイレに行かせようとはしなかった。
「本当にそれだけかしら。あたしも一緒についていって、他にしたい事があってもさせないわよ」
美雪はその質問に顔を赤らめた。
聡美の言うように、美雪がトイレに行きたい理由は、内なる水の欲求だけではなかった。
内なる水の悪戯に悩まされている部分のすぐそばの、女の子の恥かしい敏感な部分が激しい欲求に疼き続けている。
それを一刻も早く慰めなければ、気が狂ってしまいそうだった。
「あ、あたし、あたしの……恥かしいあそこを、慰めたいんです」
か細い声で言う美雪の顔は、恥かしさに真っ赤に染まっていた。
「ふふっ、電車に乗る前に沢山飲んだ利尿剤入り・媚薬入り紅茶が効いてきたのね。でも、トイレに行くのは、私の質問に答えてからよ。昨日、一人で恥かしい所を悪戯していたのは、なぜかしら?」
美雪はその質問に、顔を赤らめた。
「そんな恥かしい事、言えないわ」
「あなた、ずいぶんとしぶといわね。言わなければ、ずっとトイレには行けないわよ」
「そんな……んんっ……ああっ……」
美雪は聡美の返事に絶望しながらも、美雪の理性を激しく打ちのめす女の子の恥かしい欲求に懸命に耐え続けている。
「どうしても言わないつもり?」
美雪は聡美の言葉に黙って頷いた。
「それじゃ、これならどうかしら。これでも黙っていられる?」
聡美は片手を美雪の背中から反対側に回し、美雪の左右の腋の下にそれぞれ手を差し入れ、Tシャツの上から激しくくすぐり始めた。
「きゃははは、くすぐったい、やめて、お願い、きゃははは……」
Tシャツの上から脇腹に押し当てられ蠢いたかと思うと腋の下を激しくまさぐる聡美の指のもたらす異様な刺激に美雪はたまらず笑い声を上げた。
お腹に力が入り、美雪の女の子の部分を悩ませる水の力をさらに加速する。
女の子の部分が甲高い悲鳴を上げたが、聡美の巧みなくすぐりに、美雪は笑いをこらえる事ができなかった。
「ふふっ、どう? くすぐったくて我慢できないでしょ。あたし、あなたのくすぐりの弱点はみぃんな知ってるの。だから、絶対に我慢できるはずないわ」
聡美の顔をした取り調べ官は、彼女の言うとおり、美雪のくすぐりの弱点をほぼ完璧に把握している。
既に美雪を拷問し失敗した前の世代の取り調べ官から、どの部分をどのようにくすぐれば美雪がそのくすぐったさを我慢できないか、そしてくすぐりの手が美雪の最も触れてほしくない部分に近づいた時に、美雪の声や表情、そして脳波がどのように変化するのか、そして新たな弱点を探索するにはそれらの変化をどのように見定めながらどのようにくすぐりの手を動かせばよいのか等の情報を引き継いでいるのだ。
それに対して、美雪はこれまで、人間に限らず動物や植物などさまざまな姿をした取り調べ官によって執拗にくすぐられながらも、いかにしてその激しいくすぐったさに耐えたのか、その記憶の一切を現時点で持ち合わせていないのだ。
そこへ美雪のくすぐったさを知り尽くした指が襲い掛かっているのだからたまらない。
美雪は人目もはばからず大声で笑い続けていた。
そして、内なる水の力は笑い声に合わせてその恥かしい力を強め、美雪の女の子の部分を悪戯する。
その悪戯に耐えようと、美雪はその恥かしい部分に渾身の力を込める。
その度に、身体がガクガクと震える。
そして、女の子の恥かしい欲求の痺れがその部分に広がり、そこを自分の指で悪戯したくてたまらなくなる。
そしてその部分に懸命に込めた力を引き剥がすように、くすぐりの手がなおも激しく美雪の神経を狂わせるのだ。
「きゃははは、お願い、もうやめて、くすぐったい、きゃはははは……」
「言ってくれたら、やめてあげるわ。それにトイレにも行かせてあげる」
「言うわ。言うから、ちょっとやめて」
とうとう美雪は執拗なくすぐりと恥かしい水の責めに負け、その言葉を口にしてしまった。
これまでの美雪がいくら執拗に責められてもその恥かしい秘密を言わなかった事も、その本当の理由も、今の美雪は知る由もなかったのだ。
美雪の言葉に、聡美はくすぐりの手を止めた。
「この事がママに知れたら、私たち、もう会えなくなってしまうかもしれないの。だから、だれにも言わないって、約束してくれる?」
美雪は聡美の目を見つめた。
「もちろんよ。当たり前でしょ? 私たち、友達なんだから」
聡美の顔をした者は、明るく微笑みながら頷いた。
「それじゃ、言うわ。私、今日、聡美ちゃんに今みたいにくすぐられたら、なんだか変な気分になっちゃって、それで……」
「そう。良く言ってくれたわね」
「それで、美雪ちゃん、今日も戻らないのね」
寺沢は杏子の差し出したお茶をすすりながら言った。
「ええ。警察に捜索願いを出してから、もう一週間になるわね」
杏子はうつろな目を壁のカレンダーに向けた。
