聖華学園の地下室 |
夏の太陽が地面を焼いていた。 遠くの住宅街が蜃気楼に揺らめいている。 グラウンドで体育の授業を受けている高校生たちの掛け声に混じって辺りに響くセミの声が、暑さをなお一層際立たせている。 原稿用の封筒を抱えた一人の女が、大きく開かれた校門の前に立った。 白のセーラー服に紺のスカートという、どこかの高校生で通る服装ではあったが、その顔は普通の高校生に比べてやや大人びている。 美しい目には、ある種の強い意志が浮かんでいた。 その目が校門の石の塀に掘られた「聖華学園」の文字を確かめ、手に持った封筒を一瞥する。 額を拭ったハンカチをポケットにしまうと、意を決したように歩き始めた。 校舎までの距離を半分ほど歩いた時の事だった。 「ちょっと待ちな。本校に関係のない者は立ち入り禁止だよ」 いつの間に現れたのか、聖華学園高等部の夏の制服に身を包んだ女子生徒たちが数名、彼女の行く手に立ち塞がった。 胸の前で腕を組み、鋭い視線を女の目に向けている。 女は女子生徒たちの顔に一通り目を走らせると、静かに口を開いた。 「関係なら大ありよ。ここにいていけないのは、あなたたちの方じゃないかしら。今は授業中のはずでしょ? あたし、時間がないの。どいてちょうだい」 女の言葉に、先頭の女子生徒が目をつり上げた。 「おい、あんた何様のつもりか知らねえけど、ナメんじゃねぇよ。こら、どこ行くんだよ」 清らかな女子高生に似合わぬ罵声を無視し、女は生徒たちを迂回するように再び歩き始めていた。 「くそうっ!」 女子生徒は痺れを切らし、女に向かって突進した。 握りしめた拳を女の横顔めがけて繰り出す。 女は素早い動作で攻撃をかわし、襲ってきた手首を片手でしっかりと捕まえた。 「あなたは大橋美奈子ちゃんね。妹からは、もっとおとなしい子だって聞いていたけど、いつの間にこんな荒っぽい子になったのかしら」 女は掴んだ生徒の手をねじり、他の生徒たちの方へ放り投げた。 コンクリートの地面に尻餅をついた美奈子は、ねじられた腕をさすりながら立ち上がり、釣り上がった目を再び女に向ける。 「妹とは、新藤優子の事か」 「そうよ。数日前から家に帰ってこなくなったから、学校のどこかにいるんじゃないかと思って探しに来たの」 新藤が言い終わるやいなや、美奈子とその取り巻きの生徒たちが目の色を変え、新藤めがけて一斉に襲いかかった。 繰り出される拳や蹴りを、新藤は素早い身のこなしでかわす。 ――この子たち、やはり何か異様な力に操られているわ。 女子生徒たちの動きには無駄がなく、仲間の動きとも連携を保っている。 まるで格闘技の道場で修行を積んだかのようだった。 聖華学園高等部にも空手部や柔道部などの部活動はある。 しかし、新藤が優子から聞いていた話では、今自分を攻撃している女子生徒たちは、いずれもそのような部活動には所属していないはずだった。 校門の方から黒いコンバットスーツに身を固めた二人のサングラスの女が走ってきた。 新藤と生徒たちとの間に割って入り、生徒たちに向かって身構える。 「先輩、ここは私たちに任せて、早く!」 新藤はサングラスの女の言葉に従い、その場を走り去った。 追いかけようとした生徒たちの前に二人のサングラスの女が立ち塞がる。 一瞬の沈黙の後、二人の目の前の生徒が拳や蹴りを繰り出す。 サングラスの女がそれをかわす。 かわされた生徒たちはあきらめずに再び攻撃を仕掛ける。 その間に後ろにいた他の生徒たちが、走り去った新藤を追う。 その生徒たちの後を追って走り出そうとするサングラスの二人。 それを阻止しようと、そばにいた女子生徒が攻撃を繰り返す。 新藤は昇降口で靴を脱ぎ捨て、廊下を走った。 静まり返った廊下に、各教室で授業を行う教師たちの声に混じって、廊下を走る新藤の足音が響く。 後ろからは、生徒たちのいくつもの足音が追ってくる。 トイレの前で、新藤は立ち止まった。 「ここなら……鏡があるはずね」 新藤は、女子トイレのドアを見つめながら呟いた。 追手の足音が追いつき、新藤は再び女子生徒たちに囲まれていた。 サングラスの二人はまだ外で交戦しているのか、姿がなかった。 攻撃のチャンスを伺う生徒たちの視線は、新藤が小脇に抱える封筒に集まっている。 ――やはり、彼女たちはこの封筒を奪おうとしている。という事は、この封筒の中身が何であるかを知っているの? 新藤は直立不動のまま生徒たちを一通り見回すと、静かに口を開いた。 「あなたたちは女の子でしょ? 暴力はいけないわ。勝負をするのなら、うら若き気品のある乙女にふさわしい、別のやり方があるんじゃなくて?」 「確かにそのとおりね」 遠くの方から聞こえてきた声に、その場にいた全員が振り向く。 そこには灰色のブレザーを来た女教師が立っていた。 新藤優子の担任、斎藤恵子先生だった。 先生の後ろから、トレイを持った一人の女子生徒が現れた。 