| 遺棄船の罠 |
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出航より数十日後。 コロンブス�困両莪�は、ようやくにしてマスコミ関係から解放された。 通常通信回線が鮮明に通じている間、ＴＶ局などからのインタビューや、選出された子供達との会話と言う企画が休みなく行われていたため、その場に観客がいないにも関わらず、彼女達は営業スマイルと芸能活動を続ける必要があったのである。その上、時間の経過と比例して通信状態が悪くなるため、そのスケジュール構成は「可能な限り」過密に、つまりは２４時間体制となっていたのである。 だが、数時間前にようやく通常回線での通話が困難な宙域に達した事により、彼女達は本来の姿に戻ることが出来たのである。 船であれ寮であれ、居住空間内に女性しかいないとなると、その普段着は羞恥心という物を忘れる傾向になるようで、彼女達の着衣は人目を気にする必要が無くなった瞬間から下着同然の状態に変化していた。 さすがに非難の目があるために、船内の公共の場で全裸になる者はいなかったが、個室ではそれも珍しい現象ではなかった。 「あ〜これで本当に開放されたわけね〜」 乗員全員が集う娯楽室のリクライニングシートで、大きく体を伸ばしながらキャロルが言った。既に彼女は船内に順応しているようで、自分の定位置を確保しているばかりか、その周囲は生活感に溢れていた。 「一旦開放・・・って言う方が正しいわね。帰ってきたらまた凄いわよ」 お好みのドリンクを手にして宇宙を眺めていたリンが、先程までの慌ただしさを思い起こして言った。 「会社の公報の力ってところでしょうけど、その時流に乗ってアイドルデビューなんて考えてもいいかもね〜」 ファーンの気の早い楽観論が指摘した通りコロンブス�犬蓮△修隆覿筏蚕僂凌茲鮟犬瓩娠�宙船であり、世間に注目させる巨大な広告媒体として大々的な宣伝が行われており、地球上で宇宙に少なからず関心のある人間で、その存在あるいは名前を聞いたことが無いと言う者は存在しないくらい、大規模な宣伝が成されている。 立場的にはレースクィーンなどと同様で、添え物である彼女達ではあったが、その注目の高さ故に、彼女達にも関心が集まるのは自然の成り行きであり、またそれを自分達自身の魅力によるものと錯覚するのも、主体が『船』という物体であるからに他ならない。 「でもさ、木星圏までの往復ってかなりの時間がかかるわよね？」 「それはそうよ。宇宙じゃ地上みたいに、お隣の島への処女航海って風にはいかないわよ。今の技術でも、行って帰るだけでも１年近くかかるのよ」 そうした知識には疎いキャロルが本職エルザに問いかけると、彼女は余計な専門用語を省いて結果のみを伝えた。 「その間にブーム過ぎてないかしら」 ファーンのささやかな野望を早々に打ち砕かんとする発言がキャロルから語られるが、エルザは首を横に振って否定した。 「それは大丈夫よ。私達・・・と言うより、船の宣伝にあれだけの大がかりな式典をしたんだから、それを無駄にする会社じゃないわ。きっと、後何日で帰って来るとかカウントダウンとかしてたりしているはずよ」 「私達が帰ってくる前に、この船以上の船が造られてなければね」 黙々と読書をしながら耳を傾けていたレイラがポツリと呟き、一同の注目を集めた。 「そんな事ありえるの？」 リンの質問に、レイラは曖昧に首を傾けると、手にしていた本を閉じて言った。 「この前読んだ大昔のＳＦ小説にあったのよ」 「何が？」 「遠い遠い、人類未到の星の調査か何かに出た宇宙船があったの。それはあまりに遠いため、乗組員はお約束の冷凍睡眠をして旅をしてたわけなんだけど、いざ、目的の星に着いてみると、人類が出迎えてくれたの」 「それって、宇宙人？」 「いいえ、地球人よ」 「え、何で？さっき人類未到って」 「そう、彼等が長い年月をかけて宇宙を旅している間に、地球でもっと早く高性能な船が造られて、彼等を追い越してしまって、先に到着し、開拓まで済ませていたのよ」 「ああ、成る程・・・・」 それは何数光年もの旅路に起きる現象。今の人類ならそう遠くない未来に起こし得る、ＳＦ小説だけのお話とは言い切れなくなった内容だとエルザは納得する。 「で、どうなったの？」 「自分達の長旅の意義を失った彼等は、失意の果てに自殺した・・・・そんな話しだったわ」 「うわ、暗っ」 結末に対する率直な感想を、ファーンが一言で述べた。 「でも、今回は惑星間航行よ。何年もかかる悠久の旅じゃないわ」 その悲劇が自分達に当てはまる可能性は低い事をポーラが指摘し、それに賛成する形でエルザが話を続けた。 「それに、ここ最近の宇宙船開発競争って凄いけど、私達が往復する期間で、そんな船を造って出航させるなんて不可能だから、その辺は安心してもいいわ」 現在、コロンブス�献�ラスの宇宙船を建造・研究している企業はまだ幾つかある。