「きゃははは、どうしてこうなるのぉ、きゃははははは!」
ミカは激しく笑い悶えながら、狭く薄暗い空間を上へ上へと昇り続けていた。
ミサキの声に従って、さきほどの医務室のような部屋の壁の隠し扉をくぐったのはおよそ10分前。しかしその10分が、ミカには何時間にも感じられた。
扉をくぐった直後、いきなり周りから伸びて来た多関節アームに両手両脚を掴まれ、大きく広げさせられたのだ。
そこは人が何人か並んで立てるほどの広さの円筒形の空間で、壁は頭上の彼方まで続いている。
壁には至る所に小さな円い穴が開けられており、ミカの場所に近い穴から多関節アームが伸びていた。アームの先は人の手の指のように枝分れしており、その部分がミカの手足をつかんでいるのだ。
さらに次から次へと伸びて来るいくつものアームが、ミカのユニタードに包まれた身体を支え、上へ上へと送り出す。
そして、ミカの足が地面から離れると、アームどもはただ単にミカを持ち上げるのとは別な動きを始めたのだった。
今、ミカの身体に群がっているアームの指はミカの脇腹や腰にユニタードの上から食い込みつつ激しく蠢き、あるいは腋の下の窪みをくじり立て、太腿やお尻など全身の至る所を這い回っている。
胸の膨らみにもアームの指先が這い回り、固く膨らみ切った敏感な蕾をレオタードの上から執拗になぞる。
それらの動きの一つ一つがミカを激しく身悶えさせ、甲高い笑い声を上げさせる。しかし、いくら激しく身悶えても、手足を大きく広げさせられた無防備な状態では、それらの妖しい刺激から逃れる事はできない。
足の付け根に息づく女の子の最も大切な場所にも機械の指が這い回っている。恥ずかしい割れ目を布の上からなぞらる度にミカの身体が小刻みに震え、固く尖った敏感なメシベに触れられる度に大きくのけぞる。
「お願い、やめて、もうやめて、きゃはははは!」
ミカの甲高い悲鳴と笑い声が反響する。
それに答えるように、ミサキの愉快そうな声が響いた。
「ダメよ。だって、全身を徹底的にくすぐられるミカの笑い声と仕種、とっても可愛いんだもの」
「そんな、それじゃこれって、わざとやってるの?」
「わざとじゃないわ。もともとこの仕掛けは、この通路を通る者を限定するためのもの。くすぐられるのが大好きな人にしか通れないようにするためのものだもの。ただ、とめようと思えばとめられるけど、苦労してとめるよりは、あなたの悶えぶりをもっと眺めていたいだけよ」
「きゃははは、そんな、お願い、とめて、とめてよ。とめないと承知しないわよっ、きゃははははぁ!」
「あら、承知しないだなんて、恐ろしい事。それなら今のうちにもっともっと楽しんでおかなきゃね」
ミユキのその言葉と同時に、今まで停止していたユニタードの機能が、再び動き始めた。
「いやっ、そんな、だめぇ、きゃははははは、お願い、やめてぇ、きゃはははは!」
新たに襲って来た凄まじい刺激の嵐に、ミカはさらに激しく身を捩り笑い悶える。
腋の下、足の裏、背中、脇腹など、ユニタードにの布が密着した全ての箇所を小さな虫が這い回るような感覚に、ミカの身体が小刻みに痙攣する。
薄手の服に全身をくすぐられながら、外側からさらに機械の指に這い回られているのだからたまらない。あまりのくすぐったさに、今にも気が狂いそうだった。
しかし、手足を拘束されていてはそれらのくすぐりから逃れる事はできず、襲いかかる刺激にただ耐え続ける以外になす術はない。
ミカが抵抗できない事をいい事に、アームの指に悪戯され続けていた花園にもレオタードによる刺激が襲いかかり、その部分を護るはずの部分から伸びた糸が再び奧へと侵入し、激しく蠢く襞の隙間を這い回る。敏感なメシベにも、布から伸びた無数の毛が群がり撫でさする。
