朝霧作品

補佐という役職の本当の役割

第4章
 桃香の通報から、約15分後・・・。
 屋敷の客室には7人の人がいた。
 主である成兼とその側近の執事が4人。
 そして、桃香と、桃香の通報で駆け付けた年配の警察官が一名である。
 無事に通報できたことは良かった。
 だが、全てが理想通りではなかったのだ。
 (ちゃんと、被害の内容だってだって伝えてあったのに・・・)
 桃香は電話で"強姦事件"という言葉を使い、被害届を出す意思を伝えた。
 にもかかわらず、事実確認のために屋敷にやってきたのは女性警官ではなく男性警官だったのである。
 当然、年ごろの女性である桃香には、男性警官に性的被害の訴えをすることに抵抗があった。
 「では、原桃香さん。具体的な被害の内容をできるだけ細かく説明していただけますか?」
 一方の男性警官は桃香の恥じらいなど、まるで気にする様子もなく、淡々と質問をした。
 (でも、しかたないよね。もう、あんな目に合うよりいいもん・・・)
 桃香は、頬を赤らめながらも、必死に先ほどの"くすぐりの刑"について説明をした。

 「・・・ふーむ・・・」
 桃香が説明を終えてすぐ・・・。
 男性警官がいかにも困った様子を見せる。
 「あの・・・どこかわかりづらかったでしょうか・」
 不安になり尋ねる桃香。
 一方の警官は、手に持っているボールペンで頭をかきながら答える。
 「胸を揉まれたとか、性行為を強要されたとかなら、すぐに強姦だと判断できるのですが・・・」
 「くすぐり・・・ですか。"遊び"ともとれなくもないんですよねえ」
 どうやら、くすぐりが"強姦"か"遊び"かの判断で困っているらしい。
 そんな警官に、桃香はすぐに身を乗り出して言った。
 「拘束されて身動きも満足に取れなかったんですよ!?それのどこが"遊び"なんですか!?」
 「それに、私、何回も"やめてください"って言いました!嫌がる行為を続けたんですから、立派な犯罪です!」
 桃香がそういうと、警官は今度は、成兼たちを見た。
 「現場検証が必要ですね・・・」
 「とりあえず、その"くすぐりの刑"が行われた部屋というのをお見せ願えますか?」

  その後、現場検証のため、先ほど、部屋にいた7人全員と男性警官が再び、あの"特別学習室"へとやってきた。
 「・・・それで、身動きのできない私を、ご主人様はずっとくすぐり続けたんです!」
 桃香は必死に恥ずかしいのを我慢しながら、改めて、事件の詳細を警官に説明したのである。
 「うーん・・・・」
 それでも、なお、警官は何か悩んでいるようだった。
 (なにをそんなに悩むことがあるの!?)
 (あー、もう・・・私、本当はすごく恥ずかしいのに・・・)
 桃香が警官の態度にイライラし始めたそのときだった。
 「あの、成兼さん」
 不意に、警官が成兼に言った。
 「判断材料にしますので、もう一度、事件を再現していただけますか?」
 (・・・・えっ?)
 (この人、何を言ってるの?)
 あまりに予想外の一言に、桃香は一瞬、本当に頭が真っ白になった。
 「わかりました。では、お前たち・・・」
 だが、先ほどの警官の発言は言い間違いでも、聞き間違いでもないらしい。
 「はっ!」
 4人の執事たちは、再び、桃香を取り押さえ、T字の磔台に拘束しようとする。
 「ちょっと!ちょっと待ってください!」
 「再現するって・・・何でそんな必要があるんですか!?」
 当然のように、抗議する桃香。
 だが、4人を相手にしては、どうにもならない。
 桃香はすぐに手首・足首・腰に革ベルトを巻かれ、磔にされてしまった。
 「ほら!拘束された姿だけでも、見ればこの状況が遊びじゃないってわかるでしょう!?」
 「もういいですよね!?でしたら、すぐ解いてください!」
 桃香は懸命に体を可能な限り動かしながら、警官に叫んだ。
 「悪いね。ちょっと情報不足で判断しかねるから、もう一度だけ、全部、再現していただくね」
 だが、警官はまったく止める気などないようだ。
 「警察官の方に指示されては、しかたありませんな・・・」
 成兼も、先ほどと同じように、桃香の背後にたった。 
 (うそ!?うそでしょ!?なんでこんなことになるのよ!?)
 先ほどと同じように、徐々に成兼の手が、桃香の脇の下へと近づいてくる。
 そして、ついに・・・。
 こちょこちょこちょこちょ・・・
 こちょこちょこちょこちょ・・・
 桃香を先ほど笑い狂わせた刺激が、再び、左右の脇の下から送られ始めた。
 「なんで!?なんでこんな!?」
 「きゃははは!あーはっはっは」
 すぐに、大笑いを始める桃香。
 「あーはっはっは!もういい!もういいですよね!?」
 「きゃっはっは!もうやめ・・・あーっはっはっは!」
 「きゃーっはっはっは!やめてぇ!」
 桃香はすぐに、警官に何度も、くすぐりを拒否する言葉をいった。
 「ふーむ。なるほど。これが"くすぐり責め"というものなのですか・・・」
 「手足を何度もねじったりしているのは拘束具を外そうとしているからなのですかね?」 
 「つまり、それだけ、このくすぐりから逃げたいわけですか。なるほどなるほど」
 警官はまるで視姦を楽しむように、ただただ、くすぐられ、涙を流しながら笑い苦しむ桃香を見ていた。
 「あーはっはっは!きゃーはっはっは!」
 「なんでぇ!?きゃっはっは・・・あっはっは!」
 「もうやめてぇ!いーひっひっひ!」
 そのくすぐり責めは先ほど同様、本当に、1時間続いたのだった。


第3章 戻る 第5章