ミニメロン作品

レディースデー
第3部 真実

3-2 聖地
 両脇のフレームから伸びた無数の腕によって全身をくすぐられ、笑い悶えるミカ。それがどれだけの時間続いているのか、ミカには分からない。
 ミサキもまた全裸の女たちに全身をくすぐられ、笑い悶え続けている。
「きゃははは、もうだめぇ、もうやめて、お願い、きゃははははは」
 甲高い笑い声を上げるミカの身体がねっとりと濡れて行く。ミカの恥ずかしい花園の奧に全身を這い回る指のうちの一本が差し入れられている。その指の先から無数の管が伸び、ミカの内側を蠢き這い回りながら、滴る蜜を吸い上げている。その蜜が、全身を這い回る指から分泌され、ミカの全身に塗たくられているのだ。
 そのぬめりは、這い回る指によるくすぐりの刺激を、より一層妖しく耐え難いものにしていた。
 ミサキの方も、全身を這い回る女たちの指先に、甲高い悲鳴と笑い声を上げ続けている。
「きゃははは、やめなさい、こんな事をしても無駄よ、きゃはははは!」
「ふふっ、本当にやめてほしいのかしら? でも、あなたのここ、こんなに濡れてるわよ」
 女の指がミカの恥ずかしい花園をまさぐり、その手をミサキの目の前に持って行く。指を開いたり閉じたりする度に、たっぷりと絡み付いた透明な蜜がねっとりと糸を引く。
「本当はもっとしてほしいんじゃなくて?」
 言いながら、女は指にからみついた蜜をミサキの胸の膨らみの先に息づく蕾へとぬりたくる。
「ああっ!」
 ミサキの口から桃色の喘ぎ声が洩れ、身体が大きくのけぞる。
「ふふっ、ここもとっても敏感なようね。それにすごく固くなってるわ」
 言いながら、蜜のぬめりの上から執拗に蕾を指でなぞり転がす。
 他の女たちもまたミサキの花園へと指を伸ばし、その奧からすくい取った恥ずかしい蜜を全身に塗たくる。そしてそのぬめりの上でなおも激しく指を蠢かせ、這い回らせる。
「むふっ、んあぁっ、きゃははっ、無駄だって言ってるでしょ」
 全身に塗たくられた蜜を通して送り込まれる凄まじいくすぐりの刺激に耐え続けるミサキ。
「確かにそのとおりのようね」
 ミサキの正面にいた女がミサキの身体から手を離した。それを合図に、他の女たちもくすぐりの手を止める。
「そのかわり、あなたにはこれをあげるわ」
 女はいつの間にか隣に立っていたヨシコから小さな容器を受け取った。それをミサキの目の前に差し出し、蓋を開けると、中の白いクリームをたっぷりと指に取った。
「それは一体何なの?」
 女はミサキの怪訝な目がクリームのたっぷりと載った指に向けられているのを確認して妖しい微笑みを浮かべると、その指をミサキの股間へと向かわせた。茂みをかき分け、秘めやかな花びらへと塗りたくる。
 たちまちその部分に熱を帯びたむず痒さが激しく蠢き始めた。無数の小さな虫がひしめき合いながら這い回り、肉を食い荒しているような刺激に、その部分が意志とは関係なく小刻みに震えてしまう。
「ああっ、ああああっ、いやっ、だめぇ、ああっ!」
 ミサキの口から激しい桃色の悲鳴と喘ぎ声が洩れる。
「ふふっ、どう、このお薬。とってもよく効くでしょ? たっぷりと味わうといいわ」
 女はふたたび容器の中のクリームをたっぷりとすくうと、その指をミサキの花園の奥深くへと差し入れ、激しく掻き回し、震え蠢く襞の間へと丹念に塗り込んで行く。
 そして外側で固く膨らみきり激しく震えているメシベにも、鞘を剥き上げてたっぷりと塗りたくる。
 作業を終えた女はクリームの容器をヨシコに返すと、他の女たちと共に腕を組み、妖しい笑みを浮かべながらミサキの身もだえぶりを観察し始めた。
「くっ、んっ、ああああぁっ、ああああああっ!」