「あなたのここ、またぐしょぐしょになってるわ。口ではいやがってるのに、身体の方はくすぐられるのが大好きみたいね」
どこからともなく聞こえる恥ずかしい言葉に、ミカは顔を赤らめる。
「う、嘘よ、そんなのっ、きゃははは、お願い、やめて、やめてぇ、きゃはははぁ!」
激しく笑い叫びながら、全身を襲うくすぐりの刺激と秘めやかな花園から送り込まれる桃色の刺激に身体が勝手に反応し、恥ずかしい女の蜜がしとどに溢れてしまうのを、どうする事もできない。
「もうだめ、もう、お願い」
「ふふっ、イかせて欲しいの?」
ミユキの恥ずかしい質問に、ミカはためらっている余裕などなかった。
「そうよ、お願い、イかせてぇ!」
ミカは思わず恥ずかしい言葉を大声で叫んでいた。
「ふふっ、それじゃ、望みどおりイかせてあげるわ」
花園を刺激する毛の動きが激しくなった。それと同時に全身から送り込まれるくすぐりの刺激もまた激しさを増した。ユニタードにより無数の羽で撫で回されるような刺激を与えられ続ける全身の至る所に機械の指が這い回り、敏感な腋の下の窪みを激しくくじり立て、腰や脇腹に食い込んだ指が激しく蠢き奧の神経を転がす。
それらの動きの一つ一つが激しい刺激の爆発を引き起こし、爆風がミカの中を吹き荒れる。
「きゃはははぁ、だめぇ、腋はだめぇ、腰もだめぇ、足の裏もくすぐらないでぇ、お願い、きゃはははは!」
ミカは激しさを増して行く全身へのくすぐりに、思わず抗議の声を上げた。
「あら、あなたのエッチな顔といっしょに、笑った顔ももっともっと拝ませてもらいたかったのだけど、ダメだったかしら」
ミサキの声はそう質問しながらも、服と機械の指の動きは一向に弱まる様子はない。
凄まじい刺激の嵐に、ミカの理性が粉々に砕け散った。
「だめぇ、お願い、お願い、イかせてぇ、イかせてぇっ!」
全身のくすぐり責めがおさまらないのであれば、その耐えがたい刺激を、敏感な花園から送り込まれる桃色の刺激の高波によってかき消してほしかった。絶頂の極みに打ち震え、そのまま意識を失ってしまいたかった。
「こうしてほしいのかしら?」
敏感な花園を責め嬲る毛の蠢きが、さらに激しくなった。外側では固く尖ったメシベを何本もの細かい毛が撫でさすり、鞘の内側にまで侵入して根本からくじり立てている。そして、蜜で濡れそぼった花びらにもまた無数の毛が群がり撫で回している。
そして秘めやかな洞窟の奧では蜜で濡れそぼった襞の隙間に無数の毛が蠢きながら、壁から染み出す蜜を吸い立てる。
外側と内側の両方から桃色の津波が押し寄せ、全身から送り込まれるくすぐりの刺激と融合し、凄まじい高波となってミカを天の高みへと打ち上げた。
「ああっ、いくぅ、いっちゃうぅっ、ああああっ!」
全身を通り抜けるいくつもの桃色の稲妻に、ミカは身体をガクガクと痙攣させ、甲高い悲鳴を何度も上げ続けた。
「ミカ、ミカ、いつまで寝てるの。起きるのよ」
白い闇の中。遠くから自分を呼ぶ囁き声が聞こえる。その声はだんだんと近づき、大きくなっていく。ミカの身体がだれかに揺さぶられている。
だれの声なのか思い出した時、ハッと目を開いた。
目の前には若い女性の顔があった。緩やかにウェーブのかかった豊かな髪を腰の辺りまで伸ばし、身体にフィットしたシンプルな青いスーツに身を包んでいる。さきほどの部屋の空間に表示された女だ。
「あなたは……」
開こうとしたミカの口に、相手が素早く人さし指を当て、同時に彼女自身の口にも自分の指を当てて見せる。
「大きな声を上げてはだめ。さあ、ここから脱出するわよ」
女性に抱き起こされながら、ミカは周りを見回した。見たことのない装置が雑然と並べられた空間の狭い隙間に、二人は身をひそめるように座っていた。
「ミサキ。あなたはミサキなのね。ここはどこ?」
ミカは声をひそめてたずねた。
