ミニメロン作品

レディースデー
第1部 転職

1-5 研修
 シャトルから見下ろすリアルメカニクスの本社ビルは、銀色の輝きを誇り、まさに先端技術を牽引する企業といった印象を見る者に与える。しかし、それが内側の実態を隠すための目くらましである事が、ミカにはよく分かっていた。その目くらましは、ミカがそこを訪れる度に少しずつ厚みを増しているように思えた。
 シャトルは本社ビルの屋上に着陸した。
 シャトルから降りたミカを出迎えたのは、白衣を着た一人の若い女性だった。
 ミサ・キリシマと名乗るその女性は、営業研修のための研修室と称し、ミカをある部屋へと案内した。
 扉を開き、中に入る。
 壁、天井、床の全てが薄桃色に統一されたその部屋の中央には、一人の女性が全裸で仰向けに拘束されていた。彼女の手足は大きく拡げられた状態で、床から伸びた数本の腕の先に付けられた人工の手に掴まれ、腰と背中も床から伸びた数本の腕に支えられている。
 床から1メートルほど浮き上がった状態で仰向けに拘束されているその女性の顔に、ミカは見覚えがあった。
「ユキ!」
 ミカは思わず叫んだ。
「ミ、ミカ、お願い、見ないで……」
 ミカに気づいたユキも、目を見開いた。
「こ、これは……」
「ここは研修室よ」
 ミカの呟きに、ミサが答えた。
「普段は医務室だけど、営業研修の一環として、ここで行われている手術の様子を見てもらう事もあるの。それではさっそく始めるわね」
「始めるって、何を?」
「もちろん、営業研修よ」
 ミサが妖しい微笑みを浮かべた瞬間、ミカの立っている辺りの床に、幾つかの小さな穴が開き、細い腕が伸び上がって来た。
 ミカは驚き逃げる間もなく、数本の腕が素早く動き、ミカの両手首と両足首を捕えた。ユキと同じように、大きく手足を拡げた格好で宙に持ち上げられる。
「ちょっと、何するんですか!」
 ミカは思わず叫んだ。
「言ったでしょ? これは研修よ。営業成績が上がらない者がどんな目に遭うか、たっぷり教えるためのね。ついでに、あなたが営業活動に支障のない身体をしているかどうかも、じっくり検査させて頂くわ。ユキちゃんも、この研修を受けた時は、とっても可愛い笑顔を見せてくれたのよ。もっとも、これから始まる手術では、もっともっと可愛い笑顔が見れるんじゃないかと思って楽しみなんだけど」
 その言葉に、ユキの顔が僅かにこわばったように、ミカには見えた。
「彼女に何をするんですか」
「処女膜再生手術よ。これを見せるのも、あなたの研修の一環なの。あなたもいずれ、この手術を受ける事になるでしょうから、よく見ておく事ね。それじゃ、始めるわよ」
 ユキ・ヨシモトの下の床に、新たな穴が開いた。無数の妖しげな腕が伸び上がり、ユキの身体を取り囲む。それらの手の指の先には、小さな筆の穂先が取り付けられていた。
 一本の腕が、その人さし指に取り付けられた穂先でユキの胸の膨らみの先の蕾に触れた。
「い、いやぁっ!」
 ユキの身体がビクッと震え、小さな悲鳴が洩れる。
「ふふっ、相変わらずいい感度だわ。今回もあなたのいやらしい悲鳴と笑い声をたっぷりと楽しめそうね」
 ミサがそう言っている間にも、ユキの周りの手は次々とユキへの悪戯を開始した。
 無数の穂先が胸の膨らみや蕾の上を這い周り、脇腹や腋の下を撫で回し、太股を撫で回す。その動きの一つ一つに、ユキの身体がビクビクと震える。
「いやあっ、きゃはははっ、お願い、もうやめて、あんっ、きゃははっ」
 ユキの悲鳴に笑い声と甘い吐息が混じる。
 そんなユキの身体をミサが間近に見つめていた。
「ふふっ、ユキちゃんったら、乳首が固くなってるわ。とってもいやらしい子」
「い、言わないで、んあっ、きゃはっ!」
「あらあら、言葉遣いがなってないのね 躾が足りないせいかしら。こういう子には、たっぷりとお仕置きしてあげるわ」
 手の動きが激しくなった。まるで、ミサが自分の意志で思い通りに動かす事ができるかのようだ。