美奈子だった。 トレイの上には二つのティーカップが乗せられていた。 新藤を囲んでいた生徒たちが、美奈子のために道を開けた。 美奈子は生徒たちの間を静かに進み、新藤にトレイを差し出した。 新藤が片方のカップを取り上げると、美奈子は斎藤先生の元へと引き返し、斎藤先生が美奈子の差し出したトレイから残りのカップを取った。 新藤と斎藤先生は、鋭い目付きで互いの目を見つめながら、ティーカップを口へと運び、一気に飲み干した。 空になった二人のティーカップを美奈子が受け取りトレイに戻す。 「あなたが女子生徒たちの模範であるべき教師としてふさわしいかどうか、この勝負ではっきりするというわけね……うっ!」 新藤は言葉の途中で小さな呻き声を上げた。 切なそうに眉毛を寄せ、足を小刻みに震わせ、スカートの内側で太腿が擦り合わされているのが見て取れる。 「そうよ。私が女子生徒の模範としてふさわしいという事がはっきりするわ。あなたの方こそ、んんっ……あっ……気品ある乙女としての勝負を……ううっ……挑んでいる割には……んくぅ……そわそわと落ち着きが……んううっ……ないようね……」 余裕の笑顔を必死に作りながら言い返す斎藤先生もまた、美しい顔を時々歪ませ、小刻みに震える足で足踏みを繰り返しながらスカートの中で太腿を必死に擦り合わせている。 さきほどのティーカップの紅茶のすさまじい効き目により、体中の水分が二人のか弱い女の子の部分に集まり、切なく耐え難い意地悪な悪戯を執拗に繰り返している。 女の子のか弱い出口をこじ開けようとする大いなる自然の力に必死に抵抗しようと、二人はこじ開けられようとしている恥かしい部分に渾身の力を込め、その部分が息づく太腿の付け根をきつく閉じ合わせようと太腿を必死に擦り合わせながらせわしなく足踏みを繰り返しているのだ。 「あううっ、んああっ!」 「ああっ、くふうっ!」 二人の口から切羽詰まった悲鳴が漏れ、顔が大きく歪む。 そんな二人の女性の恥かしい仕種を楽しんでいるかのように、水の悪戯はさらに強く激しくなっていく。 「はうっ、ああっ!」 「だめぇ、ああっ!」 新藤と斎藤先生は同時に甲高い悲鳴を上げた。 片手をスカートの上から恥かしい部分にしっかりとあてがってしまう。 水の悪戯に耐え切れず今にも泣き崩れてしまいそうな女の子の部分を少しでも応援するための仕種だった。 か弱い女の子の部分を責め続ける水は、女性にとってたまらなく恥かしいその仕種を続けさせてもまだ空き足らず、恥かしい部分を片手で押さえたまま必死に身を捩るという、さらに恥かしい仕種を強要するのだった。 ついに新藤は、封筒を小脇に抱えている方の手をも、激しく泣き叫んでいる可愛そうな場所へと持っていってしまっていた。 同時に斎藤先生もまた、もう片方の手をスカートを押さえる手に重ねてしまう。 水の意地悪な力は二人の女性に女の子の最も恥かしい部分をスカートの上から懸命に押さえながら激しく身を捩り恥かしい腰振り運動を繰り返すというこの上なく恥かしい仕種を存分に続けさせながら、恥かしい部分をさらに激しく責め嬲るという特権をほしいままにしていた。 ――ああっ、もうだめ、もれちゃう! 新藤が心の中で叫び、女の子の部分の辛さに顔を歪めたとき、辺りが急に静かになった。 今まで教室から聞こえていた声が、全く聞こえなくなっている。 そして新藤の周りの生徒たちは、まるでビデオの映像を停止させたかのように凍り付いてしまっていた。 ――始まったわ。これがあの現象なのね。 新藤は激しい水の悪戯に耐え続ける切ない部分と、そこをスカートの上から押さえる恥かしい手にさらに力を込めながら、女子トイレのドアへと慎重に歩きはじめた。 「ちょっと……んあっ、ま……待ちなさいよ!」 後ろの方から聞こえてきた辛そうな声に振り返ると、斎藤先生が、やはりスカートの上から大切な部分を懸命に押さえ、前かがみになりながら新藤の後を追ってきていた。 新藤は急いでドアを開けて中に入り、片手で女の子の部分をしっかりと押さえながら、封筒を持った方の手で洗面台の上になんとかよじ登り、鏡に手を触れた。 手は難なく鏡の中に入っていく。 その時、後ろから追いついた斎藤先生に、肩を捕まれた。 「そこには入ってはいけないわ!」 新藤は片足で斎藤先生の下腹部を強く蹴った。 「ううっ、ああああぁぁ!」 甲高い悲鳴と共に斎藤先生の顔が大きく歪み、そのままビデオを停止したように凍り付いた。 新藤は鏡を通り抜けると、洗面台から慎重に降り、トイレのドアを開けて廊下へ出た。 「優子、待っているのよ。今助けに行くわ……」 ますます激しくなる水の悪戯に懸命に耐えながら、新藤は階段のある場所を目指して歩き始めた。 |
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