美雪が恥かしい事を覚えたきっかけとなった友達の名前は、美雪の遠足の記念写真を寺沢に送ってから僅か数時間で判明した。
杏子は寺沢から連絡を受けるとすぐに、美雪の家から歩いて15分ほどの場所にある栗原家に出向き、聡美を今後絶対に美雪に近づかせない事を聡美の親に約束させたのだ。
そして美雪に、聡美と絶対に遊ばないようにと言い聞かせた。
そして、その日の夜から美雪の行方が分からなくなったのだ。
「やっぱりあなたのやり方は間違っていたのね。何もあそこまでやらなくても……」
寺沢が言いかけた時、廊下の電話が鳴った。
「警察からかも知れないわ。ちょっと待っててちょうだい」
杏子は廊下に出て受話器を取った。
「はい、新井です。はい……。え、見つかったんですか? はい。はい……そ……そうですか……分かりました」
杏子の声は重く沈み、顔は真っ青だった。
「どうしたの?」
恵子が茶の間から顔を出した。
「今、警察から連絡があったわ。海岸に打ち上げられた美雪の遺体を発見したって……」
聡美が葬式に参列しようとして断られ、重い足取りで帰宅し、部屋に入って喪服を脱ごうとした時、携帯電話が突然鳴り出した。
「もしもし……。み、美雪ちゃん? ま、まさか……今あなたの家では告別式が始まるのよ……。うん、うん……分かったわ。今日の夜7時ね」
聡美は携帯を切ると、別な友達の番号を呼び出した。
「もしもし、あたし。式が始まるまで、まだ時間あるかしら。……そう。驚かないでよ。今、美雪ちゃんから電話があったの。美雪ちゃんは、まだ生きてるのよ。……ちがうの。あたしもそう思ったんだけど、今そっちにある死体は作り物なんだって。それで、今日の夜7時にね……」
学校の屋上に制服を着た数名の女子高生が集まっていた。
「もうそろそろ7時よ」
聡美の声に、皆が空を見上げた。
太陽はとうに沈み、空には星が瞬き始めている。
その星を、数分間眺めていたが、これといって変わった変化はない。
「あれを見て!」
突然、一人が叫んだ。
彼女の指の方向に皆の視線が集まる。
立ち並ぶビルの向こうの遠い空に白い光の点が現れ、ゆっくりと舞い上がって行く。
しばらくしてさらにいくつかの点が現れ、同じように昇って行く。
「あのどれかに、美雪ちゃんが乗ってるっていうの?」
「そうよ。遠い所に行くんだって」
聡美が友達の質問に答えた。
「美雪ちゃんの仲間って、異星人なの?」
「違うわ。近いうちに実行されようとしているある計画に、最後まで反対し続けていた団体よ。その団体の人たちは、どうしてもその計画に納得する事ができなかった。だから、地球を捨て、遠い宇宙へ旅立つのよ」
聡美の言葉を聞いて、美雪は思わず叫んだ。
「ウソよ! あたしはここにいるわ!」
女子高生たちが、後ろに立っていた美雪を振り返った。
その顔は、白百合女子学園のクラスメートたちだった。
相沢、飯島、早苗、美香、そして恵子と他のクラスのお嬢様数名の姿がそこにあった。
そして彼女たちが身につけていた制服が、一瞬にして白百合女子学園のそれに変化していた。
彼女たちの真剣な眼差しが、美雪に向けられている。
その背後にいつの間にか現れた白衣姿の寺沢先生が、口を開いた。
「ウソじゃないわ。今あなたが見たものは、全て事実よ。今から千年ほど前に、実際に起こった出来事なのよ」
「せ……千年?」
美雪が口を開いたその時、鐘の音が学校中に響き渡った。
それと同時に今までビルの立ち並んでいた学校の周りの光景が消え、見渡す限り緑の木々が生い茂る豊かな自然の風景が出現した。
そして屋上の中央の時計台も、四角いコンクリートの箱から細かい細工の施された重々しい木の時計へと変化していた。
転校前の学校の屋上であったはずの場所は、もはや白百合女子学園の屋上であった。
校舎内の階段への扉が開き、一人の女が現れた。
美雪のクラスの歴史の授業を担当する、吉沢冴子先生だった。
彼女は生徒たちの列に加わり、口を開いた。
「新井美雪さん、これからあなたのために、特別授業をしてあげましょう」
「特別授業って……?」
言いながら、美雪は辺りを見回した。
日本史の時間に決まって昔日本で行われていた女へのお仕置を美雪の身体で再現していた美人教師が特別と称する授業とは、いったいどんなものなのか、美雪には想像がつかなかった。
夜の闇の迫っていた風景が目にみえてさらに暗くなり、美雪は再び漆黒の闇の中に投げ出されていた。
「現在学校で男の子たちに教えられている、あなたの知らない人類の歴史よ。それを今あなたに見せてあげるわ」
漆黒の闇の中に吉沢先生の言葉だけが大きく響いていた。
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