 激しく腰をくねらせ、時折激しく身を震わせるミサキ。秘めやかな花園から滴る大量の蜜が糸を引いて床に落ち、水溜りを広げて行く。それが恥ずかしくてたまらないのに、ミサキにはどうする事もできない。
 花園の奧では凄まじいむず痒さに全ての襞が激しく蠢きなすり合い、蠢く虫どもを擦り潰そうとする。しかし潰された虫の破片は再び無数の虫へと生まれ変わり、新たなむず痒さとなってその部分を激しく悩ませるのだ。
 ミサキのすぐ後ろに立つ女が耳もとで歌うような口調で囁く。
「そのお薬を塗られたら、どんなに潔癖な女でも、たちまち人前で恥ずかしい事をを始めてしまうのよ。しかもどんなに濡れても、どんなにイっても、その効き目は消える事はないの。もちろん洗い流そうとしても無駄。そのお薬は一旦皮膚に吸収されると、女の子がくすぐられて、くすぐったくてたまらない時にアソコから滲み出す蜜でしか中和されないの。気が狂うほどのくすぐりを一晩中受けてようやく効き目が消えるのよ」
「そ、そんな、ああっ!」
 ミサキは敏感な花園に蠢く凄まじい刺激に、正気を保っているだけで精一杯だった。
「どう? 隣でくすぐられている、くすぐったがりなミカがうらやましくないかしら? 自分もミカと同じようにしてほしくないかしら? もしもあなたの雇い主を教えてくれたら、ミカへのくすぐりをやめて、かわりにあなたをくすぐってあげるけど」
「だれがそんな事……んあっ、ああああっ!」
 激しく身を捩りながら悲鳴を上げるミサキ。
「そう。まだ言う気にはならないのね。それじゃ、あなたには何もしてあげない。そのかわり、ミカちゃんにはもっともっとすごい事をしてあげる」
 女がそう言うと同時に、ミカの足もとの床が割れた。床の下は空洞になっており、そこには無数のウナギを思わせるヌメヌメとした生物がひしめき絡まり合いながら蠢いていた。
 その光景を目にしたミカは恐怖に怯えながら、全身を這い回る耐え難いくすぐりの嵐に甲高い悲鳴と笑い声を上げ続けている。その身体が彼女を拘束するフレームごとゆっくりと下降し始めた。
「いやっ、何なの、そんな、いやっ、きゃははははは!」
 ミカは思わず恐怖の声を上げながらも、フレームから伸びる無数の手になおもくすぐられ続け、笑い声を上げ続ける。
 やがてミカの足がウナギの蠢きの中に沈んだ。
「きゃははははは、だめぇ、いやぁっ、ああっ、あああああっ、きゃはははぁ!」
 足の裏と甲のあらゆる部分にウナギのぬめりがからみつき、激しく蠢きながら滑り抜けて行く妖しく耐え難い感触に、凄まじい悲鳴を上げるミカ。
 その悲鳴を無視するかのように、ミカの身体はウナギの大群の中に沈み続ける。脹脛が、太腿が、お尻が、ウナギの蠢きにさらされる。絡み付いたウナギのウロコがぬめりの中で起き上がり、激しく蠢く。
 ウナギに絡み付かれただけで耐え難いほどのくすぐったさなのに、その上無数の蠢く突起が這い回っているのだからたまらない。
 さらに腰、胸、そして肩から下が全てウナギの群の中に沈んだ所でようやく下降が止まった。
 その時、ミカの身体が大きくのけぞった。一匹のウナギがミカの無防備な女の子の花園の奧へと頭をもぐり込ませたのだ。
 ウナギの口から伸びる無数の細長い舌が激しく蠢く襞の一枚一枚を嘗め回し、壁のあらゆる箇所を吸い立てている。
 身体の外側と内側を同時にくすぐられ嘗め回される感覚に、ミカは今にも気が狂いそうだった。
「いやぁっ、何なの? ああああぁぁっ、ああああああっ!」
 甲高い悲鳴を上げるミカよりもよく通る声で、ミサキの前に立っていた女が説明する。
