お嬢様用の生徒指導室の中央には、今まで保健室で幾度となく美雪を悩ませた妖しいベッドが置かれていた。
そのベッドに生まれたままの姿で拘束された美雪は、可愛らしい顔を切なく歪め、激しく身悶え続けている。
胸の膨らみの敏感な蕾には、両方とも小刻みに震えるプラスチックボールが取り付けられ、そのボールに付いている筆の先が蕾を激しくくすぐっている。
そして白衣を着た寺沢先生と、白いブラウスにグレーのミニスカートを穿いた西原先生の指が妖しく蠢きながら、美雪の奇麗な柔肌の上を這い回っている。
蕾の刺激と全身のくすぐりが混ざり合い、激しい嵐となって美雪を悩ませていた。
「きゃははは、んぁああっ、もうやめて、お願い、きゃはははは……」
狭い部屋に激しい悲鳴と笑い声が響き続ける。
しかし、いくら叫んだ所で助けが来るわけではなく、二人の先生の手の動きはますます激しくなる。
美雪の大きく開ききった太腿の付け根の恥かしい部分からは熱い蜜が溢れ続け、糸を引いて床に落ちる。
メシベや花びら、そして洞窟の内壁には、前もって飲まされていた薬により、妖しい疼きと痺れの波が這い回り続けているのだ。
一刻も早くその恥かしい部分へ手を持っていき思う存分悪戯しなくては、今にも気が狂いそうだ。
せめて太腿の付け根を思いっきり擦りあわせ、はしたないおねだりをしながら泣き続ける女の子の部分をほんの少しでも慰める事ができたら……。
しかし、手も足も大きく開いた状態でしっかりと恥かしいベッドに固定されていては、どうする事もできない。
その恥かしい辛さに加えて、胸の蕾と全身から送られる激しい嵐が美雪の理性を揺さぶり狂わせている。
「美雪ちゃん、ここもこんなにぐちょぐちょよ。とっても恥かしい子」
美雪の足の裏を激しくくすぐっていた寺沢先生が、片方の手でベッド脇の台に並べられていた数々の筆やブラシやその他の妖しげな道具の中から小さな一本の筆を取り上げると、その穂先をしとどにぬれそぼった花びらにそっと這わせた。
快感の稲妻が美雪の身体をビクビクと震わせ、激しい切なさが全身を焼き尽くす。
「ああっ、お願い、もっと……」
恥かしいおねだりが美雪の口からもれてしまう。
「美雪ちゃんったら、本当にはしたないのね……」
西原先生は指を太腿に這わせ、妖しく蠢かせながら、別な生き物のように淫らに蠢く恥かしい部分を覗き込む。
「い、いやっ、言わないで……んぁああっ、あふぅ、きゃはははは……」
美雪は顔を赤らめながらも、激しい刺激のなすがままに身悶え、悲鳴と笑い声を上げ続ける。
「ふふぅ、そんなにほしいのなら、もっとすごいのをあげてもいいわよ」
寺沢先生は、すぐそばの戸棚に手を伸ばすと、いくつも並べられた薬瓶のうちの一つを取り出した。
美雪の目の前で蓋を開け、その中に筆の穂を浸す。
「最近手に入った新しいお薬よ。美雪ちゃんもきっと気に入るわ。本当は理科の先生の時に使う予定だったんだけど、特別に今あげるわ」
美雪は西原先生の指の動きのもたらすくすぐったい刺激に耐えながらも、妖しい薬の瓶に怯えの目を向けていた。
瓶から引き抜かれた筆の穂先が、太腿の付け根のメシベに触れた。
「あふぅ、ああっ、いやぁっ、んんあぁぁっ……」
女の子の敏感な部分を筆が這い回る異様な感覚に、美雪は激しく喘ぎ身悶え続ける。
薬液を含んだ筆はメシベをひとしきり責め嬲ると、花びらの一枚一枚を丹念にくすぐり、最後に寺沢先生の指によって開かれた洞窟の中へと進み、内壁を妖しく舐め回す。
その動きの一つ一つが、気の狂うような刺激を生み出し、美雪を激しく悩ませる。
妖しく蠢く筆がようやく作業を終えて美雪の花園から離れた時、美雪の身悶えが激しくなった。
「ああっ、あっ、あっ、な、なにこれ、いやっ、んああぁぁ、お願い、はうっ、きゃははははぁ、だめぇ、あああああ……」
激しくのけぞる美雪の顔を、意地悪な笑みを浮かべた二人の先生が見下ろす。
「このお薬はとってもすごいのよ。寺沢先生だって、この薬を使われると腰をクネクネ振りながらいやらしい悲鳴をいっぱい上げちゃうんだから。そうよね、寺沢先生」
西原先生は悪戯っぽい笑みを寺沢先生に向けた。
「余計な事言わなくてもいいの。美雪ちゃん。どう、今の気分は?」
