ert作品

クスグリトラレ

第12話 星野さん
「……ほ、ほねがひ……、く、くしゅぐりだけわぁ……」
 ようやくくすぐりがやんで、星野さんはぜぇぜぇひゅうひゅうと息を切らす。
 全身汗びっしょりで、髪の毛や制服のシャツが肌にはりついている。
「もう一回」
 芦浦は彼女の足下に立って言う。
「……っ、ひ、ぇぐ」
 星野さんは、嗚咽を漏らして泣きだしてしまった。
 彼女は精神的にも肉体的にも限界のようだ。
「言わないなら」と、芦浦は星野さんの右足から素早くソックスを脱がし取る。
 露わになった星野さんの素足。親指だけが少し長くて、他の足の指の長さは一定に見えた。
 芦浦は、人差し指の爪で、星野さんの小指の付け根、足の縁の外側部分をくりくり引っ掻き始めた。

「きぃいいぃぃやはははははははは!!? ごほごほぉぉ〜〜っ、お、お、ひひひひひひ〜〜!!! もうや゛だあぁ゛あぁひひひひひ〜〜!!」

 星野さんは、枯れた声で再び笑い出した。
 足の指がくすぐったそうにくねくねよじれた。

「言え」
 芦浦が、小刻みに爪を動かしながら言う。

「くずぐり゛ぎもぢぃい゛〜〜ぎひひひひひひっひひひひひひひひひ!!!」

 星野さんは、くしゃくしゃに顔をゆがめて叫んだ。

「お前、ここ、コリコリされるの気持ちいいだろ?」
 芦浦は変わらず、星野さんの小指の付け根の下辺りをくすぐり続けている。
 実質指一本のくすぐりに、星野さんは異常なほど暴れている。

「あひひひひひひひひひ、やめ゛でぁ〜〜はははっはははは!!! そん゛な゛の゛ぜんぜんぅぅうひひひひひひっひ〜〜!!」

「もう一回」

「くしゅぐりぃぎもぢぃいいひひひひひひひひひひひひ〜〜!!?」

 星野さんは芦浦に強要され、何度も何度も叫ばされている。

「お前みたく自立心が強くて、変に気張ってて闘争好きなやつは、こことか、あと」
 芦浦はさらに、土踏まずのやや外側上部を二本の指でくすぐった。

「くひぃぃい゛ぃ゛ぃ〜〜!!? あひっひひひっひっひっひっひっひ嫌ぁああ゛あ゛あひゃひゃひゃひゃ!!」

 星野さんは、途端に目を見開いて、体を弓なりに突っ張って笑う。

「ほらな。怒りっぽい奴は胆のうにくるんだよ。にしても、凝り固まってんな。ほぐしてやるよ。気持ちいいだろ?」
 芦浦はにやにやと笑いながら、星野さんの右足の裏、土踏まずのやや外側上部を執拗にこそぐりまくる。

「い゛ぎゃぁあ゛ぁああははははひひひひひひっ、やう゛ぇでぇぇ゛ひひひひ、死んじゃうぅ゛ひひひひひ、がひぃいっひっひっひっひ!!!」

「言え」

「くしゅふひゅひゅ、くひゅぐりゅぢもひぃぃい〜〜あがががひひひひひひひひひひ!!!」

 星野さんは、ぶくぶく泡まで吹いている。
 芦浦はそこをしばらくくすぐってから、
「それから、腋が弱い奴は肺臓、そして肺臓と五臓五腑で対応する大腸あたりも……」
 足指の付け根のやや下のふくらんだ部位、そして、土踏まずのやや上の部分を、両手でくすぐった。

「ぶわぁ゛っはっはっはっはっはっは!?!? ひだぁぁあ゛ぁ゛ひゃひゃひゃ、ひぃぃ〜〜っひっひっひっひっひ!! やだぁあ゛ぁ゛」

「もう一回」

「ぐふぅぅ゛ぅ……ひっひっひ、くすぐり゛ぃいいひひひひひひ、気持ちい゛い゛ぎはははははっ!!」

 ――
 ―――
 ――――僕はそこまで動画内容を確認したところで、射精した。
 星野さんに申し訳なくて、自分に情けなくて、涙が出てきた。
 見ていられない。心が苦しい。……それなのに、目を離すことができない。
 彼女の恋愛感情はなかったはずだ。それなのに、こんなにも胸が痛くて……、壊されてゆく彼女の姿を見れば見るほど、興奮した。


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