「それは普通のウナギではないのよ。さっきまでミカがいた学校で、上級生たちの授業に使われている、改良されたウナギなの。女の子の蜜をすすって育つようにね。中でも、女の子がくすぐられて気が狂うほどのくすぐったさに耐える時に溢れさせる蜜が大好物なの。だから女の子がどこをどうくすぐられると耐えられないか、どんなふうに弱点を探せばいいか、その辺のくすぐりマシンよりもとっても良く心得ているのよ」
 女が説明している間も、ミカはウナギの群の蠢きの中で甲高い悲鳴と笑い声を上げ続け、ミサキは恥ずかしい部分のむず痒い蠢きの切なさに激しく身悶え続けていた。
 その切なさは秘めやかな花園から徐々に全身に広がって行く。
 もしも手を拘束されていなければ、先ほどの女の言葉どおり、激しく疼く女の恥ずかしい花園を人目もはばからずに自分の指で激しくまさぐってしまっていただろう。
 それがかなわぬのなら、せめて全身のどの部分にでも何かが触れてほしくてたまらなかった。もしもその望みがかなえられたなら、たちまち全身を激しくのたうち回らせ恥ずかしい悲鳴を上げてしまうだろう。そしてさらなる刺激を求めて恥ずかしい言葉を口走りながら恥ずかしい悲鳴を上げてしまうのだ。
 それが分かっているのにそれを望まずにはいられない自分が恥ずかしくてたまらなかった。
「ふふっ、どう? あなたもミカちゃんみたいに、あのウナギたちに全身を這い回られてみたくない? とっても気持いいわよ」
 耳もとで囁かれる妖しい言葉。
「きゃははは、だめぇ、あたし、もう、もうだめ。これ以上されたら、あたしもう狂っちゃう! きゃははははぁ!」
 顔を大きく歪ませているミカの口から迸り続ける、部屋を揺るがすほどの激しい悲鳴と笑い声。
 それらがついにミサキに悲鳴を上げさせた。
「お願い、ミカを許してあげて! あたしの、あたしを!」
 ミサキの言葉を確かめるように、女の一人が耳もとで囁く。
「あなたを、どうしてほしいのかしら」
「あたしを、あたしをあの中へ……」
「ふふっ、あの中でウナギに全身を責め嬲られてほしいのね」
 女の言葉に顔を赤らめながら、激しく首を縦に振るミサキ。
「それじゃ、その前に質問に答えて頂けるわよね。あなたの雇い主はだれなのかしら?」
「あたしの……雇い主は……」
 そこまで言いかけた時、遠くの方から爆音が聞こえた。
 部屋の空間の中央に建物の立体模型が浮き上がり、その内部に赤い球体が現れた。その周りに爆発による被害状況を示す文字やグラフが次々に表示される。
「何だ今のは。一体何があった」
 ヨシコが慌てて椅子から立ち上がった時、部屋の入口の扉が開き、空色のスキンタイトスーツに身を包んだ女性がなだれ込んで来た。あっと言う間にヨシコを取り囲み、銃を向ける。
「もはやここまでよ。観念するのね!」
 銃を手にした女の一人が言い放った。
「くっ、お前たち、何をしている。早くこの者たちを……お、おいっ!」
 ヨシコが全裸の女たちに声をかけた時には、すでに彼女たちは元の白衣姿に戻っていた。人間には不可能な早業だった。
 部屋を出て行く白衣の女たち。
「私たちには他に任務があります。今の爆発で配管の一部が破損しました。一刻も早く修理しなければ、生産計画に遅れが生じてしまいます」
 最後の一人がそう言い残して部屋を出て行った。
 未だ部屋に響き続けるミカの悲鳴と笑い声、そしてミサキの悲鳴の中で、いくつもの銃口を向けられたヨシコは、がっくりと椅子に腰を落とした。

 宇宙空間を疾走する小型シャトル。その内部の一画に設けられた、白く円い壁で囲まれた狭い部屋で、ミカとミサキは甲高い悲鳴と笑い声を上げ続けていた。
 壁には無数の穴が開き、それぞれから細い腕が長く伸びている。腕の先は人の手のようになっており、それらの手の一つ一つがミカとミサキの裸身を這い回りながら指を激しく蠢かせているのだ。
