聖華学園の地下室 |
――ああっ、もうだめ、オシッコが出ちゃう……! 美奈子は心の中で叫んだ。 淡い緑色の光に照らされた薄暗く広い教室には、さまざまな制服を着た女子高生たちが席に座っている。 彼女たちの異国の顔立ちは皆美しいが、その美しい顔が、ある者は時々、そしてある者はほとんど常に、切なそうに歪んでいる。 そして彼女たちの身体は小刻みに揺れ、太腿が椅子の上でもじもじと擦り合わされている。 机の下に隠れる事を許されない彼女たちの手は、机の上で祈るように組み合わされ、あるいは拳となって机の上にきつく押し付けられ、時々思いつめたように机の上を叩く。 本当は彼女たちの激しく切ない部分を励ましてあげたいのに、その部分へ行く事が禁じられている彼女たちの手にできる事は、机の上で不安げに動き回る事だけだった。 異国の女子高生の中に二人だけ混じっていた日本人の女子高生もまた、他の女子高生と同じように可愛らしい顔を切なげに歪めながら身を震わせている。 大橋美奈子と新藤優子だった。 二人が保健室からこの世界に迷い込んでから、数日。 しかし二人には数ヶ月ほどに感じられた。 それだけここでの生活は女の子にとって辛く長いものだった。 「ああっ、もうだめ……もう……」 「あたしも……漏れそう……!」 切なげな呟きが美奈子と優子の口から漏れる。 二人は握りしめた拳を机の上に押し付けながら激しく身を捩り、太腿の付け根をせわしなく擦り合わせ続けている。 眉根をきつく寄せた二人の表情が、二人の女の子の部分を弄ぶ恥かしい水の悪戯の凄まじさを物語っていた。 「ああっ、もうだめぇ!」 美奈子は女の子の部分のあまりの辛さについに悲鳴をあげると、机の上の拳をスカートの上へと持っていき、辛く恥かしい女の子の部分をきつく押さえてしまった。 「大橋美奈子さん、いったい何をやっているのですか!」 修道女の服装で女子高生たちの前に立っていた高橋先生が、美奈子の行動に素早く気づき、厳しい咎めの言葉が広い教室に響いた。 「あ……あたしも……もうだめ!」 新藤優子もまた、辛く恥かしい水の悪戯に身悶える女の子の部分の辛さに耐え切れず、その部分をスカートの上からきつく押さえてしまった。 高橋先生は二人の所へ足早に歩み寄ると、美奈子の手を掴んで辛く恥かしい部分から引き剥がした。 「いやあっ、だめぇ、漏れちゃう!」 美奈子は大声で叫んだ。 「女の子がそんなはしたない言葉を口にしてはいけません。恥かしい欲求をスマートに我慢する事は乙女にとって最も大切なたしなみです」 先生は厳しい口調で言いながら、剥がした美奈子の両手を机の上に押し付ける。 美奈子はそれに逆らう事ができなかった。 次に先生は後ろを向き、やはり手で恥かしい所を押さえながら身を捩っている優子の手を掴んでその部分から引き剥がした。 先生が優子に説教していた時、部屋の後ろの方の入口から中に入り、姿勢を低くして優子たちの方へ近づいてくる人影があった。 女子高生たちの何人かはそれに気付いたが、水の悪戯に身を捩っている彼女たちには、説教の最中の先生にその事を知らせる余裕などなかった。 「乙女であれば、他の人に見られている間は我慢し続けなければならないのよ。それなのにたったあれだけの紅茶を飲んで10分もしないうちに、あんなにはしたない仕種をするなんて。今度こんな事があったら許しませんからね!」 机の上に拳を押し付けきつく目を閉じ身を震わせている優子に、厳しい口調で言い残すと、先生は元の場所へと向かって歩き始めた。 その時、人影が優子の所へ到着した。 「優子、あたしよ。真紀子」 小声で呼びかけられた優子はきつく閉じていた目を開いた。 「お姉さん!」 優子は小声で叫んだ。 その隙をついて噴出しようとする恥かしい水を食い止めようと、渾身の力を込める。 優子の顔が一瞬大きく歪んだ。 真紀子の顔も時々せつなそうに歪む。 「あたし、時間がないの。ここから逃げたければ、これをよく読むのよ」 新藤真紀子は激しく震えながらせわしなく擦り合わされている優子の太腿の上に、持っていた封筒を乗せた。 次の瞬間、真紀子の顔が大きく歪んだ。 「んあっ……ああっ!」 