だが、新たな新技術が今この瞬間に開発されたとしても、それを用いて宇宙船を建造するには数年が必要な上に、実際に航海に出られるまでには数度の実験と検査をクリアしなければならない。特に新技術導入式ともなるとその検査の目は実に厳しく、彼女達が地球に戻る間には完成に至る事はまずあり得ないのだ。 「ブームが維持されているかどうかは保証できないけど・・・・」 最後にそう言ってエルザは肩を竦めた。 「結局、私達は会社の指示通り、最小限の人員で木星を往復して、快適な宇宙旅行を満喫しましたって、証明すれば良いのよ」 それ以外に出来ることが無いと理解しているファニーが言った。 「快適な・・・・ねぇ・・・・いい男どころか、只の男の一人も乗っていない船で１年ってのも問題有ると思うけど」 少し皮肉混じりにジュリアが言った。直球的な不満であったが、他の者も言葉にしないだけで、少なからず抱いている不満である。 「スキャンダル対策でしょうね。せっかくの看板娘が旅先で恋愛関係になってたら、船よりそっちの方に話題が集中するでしょ」 ポーラの指摘は当を得ていた。 「だからって、これから半年以上も男っ気無しじゃ、欲求不満のストレスがたまって、快適じゃなくなるわよ」 「それはそうだけど・・・・あっ」 これまた率直な意見であったが、当然これは船の設計と企画段階で予想されていた事案であり、その事に関しての説明を受けていたエルザが不意にそれを思い出して、声をあげた。 「？」 「そう言えば非公開装備に、その手の悩みに対する装備もあったわ」 口頭ではなく、事前に手渡されていた資料の内容を思い出しながらエルザが語る。 「「何それ？」」 何人かが同時に興味ありげな表情で問うた。 「ストレートに言えば、アダルト・トイよ。例えば・・・・キャロルのソファーベットだけど・・・」 そう言ってエルザは記憶を頼りに、ユニットデスクの下に備え付けられていた小さなリモコンを取り出すと、それをキャロルの方に向けて、スイッチを押した。 その途端、彼女の横たわるソファを支えるフレームから合成繊維のベルトが飛び出し、彼女を捕らえ、ソファから逃げられない状態で固定した。 「きゃっ！な、何よこれ？」 この素早い出来事に全く対応出来なかったキャロルが驚きの声をあげる。 「うわぁ、このソファ、こんな機能あったんだ・・・・」 思いもよらなかった機能を目の当たりにして、ファーンは感心した声をもらしてそのベルトに触れた。 素材は宇宙船のシートベルトに使用されるそれに似ており、素人目で見ても人間の力で引き剥がす事は不可能と理解できる物だった。 「そして、このスイッチで・・・・・・」 エルザはキャロルが完璧に固定された事を確認すると、意味ありげに笑ってリモコンを操作する。 「ちょおっと、何、何、何するつもりよ！？」 いきなり身動きできな状態に追いやられたキャロルは、不安げな声を上げたが、エルザはお構いなしにリモコンのスイッチを押す。 その信号を受けたソファは、ベルトと同様に、各所に隠されていた収納スペースの蓋を開け、中に待機させていた物を展開させた。 それは今の時代からすれば、かなり古風な「マジックハンド」であった。 右手か左手かも判別できない、赤ん坊の手程のサイズのそれは、駆動部を保護するためかゴム手袋のような物で保護されており、蛇のように自在にうねるアーム部分もゴムホースのような物で覆われ、実際の駆動部を晒していなかった。 その、幼児向け番組の出てきそうな玩具のようなマジックハンドが、ソファのフレームのあらゆる所から姿を現し、横たわったままのキャロルを取り囲んで鎌首をもたげていた。もちろん狙いは彼女である。 「ちょっとエルザぁ！これってもしかして・・・・」 「そう、貴女の予想している通りだと思う」 エルザは悪戯っぽい笑みを浮かべた。 キャロルは「それ」を知っていた。実際に体験した事は無かったが、その存在は以前見たアダルト雑誌の広告欄で何度も見ている。 『快楽ユニット −ハンディ�察檗� 類似品も多々あるが、この名称がよく紙面で見かけられる。既存のソファやベットに装着する大型のアダルトグッズで、 『コンピューター制御されたマジックハンドの群れが容赦なく貴女の性感帯を責めまくる！！』 と、したカタログ紹介が成されており、大型で値段も高めでありながら、そこそこの売上を見せている。 仕様用途の内容から、アダルト番組やラブホテルの設備などにも多用されている物でもある。 キャロルにも機会があれば自分も試してみたいという思いが少なからずあった。だが、それは仲間内で見られながらではない。そして何より、いきなりすぎた。 大人の玩具そのものが未経験の彼女に、これは心の準備の期間がなさすぎた。 「ちょ、ちょっと待って・・・・」 取り乱したキャロルが懇願するが、その言葉と同時に、エルザの指が無慈悲に動き、リモコンのスイッチを押す。 そしてコンマ数秒以下の時間差で、待機していたマジックハンドが一斉に身動きの出来ない彼女の身体に群がった。 「ちょっ、いやぁ〜！！