 ミカの両手首はロープで縛られ、そのロープのもう片方の端は部屋の隅に固定されている。そして大きく広げた両足の足首もそれぞれロープで縛られ、それらのロープのもう片方の端が部屋の反対側の別々の隅に固定されている。
 ミサキもまたミカと同じように、両手をまっすぐ上に伸ばし、両足を大きく開いた状態でロープで拘束されている。
 無重力状態の部屋の空間の中央に互いに逆向きに拘束された二人の大きく開かれた太腿は、その付け根の花園を互いにぴったりと密着させるように組み合わされていた。そして、二人の花園の奧には一本の管が差し入れられていた。
 その管は、ミカの中でさらに細い管へと枝わ分かれしており、その一本一本が激しく蠢き襞の間を這い回りながら、ミサキの恥ずかしい蜜を吸い上げている。
 それだけでも恥ずかしい悲鳴と喘ぎ声をとめどなく上げてしまうほどの妖しい刺激なのに、さらに無数の機械の手で全身をくすぐられているのだからたまらない。
 内側と外側からの激しいくすぐりに、ミカは甲高い悲鳴と笑い声を上げ続けていた。
 ミカの花園の奧から伸びる管はミサキの花園へと差入れられ、やはり内側で細く枝わかれした管の一本一本が激しく蠢き這い回りながら、ミカの花園の奧から吸い上げられた蜜を先端から吹き出し続けている。
 管の蠢きによる内側の妖しい刺激と外側で蠢き這い回るくすぐりの刺激に、二人は激しく身悶え続ける。互いの濡れそぼった花びらと固く尖った敏感なメシベが擦り合わされ、全身を貫く快感の稲妻が二人の身体をなおも激しく震わせる。
 いくつもの快感の波が重なって巨大な津波となり、二人を何度も天の極みへと打ち上げる。それが何度繰りかえされても、二人に群がる手の指の蠢きは止まる事はなく、内側の細管はなおも激しく蠢き続け、ミカの奧から湧き出した蜜をミサキの奧へと送り込み続ける。
 無重力の部屋の中央で太腿を絡ませ身悶え続ける生まれたままの姿の姿をモミター越しに見詰めながら、別な部屋の壁に固定された寝袋から顔を出している女が口を開いた。
「あの子、このままでは気が狂ってしまうのではないかしら」
 その言葉に、同じ寝袋の同じ穴から顔を出している女が答えた。
「大丈夫。この程度のくすぐりで気が狂っていたら、拷問マシンの開発は務まらなかったはずよ」
「そうね。確かにそのとおりだわ」
 最初の女が頷いた。
「いずれにしても、彼女にはもう少しがんばってもらわなければ。ミサキの中に塗りたくられた薬を中和するには、女スパイとしての訓練を重ねた彼女本人をくすぐるだけでは不十分なのだから。ミサキよりもくすぐりに弱いミカの協力がどうしても必要なの。彼女を助けたのは私たちなのだから、このくらいの協力はしてもらわなきゃ」
「相変わらず強引なのね」
「ふふっ、強引って、こんなふうに?」
 女はそう言いながら、相手の唇に唇を押しつける。
 しばらくの間貪るように動いていた唇がようやく離れた時、相手の女が微笑んだ。
「そう。そんなふうに」
 二人は再び唇を合わせ、互いの唇を時間をかけて味わい続けた。

 淡い桃色の光に満たされた高級ホテルを思わせる広い部屋で、ミカは目覚めた。一体どれくらいの時間眠っていたのか分からなかった。
 軟らかなベッドの上で目覚めたのは久しぶりだった。
 ベッドから起き上がり、自分の身体を確認する。身に纏っている真っ白な寝巻は半透明の布で出来ていた。特に薄いわけでもないのに内側がくっきりと透けて見える。
 窓際に歩み寄り、カーテンの隙間から外の様子を窺う。一見澄み切った青空のように見えるドーム状の巨大な天井の下に、様々な形の高層ビルが建ち並び、その間をホバーカーが飛び交っている。
 ビルは直方体ではなく、曲線を基調とした丸みのあるデザインのものがほとんどで、地面に裾野を広げている建物ばかりではなく、細い柱に支えられ、ちょっと見ると空中に浮かんでいるように見える球形や楕円形の建造物も多く見られた。