切ない悲鳴が真紀子の口から漏れる。 その悲鳴が先生の耳に届いた。 「だれ?」 先生は声のした方へ顔を向けた。 そこにはすでに真紀子の姿はなかった。 先生が振り返る直前に、真紀子の姿はその場から一瞬にして消えてしまっていたのだ。 そうとは知らない先生は、悲鳴の主を探して教室を見回す。 「ああっ、もうだめぇ、ああああぁぁっ!」 高い悲鳴が教室に響いた。 美奈子だった。 机の上に顔を伏せている美奈子の泣き声に混じって、小川のせせらぎのような音が聞こえてくる。 美奈子の女の子の部分を攻め落とし、恥かしい出口をこじ開けた水が椅子の上から床へとこぼれ落ちる音だった。 「大橋さん、何をやっているのですか!」 先生は再び美奈子のそばに立った。 ぐしょぬれの椅子の上で小さな泣き声を漏らす美奈子に先生が説教をしている間、優子は太腿の封筒を素早く制服の内側に隠した。 そして、再び激しい悲鳴を上げている女の子の部分をスカートの上からしっかりと押さえた。 それでも、執拗な水の責めに耐え続ける女の子の悲鳴はおさまらず、優子は眉根を寄せきつく目を閉じながら、身体を小刻みに揺らし続ける。 先生の様子をうかがい自分の姿が先生の目に入る直前に手を元の場所に戻したいのだが、もはや優子には、先生の様子を伺う余裕も、女の子の部分から手を離し、その部分だけで水の力に抵抗する余裕もなかった。 「新藤さん、何度言われたら分かるのですか!」 先生は再び優子の手を掴んで引っ張った。 「あうぅっ、もうだめぇ、ああああっ!」 手がスカートから離れた瞬間、優子の女の子の部分は限界を迎えた。 スカートの、今まで手を当てていた部分の色が濃くなった。 椅子の上に水が広がり、滝のように床の上に落ちる。 「新藤さん、あなたもですか!」 先生の金切り声が再び部屋に響き、今度は優子に対する説教が始まった。 優子もまた、その説教をただ静かに涙を流しながら聞いている事しかできなかった。 「とにかく二人とも、さっさと着替えてきなさい!」 先生の言葉により、美奈子と優子は黙って席を立ち、部屋の後ろの方の、仕切り板で囲まれた場所へと向かった。 仕切りを少しずらし、二人は中に入った。 その場所は、扉のない多段式のロッカーに密着するように設けられていた。 二人はロッカーに用意されている着替えのパンティー、スカート、靴下、上履きをそれぞれ一つずつ取り、着替え始めた。 着替えを終わらせ席に戻れば、再びあの強力な利尿紅茶を飲まされ、その効果による激しく恥かしい水の責めに耐え続けなければならない。 そんな思いからか、美奈子の着替えの手の動きは無意識のうちに遅くなっていた。 しかし、いつまでもここでこうしているわけにもいかないのだ。 「ああっ、ん……も……もう……」 「んああっ……くうっ……」 席に座っている生徒たちの切ない悲鳴が聞こえてくる。 彼女たちがこの場所を使わなければならなくなるまであまり時間がなさそうだ。 それまでにここを出なければ、今度は先生に何をされるか分からない。 一方優子の方は、涙を手で拭うと、てきぱきと着替えを済ませ、美奈子が着替えているのを見つめていた。 他人に見られている事による恥かしさが美奈子をさらに泣きたい気分にさせたが、もう泣いて手を止めている時間はない。 ようやう着替えを終え、仕切りの外へ出様とした美奈子の上を、優子が掴んだ。 「何よ」 振り返った美奈子に、優子は自分の口に指を当てて見せた。 そして、制服の内側から、さきほどの封筒を取り出した。 「何なのそれ」 美奈子は声をひそめて聞いた。 「さっき、お姉さんが届けてくれたのよ。きっと、元の世界へ帰るための手がかりになるはずよ」 優子は期待を込めて封を切った。 封筒の中には、手紙と、何枚かの地図が入っていた。
『ようやく呪いを解くための資料の翻訳が終わりました。この呪いは、18世紀にベルサイユ宮殿で当時のフランス王子の結婚相手を選ぶための舞踏会に出席した女子高生たちの精神が生み出したものです。
「新藤さん、大橋さん、いつまで着替えているのですか!」 |
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