 ユキの足のを取り囲んでいた数本の手が足の指を摘んで拡げさせ、その指の間に別な手が筆を這わす。そのその妖しい刺激に、ユキはたまらず甲高い悲鳴と甲高い悲鳴と笑い声を上げた。
「きゃははは、だめぇ、お願い、やめて、きゃははははは」
 ユキは足の指の間に襲いかかる妖しい刺激から逃れるために必死に足をばたつかせようとするが、腕にしっかりと掴まれた足は全く動かず、つままれた足の指も閉じる事を許されない。それをいい事に、筆の刺激が容赦なく襲いかかる。
 指の間だけではない。足の裏にもまたいくつもの指が群がり、激しく筆を這い回らせている。
 それらの動きの一つ一つが、耐えがたく妖しい刺激を生み、ユキの感覚を激しく揺さぶる。
「きゃははは、だめぇ、くすぐったぁーい、お願い、もう、もう、やめて、きゃはははは……」
 激しい悲鳴が部屋に響く。
 その悲鳴を聞きながら、ミサは妖しい笑みを浮かべていた。
 数本の腕がユキの太股を這い上がり、脚の付け根へと到着した。そして、それらのうちの一本が、人さし指に取り付けられた筆の穂先をユキの女の花園へと這わせた。
「あうっ、んあっ、くふっ、ああっ、だめぇ、ああぁぁっ、きゃははははっ、んはっ!」
 ユキの甲高い笑い声に、甘い喘ぎ声が混じる。
 筆の先が敏感なメシベに触れると、ユキの身体がガクガクと痙攣し、桃色の悲鳴が部屋に響く。
 激しく妖しい筆の刺激によるユキの身悶えを、ミカは呆然と眺めていた。
 ユキの花園から透明な蜜が溢れ、糸を引いて床に落ちた。
「せ……先輩……」
 ミカは思わず呟いた。その声が、ユキの耳に届いた。
「ミカ、お願い、見ないで、ああっ、んあっ、きゃはははっああっ!」
 ミカの視線を感じながらも、ユキは恥ずかしい悪戯による身体の恥ずかしい蠢きと悲鳴をどうすることもできない。
「お願い、あたし、もうだめ、やめて、お願い、あっ、きゃははは!」
 ユキの悲鳴と笑い声を楽しみながら、リサが意地悪く答えた。
「だめよ。分かってるでしょ。これは手術の準備でもあるの。ちょうどいいわ。今、あっちであなたの恥ずかしい姿を見学しているミカちゃんは、まだ何も知らないの。先輩からの教育の一環として、あなたが説明してあげてちょうだい。なぜあなたが手術の準備としてこんな事をさせられているかをね」
「そんな……」
 ユキの顔が恥ずかしさに歪む。紅潮していた顔が、更に赤みを増して行く。
「いやならいいのよ。そのかわり、あなたの可愛らしい声をもっときかせてもらうわ」
 ユキを悪戯している手の動きが激しくなった。まるでミサの意志を読み取ったかのようだった。
 脇腹を筆で撫で回していた手が指を直に脇腹に食いこませ、激しく蠢かせる。
「だめぇ、きゃはははは〜」
 甲高い悲鳴にも似た笑い声が部屋に響く。
「どう? これでもいやかしら?」
 激しく妖しい指の動きによって送り込まれ全身を駆け抜け激しく震わせる猛烈な刺激に、ユキはもう耐えられなかった。
「分かった、分かったから、もう、お願い、くすぐるのだけはやめてぇ〜〜!」
「私の言った事を、あの子に説明してくれたら、やめてあげる」
「そ、そんな、きゃはははああぅ、あたし、あたし……」
 ユキは妖しい腕の悪戯に激しく身悶え笑い声と悲鳴を上げながら、必死の説明を始めた。
 ユキはこれから、処女膜の再生手術を受けるという。その手術は、女性の恥ずかしい部分に注入されるマイクロマシーンによって行われる。
 そして、マイクロマシーンが中で効率よく動けるようにするために、手術中はあそこの中をぐしょぐしょに濡らしておかなければならないのだ。
 また、処女膜を失うという事は、淑女に外って恥ずかしい事であり、そのお仕置きをも兼ねて、恥ずかしい部分が手術に充分なほど恥ずかしい蜜で満たされるまで、全身を徹底的にくすぐられるのだ。
 ユキが激しい刺激に身悶えながら、その恥ずかしい説明を終えた後で、ミサが続けた。