あっ・・あっ・・何、何これっ・・・あっ、あひゃははははははははははははは！！！」 キャロルはベルトで押さえつけられた身体を身悶えさせながら激しく笑い出した。マジックハンドは彼女のラフな着衣の隙間に潜り込み、直接肌をまさぐり、くすぐりだしたのである。 その動きはこの時代の技術水準に相応しく、古風な外観にも関わらず巧みな動きを披露していた。 その見事な動きを見れば、技術系に関心のある者は感嘆の息をもらしたかも知れない。だが、その技術の披露対象にされているキャロルにはたまったものではない。赤ん坊ほどとは言え、本物と遜色のない動きをする手が無数に自分の身体をくすぐってくるのである。むしろ本物の赤ん坊の方が力加減も小さく、的確に弱点を探ろうとしないだけましと言えただろう。 「くすぐったいくすぐったい！やめてよ〜〜〜〜〜！！」 彼女はビクンビクンと身を震わせたが、ベルトは逃亡を許さず、マジックハンドは身を捩る動きに怯まずに、くすぐりを続ける。 「あはっあははははは、あ〜っはっははははははははは！！」 「ねぇ、何でくすぐりなの？」 「もっと色っぽい機能かと思ったんだけど」 ジュリアとファニーが、期待していた物と若干異なる現象を目の当たりにして、エルザに問いかけた。 「うん、私もそのつもりだったんだけど、初めて使うから操作ミスしたみたい」 「あ〜〜〜〜っっはははははは！！そ、そんな事はいいか、あひゃはははははははは、いいから、早く、いひゃはははははは、ああああはははははははは、早く止めてよ〜」 暢気なエルザに反して、キャロルは切羽詰まったかのように悲鳴を上げながらソファの上でのたうち回り、くすぐりハンドに翻弄されつづける。 「ん〜・・・でもこれも面白そう。私にもそのリモコン見せて」 言うが早いか、ジュリアは引ったくるようにしてエルザの手からリモコンを奪った。 「ちょ、ちょほぉっっっっっと〜〜〜〜私の話を・・いやっっははははっははあっははははは、そ、そこっ、弱っっ、あああっっっっははははっはははははははは！」 キャロルの苦しみは当事者にしか判らないものであったが、それを眺める側は身悶えるその姿をみて、被虐心が煽られていた。突発的に生じた苛めにクラス全員が参加するのに似た連鎖反応である。 「え〜と・・・・・これがモードセレクトで・・・・これがパワーの強弱ね」 そう言って見せて、ジュリアはそのリモコンのコントロール部を今なおくすぐられ続けているキャロルに向けて見せた。 「ほらほらキャロル、まだ今のくすぐりレベルって５段階で下から２番目よ。もっともっと激しくも出来るのよ」 「いやぁ〜〜〜〜〜あっあっあははははは、も、もう、これ以上っやぁっはははっははああああああああ」 キャロルは首を振り乱して拒絶したが、ジュリアは悪魔の笑みを浮かべてそれに応じると、リモコンのパワーレバーを親指で一気に押し上げた。 その途端、マジックハンドの動きが見て判るほど激しさを増した。 うねり蠢くアームの動きが活発になり、指の開閉運動も盛んになる。そしてバイブレーション機能が発生したらしく、掌全体が小刻みに震え、その姿を掠めさせていた。 「きゃぁぁぁぁぁぁぁ！！！ぁああっ〜〜〜〜〜っっはははははははは！ぎゃぁっははははははははは！！くる、くるし、くぁひゃははははははははははは！！」 その能力を最大限に発揮したマジックハンドに一斉に集られ、キャロルは狂ったような笑い声を上げた。 そしてその声に負けない程の勢いで身体を捩りまくる。その姿は捕獲されたゾンビが身体の損傷も考慮せず抗う様子にも似ている。 あまりのくすぐったさから逃れたい一心の行動か、くすぐりハンドの刺激による反射反応の結果か、観る側には容易に判断のつかない激しい反応であった。 「あひっあはははははははははは！！はぁ〜〜〜っっはっはあはははははははははは！！！」 笑い悶える事しか許されない彼女は、手入れしていた髪が痛み乱れるのもお構いなしに頭を振り乱し、その表情を汗と涙と涎で濡らしていた。 「凄いわね、これ・・・・」 「これだけ力一杯暴れたら、ストレスも一発解消ね」 「でも、ちょっと本来の使用法とは違う気が・・・・」 「結果オーライってやつよ」 半分意図的にキャロルの懇願を無視し続け、一同は新たに手に入れた遊び道具の効果を確認し続ける。 ・・・・・・・・・・・・
結局、彼女はくすぐり機能だけではなく、快楽機能その他の動作実験台にされてしまい、最終的にはくすぐと快楽モードを同時に選択した責めを存分に受けた挙げ句、絶頂による気絶という初体験に至るまで、無慈悲に機械の指で弄ばれた。
だがそれは、あくまで『コロンブス�検戮亡悗垢詬縦蠅任△蝓¬っ凌瑤奮暗�要因の関与までは計算には入ってはいなかった。
この船に無縁と思われていた緊張感が走ったのは、船内スピーカーを通して発せられた救難信号が原因であった。
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