答えの代わりに、ミサキは立ち上がり、自分についてくるようにと身振りで示した。
所狭しと並べられた巨大な装置の数々。その間の隙間を縫うようにしてしばらく歩く。やがて二人の目の前に巨大な空間が開けた。
そこには棚のような装置が何列も並べられ、それらの棚にはガラスボールのような物が整然と並べられている。ボールの下部は棚の内部に埋め込まれているように見える。
いつの間に取り出したのか、ミサキの手には小型の銃が握られている。銃を構えながら注意深く辺りの様子をうかがいながら、棚の間を進んで行く。その後を、ミカは周りの棚を見回しながらついて行く。
棚に並べられたガラスボールは透明な液体で満たされているようだった。最初はそれだけだったが、ミサキの後に続いて歩いて行くうちに、その液体の中に漂っている物がはっきりと見て取れるカプセルが目に付くようになった。
液体の中に、人の形をしたものが背中を丸めて漂っている。その大きさはカプセルによって様々だった。
「ミサキ、ここはもしかして……」
ミカは昔、このような場所をテレビで見た事があった。その記憶に間違いがなければ、ここは……。
「そう。ここは第1マザーファクトリー。日本で人間を生産する為に作られた工場の第1号よ」
ミサキは慎重に歩きながら、静かに答えた。
二人は中央制御室に入った。壁面には様々な表やグラフが整然と表示され、空間にもホログラム表示されたCT画像やグラフなどが並んでいる。
その一つ一つを指さしながら、ミサキが口を開いた。
「生産計画とその進捗、生産中の各々胎児の状態、そして胎児を育てる為に稼動する各種装置の状態。表示されているからには、当然それを見て何かを判断する人間がいて当然よね。けれども今はこの部屋には誰もいない」
刻々と変化するグラフや、CT画像の鼓動を見渡しながら、ミカが言葉を継ぐ。
「それでも工場は動き続けている。政府から受信した生産計画を人工知能によって管理し、装置のメンテナンスもアンドロイドが行なう、完全に無人化された工場。そんな話も聞いたことがあるわ」
「だから私は簡単にここへ侵入できた。警備用のアンドロイドもいるけれど、それほど数は多くないから」
ミサキはウエストポーチから掌に乗るほどの大きさの薄い回路基板を取り出すと、その櫛状になった部分を部屋の中央のテーブルの狭い側面の目立たない位置に設けられたスリットに挿入した。テーブルに表示されたキーボードを操作すると、テーブル全面に工場の見取図が表示された。
「この赤い点が私たちの居る位置。そしてここが出口。普段はこことここに警備用アンドロイドがいるけれど、今は老朽化した一部の装置の修理に回っている。だから、このルートで出口まで辿り着けるわ。でも、その前に……」
ミサキは脱出ルートの説明を終えるとテーブルから見取図を消し、かわりに別な画面を表示させた。テーブルが文字の羅列で埋めつくされ、ミサキのキーボードの操作に従って、それが何度も切り替わったり流れたりしている。
「何をしているの?」
キーボードを叩き続けるミサキに、ミカが静かに聞いた。
「仕事の続きよ。私がここへ来た本当の目的。この工場の技術データを頂いて行くの」
「え? それって犯罪なんじゃ……」
「この国の人間であればね。でも私は今はこの国の人間ではないわ。そして、もうすぐ地球の人間でも太陽系の人間でもなくなる」
呆然とするミカに構わず、ミサキはひたすらテーブルに表示される文字の羅列を見詰めながらキーボードを叩き続けている。
「装置の設計データはあらかた採取したんだけど、もう一つ必要なデータが……あ、あった。これよこれ、これを探してたの。改ざんされる前の、人間の遺伝子データ」
「改ざん? 人間の欲求から性欲を削除した事ね」