「彼女の場合は商談を成立させてくれたから、ご褒美としてここもこうして気持ちよくしてあげてるの」
 ミサは、筆で悪戯されているユキの脚の付け根の花園を指さした。
「けれども、もし商談が成立していなかったら、ここをこうする事なく、全身をくすぐり続けるのよ。もちろん、ここがこうなるまでね」
 一本の腕がミサの言葉に合わせるかのように、ユキのぐっしょりとぬれそぼった花園からしたたり落ちる蜜をすくい取った。ぬめりを確かめるように、濡れた指を開いたり閉じたりしして糸を引く蜜を見せつける。
「ふふっ、もうそろそろ準備完了のようね。それじゃ、始めるわよ」
 床の穴から、新たな腕が伸び上がった。手には、試験管がに握られている。よく見ると、その試験管の中には銀色の粉末が入っており、その一粒一粒が細かく蠢いているようだ。
 ユキの濡れそぼった花園の真上で、試験管が傾けられた。
 妖しく蠢く銀色の粉が花園にこぼれ、蜜のしたたりの中を泳ぎさかのぼるように泉の中へと入って行く。それに混じって、いくつもの桃色の肉の粒が運ばれて行く。
「あふぅ、くふぅん、ああっ、だめっ、そんな、ああっ、いやぁっ!」
 ユキの悲鳴と身悶えが激しくなった。
 その様子をミカは目を丸くして見ていた。
「手術がどんなふうに行われているか、分かるようにしてあげる」
 ミサの言葉と同時に、ミカの目の前の空間に立体映像が浮かび上がった。どうやらミサの脳はこの部屋の設備と無線接続されているらしい。
 ワイヤーフレームで描かれた曲りくねった管の隙間を、小さな粒が移動して行く。白く表示された粒の集団は壁面全体に拡がり、その一部で桃色の粒が互いに貼り合わされていく。
「無数のマイクロマシーンの中で、実際に処女膜を組み立てているのはごく一部。残りはと言うと……」
 壁面の一部が拡大表示された。
 粒の一つ一つはミジンコのような型をしており、壁面の襞の間を這い回っている。さらにミジンコの手足からはヒモのようなものが伸び、辺りを撫で回しているのだ。そのひもには、さらに細かい毛が無数に生え、その一つ一つが妖しく蠢いている。
「ふふっ、分かるかしら。ほとんどのマイクロマシーンは、手術に最適な環境を維持する働きをしているの。内側だけじゃなく、外側のマシーンたちも、こんなふうにがんばってるのよ」
 ユキの脚の付け根を筆の先で悪戯していた手の指が、ぬれそぼった花びらを拡げて見せた。
 花びらの内側には銀色の粉がびっしりと貼りつき、粒の一つ一つが激しく蠢きながら這い回っている。その上に息づくメシベも、妖しく蠢く銀色の粉に埋もれている。
 粉の動きによってもたらされる妖しい刺激によって、ユキの花園はヒクヒクと蠢き、透明な蜜がとめどなく溢れ出る。そして、全身がビクビクと痙攣する。
 痙攣が起こる度に、ミカの目の前に映し出された手術現場の壁面も大きく捩れ、その度にそれまで貼り合わされていた桃色の膜がバラバラになる。
「ユキったら、大人しくしてなきゃダメじゃないの。また最初からやり直しだわ」
「そんな、きゃははは、無理よぉ、きゃはははは、それに、説明したら、くすぐりはやめてくれるはずじゃなかったのぉ?」
 ユキは笑い身悶えながら抗議した。
 腋の下の手の動きは一向におさまる気配を見せず、それに加えて恥ずかしい部分を無数のマイクロマシーンが悪戯しているのだからたまらない。
「やめるのは、手術が終ってからよ。いつもは手術が終ってからもしばらくくすぐり続けるのを、今回はやめてあげるっていう事よ」
「そんなぁ、きゃはははは、あふぅ、ああっ! きゃはははは……」
「それに、何度も言うように、これはお仕置きでもあるの。この手術は、準備にとっても手間と時間がかかるの。だから、もう二度とこの手術を受ける事のないように、恥ずかしい悲鳴をたっぷりと上げてもらうの。大丈夫。何度もくり返しているうちに、身悶え疲れて中が蠢く事もなくなるわ。もっとも、その時はマイクロマシーンも何にも邪魔される事なく刺激を与え続ける事ができるから、あなたは何の抵抗もできずに全身と内側を悪戯されて、あそこをぐしょぐしょに濡らし続けることになるでしょうけど」