「ここは一体……」
 ミサキが呟いた時、ドアからノックの音が響いた。ドアが開き、ミカと同様の服装をしたミサキが入って来た。
「お早う、ミカ。さっそく朝食にしましょう」
 後に続いて入って来た自動式のワゴンから、料理の載った皿やカップを取り上げ、テーブルの上に並べる。
 ワゴンが部屋から出て行った後、二人はテーブルの前の椅子に腰かけた。
 並べられた料理は窓から見た街並同様ミカの知らないものばかりだったが、味は申し分のないものだった。
 食事の間、服から透けて見える胸の膨らみをミカが腕で隠そうとしているのを見て、ミサキが聞いた。
「恥ずかしいの?」
「当たり前です」
「ここで暮らすようになれば、すぐに慣れるわ。それより、テレビでも見ましょうか」
 ミサキのその言葉に反応するかのように、テーブル上の空間に四角い画面が出現した。
「昨日逮捕されたヨシコ・フジワラ氏の取り調べを終えた警視庁が、本日の早朝記者会見を行ないました。それによりますと……」
 アナウンサーがそこまで言った時、ミサキが画面に手を伸ばした。
「こんなくだらないニュースを見てもしょうがないわ。それよりも、もっと面白い物を見せてあげる」
 ミサキの指が画面に触れると、表示が切り替わった。一覧表のような画面から一つの項目を指さすと、別な一覧表が現れた、同様の操作を何度か繰り返した後、別な映像が現れた。
 それを見た時、ミカは思わず手に持った食器を落とす所だった。
 若い女性が狭い部屋で何かに腰かけている。パンティを脹脛の辺りに降ろしている事や、背中の後ろに見える白くて四角い物体などから、そこがトイレの中である事が容易に分かった。当然、彼女が腰かけている物は洋式の便器である。
 彼女は桃色のミニスカートの中に片手をもぐり込ませ、閉じ合わせた太腿に挟み込ませたまま蠢かせている。さらに、白い薄手の服の内側にもう片方の手を入れ、胸のふくらみの先端に息づく蕾を指先で転がしている。ブラはしておらず、服は半透明であるため、蕾を転がす指の動きがはっきりと見て取れる。
 両手の動きに合わせて洩れる桃色の悲鳴と喘ぎ声。そして、妖しく悩ましい表情。
 彼女の手の動きと迸る声が次第に激しくなり、やがて全身をガクガクと震わせながら甲高い歓喜の悲鳴を上げ続け、やがてぐったりと動かなくなった。
「ふふっ、この子、普段はとっても可愛いのに、トイレに入るとこんな大胆な事をしてくれるの。彼女のトイレのカメラ映像、私のお気に入りなのよ」
 ミサキが画面を操作すると、今度は他の部屋の画像に切り替わった。女性二人の裸体がベッドの上で絡み合っている。互いの太腿の間に挟み込まれた頭が激しく動き続け、その動きに反応するかのように、時折激しく身を震わせている。
「これは、一体……」
 ミカは小さな声を震わせながら尋ねた。
「もちろん、他の女の子の部屋の様子よ。ここは女性だけが住む街。だからここに住む女性は私生活を他人の目から隠す必要はないの。むしろ自分の存在を積極的にアピールするために、部屋の至る所に配信用のカメラを仕掛ける事が、ここでの習わし」
 ミカは慌てて周りを見回す。
「もしかして、この部屋にも……」
「もちろん、ついてるわ。普段は朝食を取りながら話をしている所を撮影した映像なんて誰も興味を示さないものだけど、今日は少し様子が違うかも」
 ミサキの操作で画面に表示された一覧表には、何十人かの女性の名前が表示されていた。
「みんな、ここに来たばかりのあなたに興味を示しているの。彼女たちはあなたのトイレシーンとか想像しながら恥ずかしい事を始めてしまってるかも。試しに検索してみましょうか」
「け、検索?」
