ミニメロン作品

聖華学園の地下室

第2章 試験
「優子、だれも追いかけて来ないみたいよ。もうちょっとゆっくり走っても大丈夫なんじゃない?」
 美奈子は全力で走りながら、前方を走る優子に声をかけた。
「それもそうね」
 後ろを確認しながら優子が答える。
 二人は立ち止まり、優子の広げた地図を再び確かめた。
 数枚の地図の上に、二人がさきほどまでいた教室から地下世界の外へ出るまでの、階段の上り下りを含む道順が破線で描かれている。
「今私たちがいるのはこの辺り。ここからここまでは、それほど時間はかからないはずよ」
 優子は一枚の地図と他のもう一枚の地図の一点をそれぞれ指差しながら言った。
「問題は、この通路ね」
 優子は後の方で指さした所から「外」へ通じる一本の通路をなぞった。
 地図上では途中が省略されて短く描かれているが、そのすぐ脇に「10km or ∞」という文字が書かれている。
「これはどういう事?」
 美奈子は文字を指差した。
 道のりが10キロメートルというのであれば分かる。
 普通に歩けば約3時間といった所だろうか。
 歩いて通るには相当に長い距離だが、歩こうと思えば歩けなくもない。
 しかし、「or ∞」とは一体どういう事なのか。
「とにかく、この通路の手前まで行ってみましょう。実際に行ってみれば、何か分かるんじゃないかしら」
「そうね」
 優子の提案に美奈子が頷いた。
 二人は地図を見ながら歩き始めた。
 様々な文様の刻まれた古めかしい壁から放たれる淡い緑色の光に照らされた暗く静かな通路に、二人の足音がこだまする。
 その音を聞きつけてだれかが追いかけてくるのではないかと時々足を止めて耳を澄まし、周りの様子を確認する。
 迷路のような複雑な道順を、二人は地図をたよりに進んでいく。
 階段を上ったり下りたり、いくつもの角を曲がったりしながら、ついに二人は一本の幅の広い通路の前に着いた。
 今まで通ってきた通路よりも広く天井の高い通路の壁の中央からまっすぐ伸びた別な通路が、目的の通路だった。
 しかしその通路の長さは、二人が地図の文字から想像していたよりもずっと短く、通路の出口とその先にある場所の向こう側の壁がはっきりと見える。
「この通路を通り過ぎれば、外に出られるわ」
「そうね」
 優子の言葉に美奈子は頷いた。
「でもこの通路、どう見ても10キロメートルもないわよ。それに『外』へ通じているはずなのに向こう側に壁が見えるなんて。もしかして、道を間違えたなんていう事はないかしら」
 美奈子は通路の先を見つめながら不安な声で聞いた。
「それは間違いないわ」
 優子はもう一度地図を広げ、「10km」の文字を指差した。
「多分、この文字が間違ってるのよ。10kmではなく、100mの間違いよ」
 優子は地図をしまった。
「それじゃ、通路の向こうまで競争よ」
 言うが早いか、通路を走り始める優子。
「ああっ、いきなり走るなんて、ずるい!」
 美奈子も慌てて追いかける。
「ずるくなんかないわよーだ。こーこまーでおーいで」
「ちょっと、待ってよ!」
 もうすぐ外へ出られるという期待に、二人の声は明るく弾んでいた。
 しかし、その期待はつかの間のものだった。
 通路の出口で優子はピタリと立ち止まった。
 追いついた美奈子と共に、呆然と辺りを見回す。
「そんな……ウソよ!」
 優子は慌てて地図を見直した。
 確かにこの通路に間違いないはずだ。
 しかし、今二人がいる場所から外へ出られそうな出口はなく、通路を通る前と同じような場所があるだけだった。
 優子はもう一度通路の方へ向き直り、入口の脇の壁に描かれた文様を見つめた。
「壁の文様まで同じ……まさか……」
 優子の表情には狼狽の色がはっきりと浮かんでいた。
「優子、どうしたの?」
 わけが分からず訊ねる美奈子に、優子が険しい顔を向けた。