「違うわ。確かにそうする計画ではあったけれど、実際には逆に性欲を高めるための書き換えが行なわれたの。ある組織の陰謀によってね。あなたがさっきまでいた地下施設も、その組織の経営する機関の一つよ」
ミサキの話によれば、政府の当初の計画がそのとおりに実行された場合、窮地に追い込まれる可能性のある業界があったという。テレビ局やビデオソフトメーカーなどの、映像メディア業界である。
その業界に属するほとんどの会社では、自社のコンテンツの見直しにより対応を図ったが、一部の企業は別な道を選択した。それはマザーファクトリーを管理する政府機関に賄賂を渡す事によって、人間の生産に使われる遺伝子に対して、逆に性欲を高める為の書き換えを施す事である。生産される男たちを、自分たちの将来の顧客とする為に。
「彼等はその計画の実行拠点として、この第1マザーファクトリーを選んだ。ここは自動化システムがほぼ完成していて、人間がいない分、内部への侵入も外部からのハッキングも容易であると考えたのね。そして、ここで男たちの生産に使われる遺伝子データを操作すると同時に、地下に施設を作り上げた。生産された男たちに見せるための映像を撮影するためのスタジオをね」
先に立って廊下を慎重に進みながら、ミサキは後に続くミカに小声で語った。
「それじゃ、あそこは女スパイを養成する所なんかじゃなくて……」
「そう。女の子が淫らな欲望に身悶える姿を撮影するための場所なのよ。かつて、ここで生産された男たちに配信するためにね」
話を聞きながら、ミカは顔をまっ赤にしていた。
――それじゃ、あたしのあの時の姿も、淫らな欲望を持った男たちに……。
寝室でユリノに悪戯され、恥ずかしい声を上げながら、恥辱の聖水を噴出してしまった自分。そして授業中、ユニタードによる悪戯に耐え切れず、恥ずかしい悲鳴を上げてしまった自分。そして全裸にされた上に他のクラスメイトたちに恥ずかしい部分を悪戯され、恥辱の熱水を噴出してしまった自分。
それらの恥ずかしい姿の一部始終が、牡の欲望に染まった男どもの目に触れてしまったかもしれない。その恥ずかしい可能性に、ミカは動揺を隠す事ができなかった。
ただ、それらの痴態のどこまでが撮影され配信されたのかまでは分からない。だから、女の子にとって最悪の事態になっていないようにと祈る余地はまだ残されている。それだけが唯一の希望だ。
――そうよ、まだ希望はある。それよりも、今はここを出るのが先決だわ。
気を取り直した時、すぐ先を直交する広い廊下の様子を壁際に身を寄せ窺っていたミサキが身体を硬直させた。
「動くな!」
鋭い声が廊下に響いた。
広い廊下から現れた白衣姿の女に、ミサキが銃を突き付けられている。白衣は下がズボンになった上下つなぎで、マスクのついた白いフードで首から上も目の周辺を除いてすっぽりと覆われているが、腰のくびれと胸の膨らみ、そしてさきほどの声から、彼女が女性である事だけは分かった。
白衣の女の銃口がミサキの胸元に向けられている一方で、ミサキの握る銃もまた、白衣の女の頭部に向けられている。
ミカが思わず後ずさりした時、白衣の女の視線がミカに向けられた。
その時、銃声が鳴り響いた。ミサキが引き金を引いたのだ。銃弾は女の額に命中したが、血は流れなかった。
ミサキは間髪を入れずに二発目、三発目を女の顔面に撃ち込む。その度に女の顔は銃弾に弾かれてのけぞり少しだけよろめき後じさりするものの、倒れる事はなく、彼女の握る銃は、相変わらずミサキの胸に狙いを定めている。
やがてミサキが銃に込められた弾を使い果たした時、女のフードはズタズタに千切れ飛び、露わになった顔にはボロボロになった皮膚の下に隠された金属のプレートが、穴だらけになって露出していた。
「ずいぶんと気性の荒い方だこと。か弱いレディーに向かっていきなりそんな物騒な物を使うなんて」