 ミサのあまりにも過激な説明を聞き、ユキの身悶えを見つめ、桃色の悲鳴を聞いていたミカは、ユキが受けている悪戯のもたらす妖しい刺激の凄まじさを想像せずにはいられない。
 その想像の刺激は、すでにミカの女の部分に妖しい炎をくすぶらせていた。
 ――ああっ、だめっ、あたし……なんだかおかしくなりそう……。
 ミカは、脚の付け根の恥ずかしい部分に生まれた小さな甘い疼きを鎮めようと、思わず太股をすり合わせようとした。
 しかし、ミカの脚をしっかりと掴んでいた腕は、それを許さなかった。
 ミサがミカの方へ顔を向けた。機械の腕にかかった力に気付いたのだ。
「ふふっ、あなたも感じてきちゃったのね」
 ミサに図星を言われ、ミカは顔を赤らめる。
「隠しても分かるわよ。この研修であそこをぐしょぐしょにしない女はいないもの」
 新たな腕がミカの太股を這い上がり、膝上までのグレーのスカートの中に浸入した。指が脚の付け根に到着し、パンティの上から花園をなぞる。その指が再びスカートから外へ出てミカの目の前へと移動する。その指にはねっとりとした透明な蜜が絡み付いていた。
「いやあっ!」
 ミカは恥ずかしさに顔を伏せた。
「ふふっ、これじゃ、新しいパンティに穿き替えなくちゃいけないわね。ちょうどいいわ。ここに配属されて1年以内の担当者は、外回りに行く時は当社指定のこのパンティに穿き替えなければならないの」
 ミサは白衣のポケットから小さな桃色の布切れを取り出した。
 それは複雑な模様の施された、しかしそれ以外には特に変わった所ののないパンティのように見えた。しかし、ミカは以前にそのパンティを資料で見たことがあるのを思い出し、目を見開いた。
「ふふっ、気がついたようね。そう。これは女子刑務所で今でも好評な、囚人用の下着よ。ふふっ、その様子だと、説明はいらないかしら。でも、念のため説明するわ。
 このパンティ、一見普通の生地で出来ているように見えるけど、遠隔操作で内側に毛を生やしたり、それらの毛を複雑に動かしたりできるの。
 毛には全てセンサーが組み込まれていて、穿いている女性のあそこの蠢き具合や濡れ具合を確認しながら、その時の状況に応じて自動的に毛の動かし方を変える事ができるの。
 ここでの使い方としては、例えば先輩社員が新人を連れて取引先を訪問する時、商談の間相手にリモコンを渡しておいたりすると、話がスムーズに進んだりするのよ。相手が男性の場合は特にね」
 ミサの言葉を聞きながらミカは震えていた。
 刑務所で手足の自由を奪われながら、このパンティに内側の毛でお尻を撫で回され、花園に毛を差し入れられ、花びらの内側や敏感なメシベをくすぐられた女囚たちは皆、恥ずかしい悲鳴と喘ぎ声を上げながら、歓びの極みに接近しつつも決してたどり着く事のできない切なさに、絶えず身悶え泣き叫び続けているという。
 そんなパンティを身に着けていたら、相手の男たちが商談成立の条件と称して雄の欲望をむき出しにして襲いかかって来ても、決して拒む事はできないだろう。
「いやっ、やめて!」
 ミカの悲鳴に構わず、数本の腕がミカの穿いていたパンティを引き下ろして脚から抜き去ると、ミサの差し出したパンティをミカの脚に通し、引き上げた。
 パンティの布がミカの女の部分にぴったりと密着した時、ミサは含み笑いを浮かべながら、ミカの目の前でリモコンを操作した。
 ミカの、パンティの布に触れている部分に、妖しい感触が襲いかかって来た。無数の毛がミカのお尻の感じやすい餅肌を撫で回し、前の方では長く伸びたいくつもの毛が恥ずかしい割れ目にもぐり込み、濡れそぼった花びらや敏感なメシベを撫で回す。