「美奈子、今度は私が一人で向こうへ行くから、美奈子はここにいて、私の事を見ていてちょうだい。分かったわね?」
「え、ええ」
 ますますわけの分からないまま美奈子が頷くと、優子は通路を走り始めた。
 そして、通路の中ほどの辺りで立ち止まった。
 後ろを振り返った優子の目は、何に驚いたのか大きく見開かれていた。
 優子は再び走り始めたが、なぜかすぐに不自然に方向転換し、美奈子の所へ戻ってきた。
「私がどう見えたか教えてちょうだい」
 戻って来るなり優子が質問した。
 その顔は、通路へ入る前よりもさらに動揺している。
「どうって、途中まで走って行って、立ち止まってこっちを振り向いて、それからまた走り出して……走りながらこっちの方に向きを変えて、まっすぐ走って戻ってきたけど……」
「途中で立ち止まりはしたけど、これでも私は向こうまで走ったつもりよ」
「えっ? ……どういう事?」
 美奈子はますますわけが分からなくなっていた。
「あなたも、一度行ってみれば分かるわ。今度は私が見ててあげる」
 優子にそう言われた美奈子は、通路を走り始めた。
 そして、さきほどの優子と同じように、中央付近で立ち止まった。
「そんな……ウソよ!」
 美奈子は大きく目を見開き、呆然と立ち尽くしていた。
 美奈子が向かっていた通路の向こう側の出口に、突然人影が現れたのだ。
 それはまぎれもなく、通路に入る前に美奈子と一緒にいた優子の姿だった。
 美奈子は慌てて元の場所を振り返る。
 そこにも優子の同じ姿があった。
「そんな……こんな事って……」
 美奈子はただ狼狽しながら、とりあえず向かっていた方へ向かって歩いて行く。
 半分をだいぶ過ぎた辺りで再び後ろを振り返ると、通路の入口付近にいたはずの優子の姿が消えていた。
「一体これはどういう事?」
 通路を出た美奈子は、呆然とした表情で優子に訊ねた。
「多分、この通路には、私たちの感覚に作用する何かの力が存在するのよ。このままではこの通路を通る事はできないわ」
「それじゃ、どうすれば……」
「知りたければ教えてあげましょうか?」
 美奈子の問いかけに、優子ではないだれかが答えた。
 二人の聞き覚えのある声だった。
 慌てて辺りを見回し、声の主を探す。
 二人の立っている通路の入口に、修道女の服装をした高橋先生が立っていた。
 両手で持つトレイの上には、2つのティーカップが乗せてある。
 先生は二人の方へ歩きながら言葉を続けた。
「その通路を通る事は、卒業試験よ」
「卒業試験?」
 優子が聞き返した。
「そうよ。今のあなたたちには、この通路はほんの100メートルぐらいしかないように見えるでしょうけど、その状態ではこの通路は永久に通る事はできないわ。でも、私が持ってきたこの紅茶を飲んでからしばらくすると、あなたたちにもこちらから向こう側が見えないほど長い通路である事が分かるはずよ。そうなった後で通路に入り、途中で粗相をする事なく向こう側まで行けば、あなたたちは元の世界に戻れるわ」
「そ……そんな……」
 美奈子と優子は声を揃えて不服の声を漏らした。
 二人の脳裏にさきほどの教室での授業がよみがえった。
 強力な利尿効果を持つ紅茶を飲んだ後の女の子の部分の切なさと、それに負けてしまった時の恥かしさ……。
 先生が持っているトレイの上の紅茶が、それと同様か、あるいはそれ以上の効果を持つものである事は明らかだった。
 そして、それが女の子にとってどれほど耐え難い効果をもたらし、それに屈伏してしまった時にどれほどの恥かしさをもたらすものか、考えただけで女の子の恥かしい部分が悲鳴を上げそうだった。
 美奈子と優子は顔を見合わせた。
「優子、どうする?」
「決まってるわ。やるしかないでしょ?」
「そ……そうね……」
 もはや外へ出るにはこれしかないと諦めた二人は、高橋先生に勧められるままティーカップの紅茶を飲み干した。
 それから数秒もしないうちに、紅茶はその強力な効果を現しはじめていた。
