鎖の夏合宿 |
ぴったりと体を寄り添わせて、二人はベッドに戻った。美園の隣に幸江がちょこんと腰をかけている。 「幸江…」 「なあに?」 「私たち、足を繋がれているから、同じベッドに寝なければならないわね。私と一緒に寝るのは嫌?」 「そ…そんなことないよ。でも何でそんなことを聞くの」 少し緊張したような幸江の様子を見て、美園は笑みを浮かべた。明るく快活ないつもの美園とは別人のような妖しく艶っぽい雰囲気に、幸江は完全に射すくめられてしまった。 (どうしたのかしら。美園、何だか瑞穂先輩や千里先輩に似ている。猫がトカゲをもてあそぶ時みたいな…) と同時になぜか胸が高鳴った。 「幸江、私ね、何で先輩が幸江の腕を縛ったのかわかった。何で私じゃなくて幸江だったのかわかった。きっと私にこうさせるためだったのよ」 美園は、幸江の頬を両手で包み込んだ。そうして幸江は唇を奪われてしまった。 「うう…ん」 幸江は抗議の声をあげようとしたが、美園に唇を塞がれているために、くぐもった呻きにしかならなかった。手で突き放したかったが、後ろ手に縛られている。幸江は、ただその身を捩って美園をふりほどこうとするのが精一杯だった。 美園の舌が、幸江の柔らかい唇を割り裂いて侵入してくる。 「んううう…」 ますます幸江の呻きは大きくなった。幸江の愛らしい口唇を味わいつくすかのように、美園は親友を貪った。美園の舌が幸江のそれを探り当て、絡めとる。粘膜が触れあい、くちゅくちゅという音がもれる。幸江は顔を背けようとするのだが、美園は許してくれなかった。 やがて幸江は諦めて体から力を抜いた。美園の腕が、そっと幸江の肩にまわされた。幸江の胸のふくらみに美園の胸が押しつけられる。そのまま幸江はベッドに押し倒された。 一分か、十分か、あるいは一時間か。もうどれほどの時間を二人は唇を重ねていたのだろうか。幸江も美園も時間の感覚が麻痺している。美園がゆっくりと抱擁を解き、口をはなした。幸江と美園とは、ベッドに寝転がったまま互いに見つめ合った。 「キスは初めて?」 「うん。男の子とも…女の子とも」 少しうつむきながら幸江は答えた。美園はほほえんだ。 「記念すべき幸江のファーストキスは私が頂いちゃったわけね。光栄だわ。 どう、気分は」 美園は、手を動かせない友人の体の上にのしかかり、自らの優位を幸江に知らしめた。 「さあ答えて。答えの内容によっては、トイレに行っても下着を脱がしてあげないから。高校生にもなってお漏らしなんて恥ずかしいでしょ」 「そ…そんな。ひどいよ」 「幸江は、私がいなければ何もできないのよ。逆に私は、幸江に何でもできるの。私のペットなのよ、幸江は。そこの所の立場の違いをよく自覚して答えてね。さもないと…」 美園はニヤリと笑った。美園の十本の指が幸江の脇の下に差し込まれる。 「ひゃん」 たったそれだけで幸江は甲高い声をあげてしまった。 「ここ、ずいぶんと弱いみたいね。ならこうしたらどうかしら」 体中で最もくすぐったいであろうと思われる場所で、美園の指がうごめき出した。何とも言えないくすぐったさが幸江に襲いかかる。滅多に経験することのない感覚に対し、幸江はどうすることもできなかった。 「ひゃ、ひゃははは。く、くすぐったい」 幸江は右に左にと体をくねらせ、美園の指から逃れようとする。脇の下をきつく閉じて美園の動きを封じようと試みたが、脇からするりと抜け出した指は、今度は、無防備な幸江の脇腹をやわやわと撫でだした。 「きゃはははは。お願い、やめてえ」 「なら言うのよ。さっきも言ったけど内容次第ではトイレで下着を脱がしてあげないし、このままずっとくすぐり続けるわよ」 「ひゃあ、言います。言いますから。美園に…キスされて…とてもうれしかったです」 美園に見下ろされながら、幸江は途切れとぎれに言った。が、これは全くの嘘ではなかった。幸江自身にも信じられないのだが、幸江の心の奥底ではむしろこの状況に淡い喜びを感じていた。肌と肌とのふれあいが、理屈抜きに心地よかった。 「よくできたわ」 可愛がっているペットの猫を撫でるように、美園は幸江の頭を撫でた。 「ねえ幸江、私のこと好き?」 唇と唇とが触れるくらいに顔を近づけ、美園は質問した。幸江に選択の自由はない。 「うん…好きです」 「うれしいわ。私も幸江のことが好きよ。食べてしまいたいくらい。目を閉じて。もう一回キスしてあげる」 幸江は口を半開きにしたまま目を閉じ、その時を待った。肩をつかまれたかと思うと、やさしく口づけされた。舌が入りこんでくる。 「んん…んふっ…ん」 嬌声の混じった声を幸江はもらしてしまう。 