美雪は寺沢先生の質問に答えず、激しい喘ぎ声と笑い声を上げ続けていた。
女の子の部分に新たに加わった異様な刺激に耐えているだけで精一杯なのだ。
「私は聞いているのよ。今の気分はどう?」
寺沢先生は美雪の脇腹に指を食い込ませ、奥の敏感な神経を容赦なく転がした。
「きゃははは、いやぁっ、お願い、くすぐったい、くすぐったいの……」
「どこがくすぐったいのかしら」
寺沢先生は、指の動きを止め、脇腹に当てたまま待った。
「んああっ、あそこが……あそこがくすぐったいのぉ……」
美雪はたまらず大声を上げた。
美雪の言うとおり、美雪の女の子の部分は激しいくすぐりの刺激に苛まれていた。
何も触れていないのに、一面に散りばめられた無数の小さな刺激の粒が一斉に蠢き走り回りながら、美雪の敏感な部分を激しく刺激しているような感じだった。
変化する粒の流れによって生まれたいくつもの渦が激しく動き回り、壊れ、再び新たな渦が生まれる。
それらの動きの一つ一つが、固く尖ったメシベや濡れそぼった花びら、そして蜜の湧き出す洞窟の内側の襞の一枚一枚を激しく身悶えさせている。
美雪の身体がガクガクと震え、腰が勝手に動いてしまう。
「あそこって、どこかしら? 正直に言ってくれたら、これでその場所をかき回してあげるわ」
寺沢先生は、これまで幾度となく美雪に恥かしい悲鳴をあげさせた試験管ブラシを美雪の目の前で揺らして見せた。
女の子の内側を存分にくすぐり身悶えさせ恥かしい悲鳴を上げさせる事のできる悩ましいブラシ。
しかし,恥かしい部分を苛み続ける刺激に身悶え続ける美雪には、そのブラシが悩ましい刺激から自分を救ってくれるように思えた。
ブラシでかき回されれば、恥かしい部分を悪戯している妖しい刺激が少しはかき落とされるかもしれない。
そう考えると、美雪はもうどうしようもなかった。
自分でも気が付かない間に、女の子の恥かしい部分を最も直接的に表現するはしたない言葉を叫んでいた。
「ふふっ、お嬢様がこんなはしたない言葉を口にするなんて、補習の効果はまだまだのようね。いいわ。約束どおり、これでそこをかき回してあげる」
寺沢先生は妖しい微笑みを浮かべながら、蜜の溢れ続ける美雪の花園の奥へ、ゆっくりとブラシを差し入れていった。
「は、あくぅ、ああっ、きゃははは、だめ、だめぇ、きゃははは……」
美雪の悲鳴と笑い声がひときわ激しくなった。
ブラシの細い軸から伸びた無数の毛が美雪の内側の襞の間に潜り込み、蠢き舐めながら進んでいく。
その刺激は今まで美雪を悩ませていた妖しい感覚をかき落とすどころかますますたまらない刺激に変えていく。
毛の触れた部分に生まれた妖しい火花が悩ましい刺激と混ざり合い、激しい稲妻となって体中を駆け抜ける。
さらにその稲妻は、妖しいボールと筆によって胸の蕾から送り込まれるたまらない刺激とぶつかり合い、凄まじい津波となって美雪を揺さぶるのだ。
寺沢先生がブラシを前後に動かしたりよじって回転させたりする度に、美雪の身体がガクガクと震え、けたましい笑い声と桃色の悲鳴が部屋に響く。
稲妻は美雪の女の子の理性を直撃し、恥かしい部分を狂わせる。
妖しい薬の刺激に苛まれている女の子の内側全体を、ブラシでくすぐられてはたまらない。
「きゃはは、ああっ、だめぇ、んんんんあぁぁ、きゃははは……」
美雪が叫びながら身体をガクガクと震わせる度に、大量の蜜がブラシを伝って流れ出し、寺沢先生の手をぐっしょりと濡らしながら、糸を引いてポタポタと床に落ちる。
「美雪ちゃん、いやらしい言葉を平気で使った上に、恥かしい所をこんなにぐしょぐしょにしちゃうなんて。お嬢様なのになんてはしたないのかしら。たっぷりお仕置きしてあげるわ」
西原先生は身悶えている美雪の脇腹に指を食い込ませ、揉むように動かした。
同時に寺沢先生も空いている片方の手を伸ばし、妖しく蠢く指先を足の裏から太腿へと滑らせる。
「きゃははは、だめぇ、きゃははははは……」
内側と外側から送り込まれる激しいくすぐりの嵐に、美雪は今にも気が狂いそうだった。
女の子の切ない悲鳴と激しい笑い声が生徒指導室に響き続けていた。
美雪は寮のベッドの上で目を覚ました。
――ゆ、夢?