「んんっ!」
「あっ、あううっ!」
 美奈子と優子は慌てて女の子の部分をスカートの上から両手できつく押さえた。
 同時に太腿をもじもじと激しく擦りあわせてしまう。
 紅茶の効果によって体中の水が目的地に素早く集結し、女の子の恥かしい出口に押し寄せたのだ。
 水の居場所はほどなくして満杯になってしまったが、その量はさらに増え続け、必死に出口を求めて暴れまわる。
 そしてその場所の唯一の出口である女の子の恥かしい部分をこじ開けようとしているのだ。
 か弱い女の子の部分は、それをこじ開けようとする水の執拗な悪戯に懸命に耐えながらも甲高い悲鳴を上げ続けている。
 その女の子の部分を二人は太腿の付け根と両手でなんとか応援しようとする。
 そのしぐさは女の子にとってたまらなく恥かしいものだった。
「二人ともそんな所を押さえながら身をくねらせて、とってもはしたないのね。でも、新入生だから今回は特別に大目に見て上げる。乙女の道がどれほど険しいものか、あなたたちもこれで思い知るでしょう。それじゃ、私は授業があるから戻るわ。多分あなたたちもすぐ戻ってくる事になると思うけど」
 先生はそう言い残すと、来た道を引き返して行った。
 水の悪戯に悶え続ける美奈子と優子は、先生の話の半分も聞いている余裕はなかった。
「もうだめ……もれちゃう」
「美奈子、頑張るのよ、ん……ああっ!」
「まだなの? 通路を通れるようになるのは、まだなの?」
 二人は女の子の部分のすさまじい悲鳴に顔を歪めながら、きつく閉じた目を時々開いて通路の様子を伺うが、紅茶を飲む前から変わった様子は全くない。
 ――これじゃ、通路に入る前にもれちゃうわ……。
 そんな考えが二人の脳裏をよぎる。
 すると、執拗な水の悪戯がますます激しく切なく感じられる。
 もう女の子の部分は限界だった。
「ああぁっ、もうだめぇ!」
「あたしもぉ、もうだめぇ!」
 美奈子と優子が甲高い悲鳴を上げた時、通路に突然変化が現れた。
 通路の壁の緑色の光が急に明るくなり、通路の内部がまばゆい光で満たされたのだ。
 その光が徐々に弱まっていく。
 元の明るさに戻った時、通路ははるか彼方まで伸びていた。
 近くに見えたはずの出口は、もはやその存在を目で確認する事はできなかった。
 美奈子と優子は目を丸くしたが、驚いている時間はなかった。
「美奈子、ん……ああっ……い……行くわよ」
「う……んあぁっ、うん」
 二人は女の子の恥かしい部分とそこをスカートの上から押さえる手に渾身の力を込めつつ、身を捩りながら通路を進み始めた。

 10キロメートルを秒速1メートルで歩けば約3時間。
 しかし、恥かしい内なる水の激しい悪戯に耐えるべく太腿をきつく擦りあわせながら歩を進める美奈子と優子には、その半分の速さで歩く事すらままならない。
 二人が通路に入ってからどれくらいの時間が経ったのか、二人には全く分からない。
 ただ、それは二人にとって恐ろしく長い時間のように感じられた。
 しかし、女の子の激しい悲鳴にきつく閉じた目を時々開いて後ろを見ると、入ってきた入口がまだ見えている。
 視線を前方に向けると、目指す出口は未だ遥か彼方にあって見えない。
 水の悪戯の激しさは二人のか弱い女の子の限界をとうに超え、二人が必死に閉じ合わせている太腿の付け根が少しでも開けば、あるいはその切なく恥かしい部分を懸命に押さえている手が一瞬でも離れれば、あるいはそれらの応援に励まされながらなおも渾身の力で水の責めに耐え続けている女の子の恥かしい部分から少しでも力が抜ければ、か弱い女の子に押し寄せる大量の熱く恥かしい水が恥かしい出口をこじ開けて勢いよく噴出し、たまらなく恥かしい大洪水がスカートの中で発生してしまいそうだった。
「ああ、もうだめぇ……もれちゃう……」
 美奈子は時々泣きそうな声をあげる。