「何がか弱いレディーよ。人間ですらないくせに」
「そう。人間じゃないわ。でも、あなたが人間なら、もっと物を大切にする事を学ばなければならないのではなくて? それに、私たちにもあなたたちと同じように命がある。そして、その命は自分で守る」
ミサキの言葉にそう言い返しながら、女は金属の露出した顔に、銃を握っていないもう片方の手を当てた。手を当てた部分が赤く光り、小さな何かが手の内側で動いているのが見えた。
やがてその手が顔から離れた。白く輝く美しい肌をたたえた可愛らしい笑顔がそこにあった。肩の高さで切り揃えた黒髪がその顔を包んでいる。
「人形は顔が命。私は自分の命を自分の手で守る事ができる。あなたたちはどうかしら?」
ミサキの胸から顔面へと銃の狙いを定める女の顔は一見明るく微笑んでいるかのようだが、ミカにはその笑顔が悪魔の微笑みに見えた。
ミサキは銃を床に落とし、両手を上げた。
着ていた服を全て剥ぎ取られたミカとミサキ。彼女たちが連行された部屋では、黒いユニタード姿のヨシコと白衣姿のユリノが中央のテーブルの前の椅子に座って待ち構えていた。
窓のないその部屋は、かつて会議室として使用されていたものらしい。しかし、ユリノが手に持ったリモコンを操作すると、テーブルが変形を始めた。上面の大部分が折り畳まれて脇へ収まり、残されたフレームが回転して縦になり、それを支える足も長くなって間隔を縮め、全体的にぶら下がり健康器を思わせる姿となった。縦になったフレームの四隅付近に、小さな革のベルトが設けられている。
もう一台のテーブルもまた、同じ変形を完了していた。
ミカとミサキはそれぞれ、ぶら下がり健康器と化した2台のテーブルの革ベルトに手首と足首を拘束された。
X字に拘束された二人の裸身を間近に嘗めるように見回した後、ミサキの目の前でヨシコが口を開いた。
「あなたがここでこの工場に関する情報を持ち出そうとしていた事は分かっているわ。知りたいのは、あなたが今だれに雇われ、持ち出した情報をどこへ届けようとしているかという事。さあ、素直に白状なさい」
ミサキはヨシコに鋭い視線を向けて吐き捨てるように答えた。
「だれがあなたたちなんかに」
「ふふっ、そう来ると思ってたわ。現役の女スパイはそうでなくちゃね」
ヨシコはそう言いながら、ユリノに目で合図した。
ユリノが悪戯っぽい笑みを浮かべながらリモコンを操作すると、ミカの両脇のフレームに無数の穴が開き、それぞれの穴から小さな腕が這い出して来た。腕の先に取り付けられた小さな人の手がミカを取り囲み、一斉に指を蠢かせている。
「いやぁっ、それだけはやめてぇっ、お願い!」
指の蠢きを見たミカは、それらの手が自分の身体にもたらすであろう耐えがたい刺激を想像して身を震わせながら、思わず悲鳴を上げていた。
「ちょっとあんたたち、何をするつもり? ミカは関係ないのよ」
ミサキの叫び声に、ヨシコは妖しい笑みを浮かべた。
「ふふっ、あなたの口からそんな言葉が出るとは思わなかったわ。この子がここへ来る時に通った通路での、彼女の身悶えぶり。あなただって楽しんでたのではないかしら?」
「そっ、それは……」
図星を言われ、言葉に詰まるミサキ。
「ふふっ、まあいいわ。この子の身悶えぶりを見ながらゆっくりと考える事ね。私たちに話すか、それともこの子が笑い狂うのを見届けるか」
ヨシコがそう言うと、ユリノは再びリモコンを操作した。無数の小さな手が一斉にミカの裸身に襲いかかる。
「いやぁっ、だめぇ、きゃははははは! お願い、くすぐりだけはやめてぇ、きゃははははは!」
敏感な腋の下や脇腹は言うに及ばず、肩やお腹、太腿、背中、お尻、全身のありとあらゆる部分を這い回る小さな手の蠢きに、ミカは甲高い悲鳴と笑い声を上げながら激しく身を捩らせる。