薄暗い天井をぼんやりと眺めながら、女の子の身体を悩ます激しい刺激の嵐から解放された事に静かな安堵を覚えた。
まるで現実のようにはっきりとした夢だった。
それは当然の事であった。
その夢は、昨日の現実であったのだから。
中間試験でも期末試験でも所定の点数を取れず、お嬢様コンテストでも最悪の成績となった美雪は、夏休みの初日に生徒指導室で徹底補習を受ける事になった。
美雪への補習は、担任の西原先生や保健の寺沢先生をはじめ、美雪のクラスの授業を担当している全ての先生が、交代で行った。
媚薬や小道具が美雪の女の子の恥かしく敏感な部分に切ない悲鳴を上げさせ、妖しく蠢く指先が美雪の全身を激しく悩ませる。
その凄まじい刺激の嵐に、美雪は一日中耐え続けなければならななかったのだ。
――でももう終わったんだわ。今日から新学期が始まるまで、この学園の事は何もかも忘れて、ゆっくり過ごしたい。
もちろん、夏休みが終わるまでゆっくりと過ごせるわけでない事は分かっていた。
実家に帰れば学校の成績の事などで咎められるであろうし、そもそもこの学園に来るきっかけになったあの事件以来、親と顔を合わせるのが恥かしくてたまらないのだ。
それに、この学園に入ってから美雪はお嬢様を悩ませる激しい刺激と欲求のために、授業に全く集中できずにいた。
勉強の遅れを取り戻せるのは夏休みしかない。
いつだったか美雪は先輩のお嬢様にこの事について相談した事があった。
「お嬢様のたしなみさえきちんと身につけていれば、それ以外の勉強なんて、する必要ないわ。だって、たしなみを身につけたお嬢様は、ちゃんと将来が約束されてるんですもの」
先輩のお嬢様は美雪の問いかけにそう答えたものだ。
「将来って、どんな将来? 進学先か就職先がもう決まってるっていう事ですか?」
「私たちの進む道は学園がきちんと用意してくれているわ。定められた運命に逆らわず素直に従う事もまたお嬢様のたしなみよ」
先輩のお嬢様の言葉を聞きながら、美雪は前の学校の入学式での校長先生の言葉を思い出していた。
「自分の道は自分で切り開くものです。学校ではその方法そのものを教える事はできません。それは、皆さん一人一人異なるものだからです。しかし、その方法を探し出すためのヒントを教える事はできます。それが皆さんがこの学校にいる理由なのです……」
あの言葉はあの学校の中だけで正しい言葉なのだろうか。
それとも男子生徒だけに向けられた言葉だったのだろうか。
理想の女性は他の人の決めた運命に素直に従うべきものなのだろうか。
いずれにしてもこのままでは自分もまた他のお嬢様と同じように、学校の決めた運命に従う事になるだろう。
それも、お嬢様のたしなみを身につける事のできない、出来の悪いお嬢様のために用意された運命に。
「私はそんなのイヤです」
「イヤでもイヤでなくても、あなたはもうこの学園の定める運命から逃れる事はできないはずよ。美雪ちゃんにももうすぐ分かるわ」
先輩はそれ以上の事は教えてくれなかった。
白百合女子学園にお嬢様として転入した自分の将来は、もうすでに決められてしまっているのだろうか。
――とにかく、今は早くこの学園から離れる事だわ。
美雪が起き上がろうとした時、両手両足が大きく開かれた状態でベッドの端にロープで繋がれている事に初めて気が付いた。
同時に、さきほどの夢の中で激しく弄ばれ今もまだ疼き続けている女の子の部分の妖しい感覚が、時間が経つにつれて薄まるどころか徐々に大きくなっていくのを感じた。
だれかが美雪の恥かしいその部分を悪戯しているのだ。
「美雪ちゃん、お目覚めかしら?」
悪戯されている部分の辺りから、聞き覚えのある声が聞こえた。
「恵子先輩、あたし、今日実家に帰るんです。このロープを早く外して下さい」
美雪は手足を激しく動かして逃れようとしたが、ロープはそれを許さない。