「だ……だめよ……あきらめずにがんばらなきゃ……んああっ……でも……もう……あたしも……だめぇっ!」
 美奈子を叱咤する優子もまた、内なる水に責められ続けるか弱い女の子のたまらない切なさに、泣き出しそうな声を上げてしまう。
 二人の女子高生の可愛い顔は大きく歪み、汗でぐっしょりと濡れている。
 これほどの水の悪戯に懸命に耐え続けているというのに、通路の出口は今まで来た分よりもさらにもっともっと遠く、そこにたどり着くまでには水の悪戯の激しさも今の数倍に強まっているに違いない。
 その事が二人の脳裏をかすめる度に、恐ろしく恥かしい不安が胸に押し寄せる。
 その猛烈な水の悪戯に耐え続ける事ができなければ、今まで耐えてきた事が水の泡となり、高橋先生の待つあの教室まで戻されてしまう。
 そうなったら再びあの辛く恥かしい授業を受けなければならないのだ。
 その授業から逃れるためには、何としてもこの通路を出るまで、猛烈な水の悪戯に耐え続けなければならないのだ。
 容赦のない水の悪戯に負けまいと、二人はか弱い女の子の部分に入れた力をさらに強めようと、その部分に意識を集中する。
 水の悪戯に耐え続ける女の子の部分の切なさが、二人の全身を悩ませ、気が狂いそうになる。
 それでも二人は甲高い悲鳴を上げ続けるその部分を激しく叱咤し、さらなる力を込めて水の悪戯に耐え続けなければならない。
 その部分を応援する太腿の付け根や、スカートの上から押さえる両手にも、さらなる力を込める。
 そして、激しく身をよじりながら、いつたどり着けるか分からないゴールを目指して慎重に歩を進めていった。

 二人の女の子の部分が水の悪戯に必死に耐え続けた甲斐があって、通路の入口はみえなくなっていた。
 しかし、これから先どれだけ歩き続けなければならないのか、内なる大量の水によるか弱い女の子の部分への容赦のない悪戯に、あとどれだけ耐え続けなければならないのか、二人には全く分からなかった。
 水の悪戯は容赦なく激しさを増し、か弱い女の子は今にもその水の重さに押しつぶされてしまいそうだった。
 その女の子を支えるべく、きつく閉じ合わせる太腿の付け根は一瞬たりとも開く事はおろか左右を組み替える事すらままならない。
 スカートの上から押さえる手に渾身の力を込め続けていても、歩を進めるために後ろの足を前に出そうとすると、その時に太腿の付け根の閉じ合わせがわずかに緩む一瞬の隙をついて、意地悪な恥かしい水が一気に噴出してしまうのは確実だった。
 恥かしい女の子の甲高い悲鳴に身悶えながら、前後の足を少しずつ動かしながら壁にもたれかかりつつ這うように歩を進める。
 わずかな距離を進むのにも気の遠くなるような時間がかかり、その間にも水の悪戯は容赦なく激しさを増していく。
 かと言って、速く歩こうとすれば、歩く時の振動が水の悪戯に拍車をかけ、その度にか弱い女の子の部分が金切り声を上げると同時に、足の動きによって太腿の付け根が開いてしまう一瞬を狙ってその部分を一気にこじ開け噴出しようとする恥かしい水を、か弱い女の子の渾身の力で食い止めなければならないのだ。
「んんっ……ああぁぁ……もうだめぇ!」
「んんっ、あ……あたしも……」
 美奈子と優子は切ない声を上げ、身を捩りながら、気の遠くなるような時間をかけて通路を進み続けた。

 あれからどれだけの時間が過ぎたのか、美奈子と優子には考える余裕すらなかった。
 何日、いや、何ヶ月にも感じられる辛く切なく恥かしい時間、二人は身を捩り悲鳴を上げながら、太腿をきつく閉じ合わせ、もじもじと激しく擦りあわせ、その太腿の付け根をスカートの上からきつく押さえる両手に渾身の力を込めるという恥かしい格好のまま、執拗な水の悪戯に恥かしい悲鳴を上げ続ける女の子の部分にも渾身の力を込めつつ、懸命に通路を進み続けた。


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