それらの手を振り払おうとするかのように激しく身体を揺さぶるミカ。しかし無数の手はミカの身体の動きに正確に追従し、全身のありとあらゆる敏感なポイントを執拗に悪戯し続ける。
「ミカっ! くっ、あんたって人は!」
ミサキは目の前のヨシコの顔を再びきつく睨んだ。
「あらあら、そんな恐い顔をしなくてもいいのではなくて? それに、あなた本当にミカへのくすぐりをやめてほしいのかしら。本当はミカがくすぐられるのが可哀相なのではなく、ミカがくすぐったがる仕種をあなた以外の人に見られるのがイヤなのではなくて? ダメよ、女の子の可愛い笑顔はみんなで楽しまなきゃ」
ねっとりとした口調で囁くヨシコに、ミサキはなおも大声で叫ぶ。
「とにかくミカは関係ないの。拷問のためにくすぐるのなら、あたしをくすぐればいいじゃないのっ!」
「ふふっ、ミカがくすぐられるのを見ていたら、自分もくすぐってほしくなってきたってわけね」
「そんなわけないでしょ。とにかく……」
「ふふっ、本当にそんなわけないのかしら」
ヨシコは好奇心に目を輝かせると、いきなりミサキの無防備な足の付け根の花園へと手を伸ばした。秘めやかな花びらをかき分け、内側を指でまさぐる。
「ああっ!」
女の子の敏感な部分への突然の刺激に思わず叫んだミサキの目の前には、たった今ミサキの花園に触れた指が差し出されていた。透明な蜜がねっとりと糸を引いている。
「これでもそんなわけはないって言うの?」
ミサキは何も言う事ができず、目の前の指から顔を背けた。
「ふふっ、やっぱり本当はくすぐってほしいのよね。だって、あなたは現役の女スパイなんですもの。女スパイはみんな、くすぐり拷問に耐えるための訓練を受けるものだわ。そして中には訓練を受けている時にその刺激がクセになってしまう者も多いとか」
ヨシコはミサキの無防備な腋の下の窪みに蜜をなすりつけ、そのぬめりの上から軽くこすり立てた。
「ああっ!」
ヨシコの指の刺激に身を震わせ、思わず桃色の声を上げるミサキ。
「ふふっ、やっぱりその甘い声は、この刺激を欲しがっている証拠ね。望みどおりたっぷりと味わわせてあげる。ユリノ」
「はい」
名前を呼ばれたユリノは、待っていたかのようにリモコンを操作した。ミサキの両脇のフレームからも、無数の細い腕が伸び出し、小さな無数の手がミサキの全身のあらゆる箇所で指を激しく蠢かせる。
「いやぁっ、きゃははははは、こ、こんな事をしても無駄よ! 私は絶対に秘密を話したりなんかしないわぁ、きゃははははは!」
「ふふっ、そうでしょうね。でも、あなたの望みどおり、しばらく続けてあげるわ。ミカちゃんみたいな素人がくすぐられて笑い悶える姿も可愛いけれど、あなたのような気の強い女がくすぐられて笑い悶える姿を鑑賞するのもまた素晴らしい事だもの」
ヨシコはそう言って高らかに笑った。その声に、ミカとミサキの甲高い笑い声が重なり、狭い会議室に響き続ける。
やがてユリノが何かに気付いたように立ち上がった。全身の指の悪戯に身悶え続けるミカの前に立つと、太腿の内側に手を伸ばした。そこを撫で上げた手の指には、ねっとりとした蜜が絡み付いていた。それを得意気にヨシコに見せる。
「ふふっ、くすぐりがクセになってしまったのは、ミサキだけではないみたいね。でも、まだまだこれからよ。さあユリノ、その子にもくすぐりの味をもっともっと教えてあげるのよ」
ユリノはヨシコの言葉に頷くと、ミカの前に腰を降ろしミカの股間に顔を近づけた。そしてキラキラと光る蜜で濡れそぼった女の子の秘めやかな割れ目に唇を寄せ、舌先を内側へともぐり込ませた。
「ああっ、ああっ!」
ミカの口から甲高い桃色の喘ぎ声が洩れた。