「そう。カメラで撮影された映像は、この街の住人であれば誰でも見る事ができるし、誰のどの部屋のカメラに今どんな面白いイベントが映っているかが簡単に検索できるシステムも整備されているの。逆に見られる方も、自分の姿がいつどのカメラで誰に見られたかを後で検索できるようになっているの。録画もされているから、数日前までの映像なら遡って見る事もできるわ。ここでは誰も自分を隠す事ができないかわりに、自分に誰がどんなふうに興味を持っているのかが簡単に分かるから、住民のみんながお互いに深く知り合う事ができるというわけ」
 ミサキが画面の操作を終え、検索結果が表示された。
「残念。あなたの姿を見て恥ずかしい事を始めちゃった人は、さすがにまだいないようね」
「あ、当たり前よ!」
 ミカは思わずティーカップの中味を一気に飲み干した。そして気がついた。目が覚めてから、まだトイレに行っていない事に。そして、今飲んだ紅茶の味に覚えがある事に。目の前のミサキが、目を妖しく輝かせ、悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「ふふっ、知っていたようね。そう。そのお茶、地球の女子刑務所で使われている利尿紅茶なの。これを飲めば、たいていの女の子は数分と持たずにトイレに駆け込んでしまうものよ。トイレにカメラが仕掛けられていると分かっていてもね」
「そ……そんな……あっ、んんっ……」
 ミカの女の子の恥ずかしい部分に恥ずかしい力が押し寄せて来た。全身を巡り知りつくした恥ずかしい水が終着点へと集まり、恥ずかしい出口をこじ開けようと躍起になっている。
 ミカはきつく閉じ合わせた太腿を激しく摺り合わせ、女の子の部分に渾身の力を込めながら必死に耐え続けるが、大いなる自然の力はそれをあざ笑うかのように急激に激しさを増して行く。
 ついに女の子の部分の力だけでは恥ずかしい水圧を抑える事ができなくなり、寝巻の裾の上から女の子の部分に両手を押し当ててしまった。それでも恥ずかしい水の力は弱まる事はない。
「お、お願い、トイレに行かせてぇっ!」
 ミカは身を捩り腰を揺すりながら、思わず大声で叫んだ。
「ふふっ、この部屋のトイレにはカメラがいっぱい付いているけど、それでもいいのね」
「そんなぁっ、ああっ、だめぇっ、だめぇっ!」
 叫び震えながら、懸命に尿意に耐え続けるミカ。
「ねえ、見て。この部屋のカメラ映像を見ている人の数が、一気に増えたわ。それに、ミカがオシッコを我慢する所を見ながら恥ずかしい事を始めちゃった子も、もうこんなにいっぱい……」
 ミカはもうミサキの言葉を聞いている余裕などなかった。一瞬でも気を逸らせば、恥ずかしい部分から羞恥の水が勢い良く噴出してしまいそうだった。ミカは全身を激しく震わせながら、恥ずかしい関所へ持てる力の全てを送り込み続けた。しかし、それももう限界だった。
「ああっ、もうだめ、もうだめぇ、ああああっ!」
 甲高い悲鳴と共に恥ずかしい激流が噴出し、閉じ合わせていた太腿の隙間に渦巻いた。太腿を伝い、あるいは椅子の上から滝のように流れ落ちた熱水が、床の上に大きな水たまりを作る。
 その間にも、ミカは太腿を激しく摺り合わせながら女の子の部分に渾身の力を込め、必死に止めようとする。
 ようやく水流が止まった時、ミカは塗れた椅子に座ったまま、ただ呆然と視線をさまよわせていた。また自分の恥ずかしい姿が大勢の人々の目にさらされてしまったという恥ずかしさだけが、ミカの中で渦巻いていた。
 半透明の寝巻の裾は、濡れた部分がほぼ透明になり、ミカの恥ずかしい水にまみれた太腿やその付け根の茂みなどが、外からはっきりと見て取れる。そのような有り様を確認する気力すら、今のミカには残されていなかった。