「あふぅっ、くぅっ、ああっ!」
 毛の動きの一つ一つが桃色の稲妻を送り込み、恥ずかしい悲鳴を上げさせる。
 その動きはますます激しくなり、ひときわ長い何本かの毛が蜜の溢れる中心へと侵入していく。そして幾重にも重なり蠢いている襞の隙間へと入り込んで這い回る。
 無数の桃色の稲妻が、ミカの恥ずかしい欲望を燃え上がらせ、理性を狂わせる。
 透明な蜜が、パンティから大量に染み出し、太股を伝いながらポタポタと床に落ちる。
 妖しい刺激をもたらす毛の動きを少しでも抑えようと、ミカは懸命に身を捩る。しかしそれは、ミカがどこをどう悪戯されると我慢できないかを意地悪なパンティに教える以外に何の効果も持たなかった。
「ああっ、もうだめぇ、いっちゃうぅぅ、ああああっ!」
 ミカが全身をガクガクと震わせながら甲高い悲鳴を上げた瞬間、毛の動きが突然弱まった。ミカを絶頂の極みに打ち上げていた桃色の嵐が勢力を弱め、遠のいて行く。
「そ……そんな……」
 ミカが悲嘆の呟きをもらした時、ミサがミカの耳許で意地悪く囁いた。
「ふふっ、最初はいやがってたのに、今は恥ずかしい所をもっともっと悪戯してほしいのかしら。新人の女の子はこのパンティに悪戯されると商談中だというのに自分の指であそこを悪戯してしまうのよ。でも、もちろんそんな事は淑女であるべき当社の従業員に許される事ではないわ。商談中はこのパンティにどんなにじらされても、相手からのリクエストがあるまで常に行儀よくしていなければならないわ。リクエストがあった時、それがどんなに恥ずかしいものであってもすぐに応えられるように、そしてあくまでも、その時を待たなければならないのよ。そしてそれは、あくまでも相手からのリクエストに応えての事。恥ずかしい悲鳴をもらしたり、恥ずかしい蜜で椅子を汚してしまったり、まして自分からおねだりなどしていたら、商談が不利になってしまうでしょ? だから、今そうしてしまったあなたには、たっぷりとお仕置きをしてあげなければいけないわ」
 ミサはミカの背後に回り込むと、大きく広げられた無防備な腋の下にブラウスの上から両手の指を当て、妖しく蠢かせ始めた。
「いやっ、きゃははは、お願い、やめて、きゃははははぁ〜」
 腋の下に食いこみ妖しく蠢く指の刺激に、ミカはたまらず甲高い笑い声を上げた。
「だめよ。あなたの恥ずかしい所から溢れ出たおねだりの証しが全部乾いて消えるまで、続けてあげる」
「そんな、きゃははははははぁ、あんっ、くふぅっ!」 
 パンティの内側の意地悪な毛の蠢きが再び激しくなり、ミカの笑い声に桃色の喘ぎ声が混じる。
 全身を突き抜けるいくつもの刺激の稲妻にミカは激しく身悶えながら、恥ずかしい悲鳴と喘ぎ声、そして笑い声を上げ続けた。
 やがてミカの身体が力尽き、声がかすれ、ミサの手の動きにも身体がビクビクと震えるのみとなった所で、ミサはようやくくすぐりの手を止めた。
「あらあら、もうダウンのようね。仕方がないわ。今日の所はこれで許してあげる。でも、あなたはこれから頻繁にここに来ることになりそうね。その時は、もっともっと可愛がってあげるから、楽しみにしててね」
 ミカは、朦朧とする意識の中でミサの言葉を聞いていた。
「ふふっ、そろそろユキちゃんの手術も終る頃ね。手術の出来栄えを確認しなくちゃ」
 ミサはそう言いながら、部屋の中央で身悶えているユキの方へ歩いて行った。
 ミカのパンティはまだ、敏感なお尻と女の部分を執拗に悪戯し続けている。そしてミカを恥ずかしい歓びの極みへと打ち上げては、その手前で引き戻す。その意地悪な毛の動きに、今にも気が狂ってしまいそうなのに、どうする事もできなかった。
「さあユキ、今度はあなたの番よ。機械に可愛がられるのはもう飽きたでしょ。今度はあたしの手でたっぷりと可愛がってあげるわ」
 ミサの言葉を聞きながら、ミカの意識はお尻を撫で回す妖しい刺激と恥ずかしい女の部分を襲う歓びの嵐に打ち砕かれ、桃色の渦の中へと引きずり込まれていった。