「ダメよ。だって、今日からしばらく美雪ちゃんに会えなくなるんですもの。その分、今は二人でたっぷりと楽しまなきゃ」
言いながら恵子は美雪の女の子の花園に口付け、唇と舌を激しく動かしはじめた。
しとどに濡れた花びらを舐め上げ、熱い蜜を溢れさせている洞窟に舌を差し入れる。
あるいは固く尖ったメシベを唇に含み、きつく吸ったり舌先で転がしたりしながら、洞窟に指を差し入れ、ゆっくりと動かす。
それらの動きの一つ一つがその恥かしい部分から美雪の身体に激しい稲妻を送り込み、大きくのけぞらせる。
「ああっ、いやぁっ、お願い、あたし、もうだめ、ああっ、はああっ……」
美雪の口から激しい悲鳴と喘ぎ声が漏れる。
「だめよ。まだまだ。私がいいって言うまでに昇り詰めちゃったら、お仕置きよ」
女の子の凄まじい刺激に可愛らしい顔を歪ませる美雪の耳元で、恵子は意地悪な言葉をささやく。
そしてその口を再び美雪の恥かしい敏感な所に持っていき、そこをさらに激しく責め立てるのだ。
「あと10分間我慢したら、お仕置きは無しにしてあげる」
「そんな……はうぅっ、ああっ!!」
美雪の身体がガクガクと震えた。
中で蠢いていた指が敏感な女の子のたまらない箇所を探り当てたのだ。
その指を激しく蠢かせながら、敏感なメシベを舌と唇で責め嬲る。
内側と外側の最も感じる部分を同時に責められてはたまらない。
凄まじい快感の嵐が美雪の全身を揺さぶり、天の高みへと打ち上げる。
「だめぇ、お願い、あたし、だめぇ、もうだめぇ、ああああぁぁぁぁっ……!」
甲高い悲鳴と共に美雪の身体が激しく痙攣し、しばらくしてぐったりと動かなくなった。
激しく息を弾ませる美雪の身体に、新たな刺激が襲い掛かった。
恵子が美雪の腋の下に指を這わせ、激しく動かし始めたのだ。
「いやぁっ、だめっ、くすぐったい、お願い、やめて、お願い、きゃはははは……」
美雪は恵子の手の動きから逃れようと必死に腋を閉じようとするが、手のロープはそれを決して許さない。
それをいい事に、恵子の手の動きはなおも激しさを増し、脇腹やお腹にも移動して軽く撫でたり肌に深く食い込ませて震わせたりしながら耐え難い刺激の稲妻を美雪の身体に送り込む。
その手の動きの一つ一つに美雪の身体がガクガクと震え、甲高い笑い声が部屋に響く。
「お願い、だめぇ、お願い、もうだめぇ、もうやめて、お願い、きゃははは……」
「ダメよ。これはお仕置きなんだから。あと15分たっぷりくすぐってあげる」
「そんなのだめぇ、もうだめぇ、きゃはははは……」
美雪は激しく身悶えながら悲鳴と笑い声を上げ続ける。
「それじゃ、あと1回チャンスをあげる。美雪ちゃんの恥かしい所をもう一度可愛がってあげるから、美雪ちゃんは1時間我慢するの。それまでに昇り詰めちゃったら、残りの時間だけくすぐってあげるわ。それともこのまま15分くすぐられるのと、どっちがいいかしら」
美雪は激しいくすぐりに耐え切れず、とりあえずそのくすぐりが一時的に中断する方を選択してしまった。
しかし美雪の敏感な女の子の部分が恵子の巧みな技巧に5分も耐えられるはずがなかった。
そして、残りの55分以上を、恵子の指による激しいくすぐりの嵐の中で身悶えながら耐え続けなければならなかった。
激しいくすぐりの嵐がようやく通り過ぎ、ぐったりとしながら激しく息を弾ませている美雪。
その胸に恵子は顔を埋めて囁いた。
「美雪ちゃん、とっても可愛いわ。美雪ちゃん、とっても大好き」
恵子は胸の中央に唇を這わせ、やがて片方の膨らみへと滑らせ、固く尖ったまま震えている蕾を含み舌先で転がす。
静まりかけていた美雪の息が再び激しくなる。
恵子はその唇を上へ上へと滑らせ、敏感な首筋へと這い上がった。
そして耳元で囁く。
「美雪ちゃんはどう? あたしの事好きかしら?」
そして片手を背中の下に入れて指先を滑らせたかと思うと向こう側へと回し、そっと胸の膨らみを包みながら敏感な蕾を指先で転がす。