「あの……ミカちゃん」
 ミサキが恐る恐る声をかけた時、部屋のチャイムが鳴った。
「誰か来たみたいだから、出てくるわ」
 ミサキは立ち上がり、部屋を出た。
「あの子、いらっしゃるかしら?」
「ちょっと遅かったみたいね」
「今会えるかしら」
 遠くの方で何人かの女性の話し声が聞こえる。
「今案内するわ」
 ミサキが部屋に戻り、続いて3人の女性が入って来た。
 彼女たちに向けられたミカの目が大きく見開かれた。彼女たちの服装は、ミカやミサキよりもさらに薄い。というより、服を着ていなかった。手足の一部や腰、胸、肩などに飾りのリボンを巻いただけ。
 リボンの色は赤、ピンク、紫と人によって事なり、付け方も微妙に違っている。しかしいずれにしても太腿の付け根に通されたリボンは茂みを完全には覆っておらず、しかもリボン自体が半透明であるため、その部分を隠す役目を果たしていない。胸の膨らみに頂きを覆うようにかけられたリボンもまた、その下に息づく蕾を隠してはおらず、胸の膨らみの大部分は白く滑らかな肌の色をさらしている。
「あなた、ミカって言うのよね。私たち、このマンションの同じ階に住んでるの。どう? この街へ来た感想は」
「ミカちゃんがオシッコを懸命に我慢する姿、とっても可愛かったわ」
「あなたの事見てたら、あたしのここ、こんなふうになっちゃったんだから」
 最後にそう言った女性が紫色のリボンに包まれた自分の太腿の付け根を指でなぞり、その指をミカに差し出した。指の腹の上に、透明な蜜が光っていた。
「今度はあなたがこんなふうになるように、あたしたちでじっくりと可愛がってあげるわ」
「け、結構です。それよりも、早く私を帰して下さい。ここは地球ではないのでしょ?」
 ミカの言葉に、三人の女とミサキは顔を見合わせて頷いた。
 ミサキがミカの隣の椅子に腰を降ろす。
「あなた、今の地球にあなたがいるべき場所があるのかしら。今のあなたは地球上で安心して生活できるのかしら」
 テーブルの上には、いつの間にか再び地球のニュースが流れていた。ヨシコ・フジワラに関係する全ての人間が捕まったわけではない事、これまで第1マザーファクトリーにより生み出された男たちの回収は行なわず、彼らはこれまでどおりの生活を送る事、従って今後も彼らの中に性犯罪を犯す者が現れる可能性がある事などが報じられている。
「あなただけではないわ。日本に、地球上に残る女性はいずれ消え去る運命にある。本当ならば、みんなをここに呼び寄せて、私たちの計画に加わって欲しい。けれども実際にはここで生活できる人数は限られているからそういうわけにもいかないの。あなたが今ここにいる事は、あなたにとってとても幸運な事なのよ」
「あなたたちの、計画」
 ミカは小さな声で呟いた。
「そう。私たちは、ここに作られた女の楽園ごと地球を離れ、太陽系を離れ、別な惑星に移住するの」
「ここが、女の楽園?」
「そうよ。男たちの価値観にとらわれず、女性が本来の姿で生きる事ができる理想都市」
 赤いリボンの女がミカの耳もとで囁く。
「誰もあなたに強要はしないわ。地球に戻るか、それともここに留まって私たちに協力するか、よく考えて決めればいいわ」
 それから身を起こし、ミサキに顔を向けた。
「いずれにしても、彼女の市民登録はしておいた方がいいのではないかしら」
「そうね。しばらくここに住んでみて、どうしても馴染めないようなら地球に帰ればいい。ミカ、それでいいかしら?」
「分かったわ」
 ミサキの問い掛けに、ミカは静かに頷いた。

「私に見せたい物って、これですか?」
 ミカは、緑に囲まれた公演の一画に建てられた銅像を見上げながら、顔を赤らめていた。