 夜空にそびえる本社ビルの壁面には、目鼻立ちや髪の色、服装などの異なる様々なアンドロイドが映し出され、歌を歌ったりダンスを踊ったりしながら愛嬌を振りまいている。
 数年前はビルの周辺の空間もアンドロイドの宣伝に使われたものだが、今では街の店の無数の看板の派手な輝きが所狭しと並んで踊っている。
 会社がアンドロイドを売るだけで利益を上げる事が難しくなってきている事は、こんな所からもうかがい知る事ができる。会社は効果のない宣伝を縮小し、その為に所有していた空間を売却したのだ。
 壁面で踊るロボットのコマーシャルを、ミカは向かい側のビルにある喫茶店の窓越しに眺めていた。今度自分がここを訪れる時は、そのコマーシャルすら流れなくなり、代わりに他企業のコマーシャルが流される事だろう。あるいは他企業のアンドロイドが映し出されるかもしれない。しかし、どのアンドロイドも男性の姿をして登場する事だけはないはずだ、とミカは思う。なぜなら、この場所で意味を持つコマーシャルは全て女性向けなのだから。
 かつて、男性と女性が分かれて暮らすようになった当初、男性型アンドロイドは女性向けの主力製品の一つであった。しかし、その売り上げは数年間で急激に落ち込み、今ではどのメーカーもほとんど生産しなくなっていた。
 女性が男性と生活を共にできていたのは、女性の環境適応能力のたまものなのだ。絶滅寸前の今になって、ようやく女性たちは「男性との共存」という男性社会の作り上げた男性中心の文化から解放されたのだ。
 ミカは、小学生の時に保護者たちに配られたまま決して使われる事のなかった教科書の事を思い出していた。
「男の子と女の子は成長するに従い、互いに興味を持つようになるのです」
 しかしそれは、男性社会によって生み出された偽りの知識にすぎなかった。
 やはり教科書というものはそんなものなのだ。書かれている事は役に立たないばかりか、時々間違っていたりもするのだ。そして、人が生きて行くために必要な事は何一つ書かれていない。例えば、「人はどのような時に、どこへ転職すればよいのか」といった事は、その典型的な例だ。
 その問いに答えてくれるはずの女性は、テーブルの向かい側で便箋の形をしたデータシートにペンを走らせている。シートから発せられる光が彼女のつややかな顔の白さをきわだたせている。
 シートの上には白い背景に何やら文字が並び、ペンによる操作で動いたり消えたり現れたりする。
 ミカはテーブルの上に置いた自分の掌に目を落とした。中指にはめた指輪によって、掌の中の空間に立体映像が表示されている。さきほど送られて来た名刺だ。
 宙に浮かぶ四角い平面の中で、受付嬢を思わせる制服を着た若い女性が、笑顔で身体をくねらせながら愛嬌を振りまいている。その脇でヨシコ・フジワラという名前とキャリア・ロータリーという会社名、そしてその会社の連絡先が、派手に色を変化させながらゆっくりと上下に往復している。
 地味なブレザーを着て真剣な面持ちでシートに取り組む目の前の女が服装を変えて踊ったら確かにこうなるだろう、と思わせる効果を、この名刺は持っている。しかし、この名刺を作るにあたって実際にヨシコ・フジワラがカメラの前で踊ったとは、ミカは思わなかった。自分も名刺を作った事があったからだ。
 恐らく表情と身体の動きは、有名女優からキャプチャーしたものだろう。
 見る目のある人がその名刺を見れば、それがどの女優のものであるかが分かり、それを社員の名刺に使用する為に必要な条件やライセンス金額が分かり、ひいてはその会社の持つ権力や財力を窺い知る事ができるだろう。
 しかしミカにとって芸能界や企業分析などは全く専門外なので、ヨシコ・フジワラとその会社について名刺が示す価値を、ミカは全く読み取る事ができなかった。