そしてもう片方の手を下の方の茂みへと伸ばし、その奥の敏感な花園をまさぐる。
「はうぅん……ああっ」
美雪の身体が再びのけぞる。
「あたしの事、好き? それとも、嫌い?」
美雪が答えずにいると、恵子の手の動きが意地悪く止まる。
「あっ……す、好き、大好きです。だからお願い、やめないで……」
「そう、いい子ね。それじゃ、もっともっと可愛がってあげる」
恵子は再び指を巧みに動かし、美雪を激しく狂わせのけぞらせた。
身支度を整え大きなバッグ肩に担いでドアに手をかけた美雪を、恵子は後ろから抱きしめた。
「美雪ちゃん、きっと帰ってきてくれるわよね。この可愛い自然な身体のまま、帰ってきてくれるわよね」
「先輩、何言ってるんですか。新学期になったらまた……」
美雪は言いながら恵子の声がいつもと違う事にハッとした。
「先輩、泣いてるんですか?」
「い、いえ。ただ、美雪ちゃん、だいぶ苦労してるようだから、もうこのまま戻ってこないんじゃないかって思って……」
美雪は恵子の方に向き直って笑った。
「大丈夫。それはこの学校の生活は大変でしたけど、今さら学校をやめるわけにも行かないわ。なんとかがんばって卒業しなくちゃ」
恵子も美雪の笑顔を見て笑った。
「それを聞いて安心したわ。じゃ、元気でね」
「ええ。先輩も元気で」
美雪はドアを開け、廊下に出た。
階段を降りようとした時、すぐ先の踊り場に、白百合女子学園の制服を着たお嬢様が立っていた。
隣のクラスの、可愛らしい小柄な少女だった。
「美雪ちゃん、実家に帰るのね」
「ええ、そうよ。それじゃ、また新学期に」
美雪はお嬢様の前を通り過ぎようとした。
その美雪の手を、お嬢様が掴んだ。
「え? 何か用かしら?」
美雪はお嬢様の方を振り向いた。
「美雪ちゃん、実家に帰るのが、怖くない? 学校での美雪ちゃんの行動、先生方があなたの親にみんな伝えてるわ。それでも、実家に帰れるの?」
お嬢様の表情は静かだったが、妙に真剣だった。
「そんなの、普通の親なら信じるはずないわ。それに、ここに来る前に恥かしい所を見られてるもの。ところで、あなたは実家に帰らないの?」
「そう。帰れないの」
「帰れない……って、もしかして、親が怖いの?」
「それもあるわ。それに、外へ出るのが怖いの」
「え?」
美雪はお嬢様の顔を見つめていた目を大きく見開いた。
「あ、もう行かなきゃ。それじゃ、元気でね」
お嬢様は何かを思い出したように階段を足早に降りていった。
「一体どうなってるのかしら、この学園は……」
美雪は下の方に遠ざかっていくお嬢様の足音を聞きながら呟いた。
白百合女子学園の生徒は一般生徒もお嬢様もほとんどがこの夏休みを学園の寮で過ごす。
実家に帰る生徒は珍しい。
もしかしたら美雪だけかもしれないのだ。
「みんな、親が怖いのかもしれないわね」
そう呟く美雪もまた正直な所、実家で親と顔を合わせるのは怖いのだ。
しかし、それでも実家に帰らなければならない。
「夏休みは必ず帰って来なさい」
数週間前に実家から届いた手紙にそう書かれていたのだ。
それに、実家に帰れば少なくともこの学園での恥かしい生活の事を少しは忘れていられるかもしれない。
夏の朝の日差しの中に出た美雪は、後ろを振り返り、今出てきたばかりの重々しい建物を見上げた。
古めかしい威厳をたたえる寮の建物は柔らかな朝日を浴びて輝いていたが、その光が濃い霧となって建物全体を覆い隠しているようにも見えた。
まるで後ろから追いかけて来るように思える建物を振り切るように足早に歩き、敷地の門までたどり着いた美雪は、外で待っていたタクシーのシートに座った。
タクシーが走り出し、寮と学園の建物が後ろへ遠ざかり、やがて見えなくなった時、美雪は胸をなで下ろし安堵の息を漏らした。
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