幸江がディープキスに気をとられている内に、美園が幸江の胸元に手を伸ばしてきた。柔らかでふっくらとした幸江の胸の隆起は、美園の手指によって揉みまわされた。 「幸江の胸、とっても柔らかい。いい手ざわり。ああ、布地越しなのがもどかしい」 美園は、幸江のシャツの裾を短パンから引っぱり出した。その隙間から美園の手は淫らな意図をもって幸江のシャツの内側に分け入った。 「や…許して、あん」 幸江は高い声をあげた。美園の手がブラジャーを押し上げた時に、カップの縁が乳首をこすったのだ。 「あらあら、こすれて痛かったかしら。ごめんね。でも本当に痛いのはこれからかもしれないわよ」 いかにも楽しげな表情をしながら、美園は友人の胸の肌ざわりを直に堪能していた。遠慮会釈もなく女性の脆弱な部分がこねまわされる。 「あああ、痛い。胸が潰れちゃうよ」 頭を激しくふりながら幸江は訴えた。その苦悶する姿が、美園の淫情をさらに刺激するとも気づかずに。 「思った通りだわ。吸いついてくるようなしっとりとしたお肌。瑞々しい桃のよう。私、桃にさわるたびに思っていたの。桃を一気にひねり潰したらどんなにか快感だろうって」 「お願い、そんなことやめて」 「それに大きいわ。私のより遙かに。羨ましい。私にも少し分けてよ」 二つの丘を両手でつかみしめ、美園は思い切り絞りあげた。 「ああああ…」 「その声いいわ。ねえ幸江、ご自慢の胸を見せてもらうわね」 「だめ。やめて。それだけは」 ひときわ大きく叫び幸江は身をよじった。そんなことにはお構いなしに美園は幸江のシャツを一気に捲り上げた。白い肌。豊かな胸がさらけだされる。 清楚可憐で深窓のお嬢様のような幸江だが、胸はまぎれもなく女のそれだった。顔に似合わぬ大きな胸に、幸江本人は劣等感を抱いていた。だからたとえ同性にでも、たとえ戯れにでも、幸江は胸を見せようとはしなかった。 夏などは、ジャージが着られる冬が待ち遠しかったし、更衣室でクラスメイトがふざけ合って互いの胸を披露していたりしても、幸江は離れた所でさっさと着替えていた。 その胸を他人に見られてしまった。いともあっさりと。ねっとりとした美園の視線を受け、幸江の胸はぷるぷると震えていた。 「きれい。サイズはいくつ?」 「お願い、見ないで。恥ずかしいの」 「今さら何を言っているのよ。アソコを見せ合った仲でしょ。それに、そんなことを言われるとよけいに見たくなるじゃないの。それよりも幸江、あなた本当に嫌がっているの。私にはとてもそうは見えないわ」 幸江の胸の頂にある薄い桃色の蕾に、美園は人差し指でふれた。それだけで幸江の体はぴくんと反応してしまう。 「ずいぶん敏感な乳首だこと。もうびんびんに勃ってるじゃない。これどういうこと」 左右の乳首を指先でひねりあげながら、美園は詰問した。 「うう…しらない」 とは言うものの、いつの間にか幸江の胸は熱を帯びていた。美園の手が這いまわるたびに、得体の知れない疼きが体中を駆けまわるのだ。しかし自分が性的快感を感じているのを告げることは、十六歳の少女にとってはあまりに恥ずかし過ぎた。 「素直じゃないわね。体はこんなに正直なのに心は頑固なのね。いいわ。素直になるまで責めてあげる」 美園は乳房から手を引いた。幸江がほっとしたのもつかの間、おもむろに美園は獲物の乳首を指で弾いた。 「はううう」 悲鳴がおさまりかけると、逆の乳首を弾かれた。 「うくっ…ああっ、ひいっ、いた」 幸江の哀れな叫びを耳にしながら、美園は続けざまに胸の蕾を打った。右を打つと左を。左を打つとまた右を… 幸江は休む暇さえ与えられない。ふっくらとした丸みと、しこって突き出したその蕾とは幸江の体の動きに合わせて揺れ踊った。肌は赤く染まり、幸江が受けている苦痛のほどを彷彿とさせる。 「いやあ…痛く…しないで」 幸江は何度も頭をふって許しを乞うた。 「許さないわよ。素直になるまで」 「ああ…素直になります。うくっ…美園にキスされて、胸を揉まれて…うれしくて感じてしまいました…」 痛みに負けて幸江は淫らな言葉を口にしてしまった。幸江の胸への過酷な拷問を美園は中断した。 「本当に?」 幸江はうなずいた。 「いつもとは違う雰囲気の美園が私のことを可愛がってくれて、心の中ではうれしかったの。本当よ。女の子どうしでキスしたりエッチしたりするなんて考えられなかったけれど、美園とだけなら…」 顔を赤らめながらも、幸江はしっかりと美園の瞳を見つめていた。その様子に心を打たれたのか、美園は、幸江の双方の乳首にそっと口づけした。 |
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