 リアルメカニクスの取引先評価データベースに名刺を送信すれば、何らかの答えが得られるかも知れないが、もちろんそんな物を私用に使う事はできない。
 古風なメイド服に身を包んだ若いウェイトレスがトレイを持って来た。
「お待たせしました」
 小皿に乗せたコーヒーカップを2組、テーブルの上に置く。
 ミカは彼女の顔を何気なしに見上げた。自分の会社のロボットかもしれない、と思ったが、どうやら違うようだ。接客中だというのに、彼女の顔には微笑みのかけらもなく、何か思いつめたような固い表情だった。
 ウェイトレス型アンドロイドであれば、客の前でこんな顔はしない。
 どうやらこの店のウェイトレスは、今どき珍しく皆が人間のようだ。この店の売りの一つなのだろうか。
 コーヒーを置き終えたウェイトレスがミカと目を合わせた。
「あの……御客様、あなたのお連れの方……」
 ミカにそう言いかけた時、それを遮るようにヨシコが声を上げた。
「ああっ、あなた、久しぶり。どう、ここの仕事はもう慣れたかしら?」
「え? ええ、まあ。それでは、ごゆっくりどうぞ」
 ウェイトレスは明らかにそれと分かる作り笑いを浮かべ、そそくさと立ち去って行った。
「お知り合いですか?」
 ミカはウェイトレスの態度に不信感を感じながら、ヨシコに訊ねた。
「ええ。私が彼女にこの店を紹介して上げたの。それより、早くお飲みなさい。さめちゃうわよ」
「は、ない。頂きます」
 ミカはコーヒーカップを手に取った。
 ヨシコは顔をシートに戻したが、視線はミカの手許にチラチラと向けられていた。
 ミカがコーヒーをのみ干したのを見届けると、ヨシコはシートに最後の操作を施し、ミカのコーヒーカップの脇に置いて見せた。
「見付かったわよ。あなたにぴったりの再就職先が」
 シートを見たとたん、ミカは悲鳴を上げそうになった。目を見開き口をパクパクさせる。しかし、どういうわけか声が出なかった。声だけではない。手も足も、全く動かなくなっている。まるで金縛りにでも遭ったかのようだ。
 身体の異変にパニックを起こしたように顔を引きつらせるミカに、ヨシコは勝ち誇ったように、優雅な落ち着いた口調で説明する。
「このお店では今、元リアルメカニクスの社員の女性を欲しがってるの。どうやらお客さんが彼女達に用があるみたいなのよね。どう? まさに今の会社の社員としてのキャリアを存分に活かせるお店だと思わないかしら? それなのに、ふふっ、どうしてそんなに恐い顔してるのかしら。身体が動かないから? 実はあなたの飲んだコーヒーには、ナノマシーンが混入してあったの。胃の粘膜から血管に入って血液に運ばれ、今ごろは脊髄に取りついているわ。大丈夫。解除モードでは自由に動けるようになるから心配しないで」
 突然、ミカの手が自分の意志とは関係なく動いた。自分の方を向いた掌の空間からは、いつの間にかヨシコの名刺が消え、白地にスミ一色で書かれた文書が表示されていた。表題部分には大きく「辞表」と書かれている。
 この時になってミカは気付いた。さきほどまでシートを操作していたヨシコは、ミカの再就職先の侯補を検討していたのではなく、ミカのケータイリングをハッキングしていたのだ。ミカをどこへ転職させるかは、始めから決まっていたのだ。
 しかし、そうと分かった今、ミカはケータイの勝手な動作を止めるどころか、声一つ上げる事ができない。
 ミカの掌の空間に「送信中」の文字が点滅し、やがて辞表と共に消えた。そして、ヨシコの差し出したシートに表示されているのと同じ映像が、ミカのコンパクトに表示された。
 妖しげなデザインの下着を身に着けた数名の若い女性が、店名と思われる妖しげなタイトルの下で、妖しげな笑みを浮かべながら身をくねらせ、こちらに妖しい視線を送っている。まるでミカが来るのを手ぐすね引いて待っているかのようだった。


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