内側に隠された可憐な花びらや敏感なメシベが刺激され、凄まじい快感の波となってミカの身体をガクガクと痙攣させる。
恥ずかしい花園から執拗に送り込まれ続ける快感の波は、全身から送り込まれるくすぐりの刺激と融合し、巨大な津波へと変化する。
「ああっ、もうだめぇ、もうだめぇ、ああああぁぁっ!」
甲高い桃色の悲鳴を上げたミカの身体が激しく痙攣し、それがしばらく続いた後、やがてぐったりと動かなくなった。
そんなミカの様子を見ながら、ヨシコがミサキの耳もとで意地悪く囁く。
「ふふっ、ミカったら、とっても気持良さそう。あなたもあんなふうになりたいんでしょ?」
「だ、だれがそんな事、きゃははははは、だめぇ、もうやめて、もう、きゃはははは、でないと、もう……」
「でないと、何なの」
「と、とにかくやめて、やめるのよ、きゃはははははは!」
ミサキはなおも全身を這い回り蠢き続ける指の悪戯に笑い身悶えながら訴える。
「ふふっ、本当にやめていいのかしら?」
ヨシコは言いながらユリノに目で指示を出した。ユリノがリモコンを操作すると、無数の指が全て、その動きを止めた。
「さあ、望みどおりやめてあげたわ。少しは楽になったかしら?」
ヨシコの言葉を聞きながら、ミサキは自分の恐れていた欲望に身を震わせていた。
あれほどやめてほしかったくすぐりの刺激。その気の狂うような妖しく異様な刺激を、今一度存分に味わいたい。もう一度、全身をくすぐられたくてたまらない。
「ふふっ、あなたの身体、まだ震えているわ。やはりもう一度くすぐられたいのね。気が狂うほどに、激しく」
「そんな事ないわっ、そんな事……」
「強がってもだめよ。さあ、あなたはどこから来たのかしら。教えてくれたら、もう一度存分にくすぐってあげるわ」
「そ、そんな事、絶対に、絶対に言わないわ」
「ふふっ、やはりこの程度では口を割らせるのは無理かしら。あなたたち、こっちへいらっしゃい」
ユリノは、いつの間にか部屋に入って壁際で待機していた女性型アンドロイド5体を呼び寄せた。ミカとミサキを連行してきたアンドロイドもその中にいた。皆いつの間にか白衣を脱ぎ、人間の女性そっくりに作られた裸身を露わにしている。顔だちも髪の色や長さも様々であるが、皆魅力的な姿をしていた。そして彼女たちの顔に浮かぶ微笑みは、まるでこれから始まるイベントを楽しみにしているかのようだった。
「今度はあなたたちも彼女の口を割らせる事に協力するの。いいわね」
ヨシコの言葉に、全裸の女たちは一斉に頷くと、ミサキの身体を取り囲み、彼女の真っ白な柔肌に手を伸ばした。
同時にユリノがリモコンを操作し、再びミサキの全身に群がる無数の手の指が、その妖しい蠢きを再開した。
無数の小さな手の蠢きがミサキの全身のあらゆる箇所を這い回ると同時に、女たちの指が脇腹やお腹、太腿の付け根の筋などに食いこみ、それらの奧の敏感な神経を揉み転がすように刺激する。
その凄まじいくすぐりの刺激に、ミサキは再び甲高い悲鳴と笑い声を上げていた。
「きゃはははは、だめぇ、こんなの、きゃははははあ、お願い、やめて、やめてぇ、きゃはははははは」
激しく身をよじらせ笑い悶えるミサキの耳もとで、再び意地悪く囁くヨシコ。
「ふふっ、この子たちが得意とするのは警備や装置の修理だけじゃなくてよ。女の子の身体をくすぐるのも、その辺のくすぐりマシンよりもはるかに上手なの。くすぐりマシンも便利だけど、やっぱり人間の身体は人の手でくすぐるのが一番よね。たっぷりと笑わせて、そしてあなたのその固い口を割らせてあげる」
ヨシコはそう言って高らかに笑ったが、その笑い声は部屋に響き続けるミサキとミカの甲高い笑い声にたちまちかき消されてしまうのだった。
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