 小学生ほどの全裸の女の子が台の上にしゃがみ、足の付け根に精巧に造形された花園の秘めやかな部分から、激しい水流を放出し続けている。
「そのとおりよ」
 隣で同じように銅像を見上げていたミサキが答えた。
 彼女たちのそばには、さきほどの三人の女性も並んで立っている。ミサキの部屋にいた時と同様、裸体をリボンで飾っただけの超軽装。これで外を出歩くなど、地球では考えられない事だった。
 ミカはビキニ姿。だが下の青い布は地球で見られるビキニに比べて極端に狭く、大切な部分をかろうじて覆う程度の面積しかない。しかも半透明なので、強い光が当たればたちまち透けて見えてしまう。
 この街では外を歩く時、自分が女性である事が容易に分かる服装をする習慣があり、逆に肝腎な部分を完全に隠して歩いていると、周りの人たちから怪しまれ、女である事をじっくりと確認される事になるのだとミサキは言っていた。
 そのミサキは、靴と靴下以外に何も身に着けていないという、極めて眩しい姿だった。
「私たちにはまだ、私たちだけで子孫を残すための設備がないわ。だから、従来の医療技術によって若さを保ち、寿命を伸ばし、欠員が出ないようにしているの。不慮の事故などで欠員が出たら、地球に降りて新たな女の子を招き入れる。そうして新たにこの都市へやって来た子は、まずここに案内されるの。この銅像は、私たちの生活を良く表現している芸術作品だし、新しくここに来た子にもそれほど刺激が強くないはずだから、まず最初にこれを見せるの」
「ここでの生活を表現している芸術作品?」
 首をかしげるミカに、ミサキは説明を続ける。
「小便小僧は地球にもあるでしょ? でも、小便少女はない。なぜだと思う? それは、女の子が女の子の身体の中で最も女の子らしい部分を人に見せる事が悪であると考えられているからよ。なぜならそれは人を、男を惑わせる行為だから」
 男の子は闘うために生まれて来る。闘うために、敵を倒すために強くなろうとする。しかし、彼らの目の前で女の子がオシッコをするだけで、彼らの心はかき乱され、女の子への関心を高める。人が人に関心を持つ事、それは闘うために生きる男にとっては邪魔な感情。そのような感情をいとも簡単に男の子に宿らせる女の子のその行為は、まさに悪魔の業なのだ。
「男が自分のそばに付く者を選ぶ時、その選択は、男であれ女であれ、その者がどれだけ自分の闘いを有利に導くかを正しく判断した上でなされなければならない。しかしその判断は、女がただ目の前でオシッコをするだけで、簡単に狂ってしまう。だからその姿を封印する必要があったのよ。地球ではね」
 ミサキはミカに向き直り、明るく笑って見せた。
「でも、ここではそんな男たちの都合など関係ないの。女の子がオシッコをする姿には、人を引きつける不思議な力がある。その力は地球では封印されているけれど、ここではそれを使ってより深い人間関係を築く事ができる。それは私たち女にとって、とても自然な事ではないかしら」
「分からないわ」
 ミカは銅像の周りに広がる池に視線を落とし、静かに首を振る。
 その肩に、ミサキが静かに手を置いた。
「今は分からなくてもいい。考える時間はいっぱいあるわ。ここがあなたにとっていいか悪いか、それはあなたが考えて決めればいい。私たちが他の恒星系を目指して出発するまでにね。さあ、いつまでもここにいても仕方がないから、取りあえず市民センターへ行って登録を済ませましょう」
 ミカは静かに頷き、ミサキの後に続いて歩き始めた。
 公園の駐車場で彼女たち5人を乗せたホバーカーは空中に浮き上がると、曲線美をたたえて街の中央にそびえる銀色の建物に向かって走り始めた。

―完―


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