美奈子が高橋先生からようやく開放された時には、もう3時間目が始まっていた。
あれからまた数回ほど猛烈な欲求を我慢させられ、その恥ずかしい欲求に屈服する瞬間をビデオテープに収められてしまっていた。
予備のパンティとスカート、靴下、上履きを身につけた美奈子は、教室に戻りながら、鏡に写った優子の事を考えていた。
教室の鏡に写っていた優子も、保健室の鏡の優子も、とても辛く恥ずかしそうな様子だった。
その時の美奈子と同じように、女の子の恥ずかしい欲求を必死にこらえていたに違いない。
しかし、教室の鏡で優子を見た時は、本物の優子は席に座っていたし、さきほどの保健室には優子はいなかった。
そしてどちらの時も、女の子の部分への執拗な悪戯に美奈子がついに屈服してしまった直後、鏡の中からは優子の姿は消え、自分の姿が写っていた。
昨日、山田浩章の家で見た恥ずかしい悪夢。
その記憶は、夢にしてはあまりにもはっきりとしすぎていた。
彼の家の前での悪友たちの脅迫、授業中での恥ずかしい失敗、保健室での恥ずかしいお仕置き。
それらは全て、その悪夢に登場した場面であった。
そして、さきほどの鏡に映った優子。
これらは明らかに、常識を逸した現象なのだ。
自分と優子、あるいはこの学園全体に、何か不思議な力が働いているのだ。
その力の正体をつきとめなければ、再び美奈子の身に恥ずかしい災難が降りかかる事は明らかだった。
その謎を解く鍵を握る者が近くにいるとすれば、おそらく優子だ。
とにかく、彼女に話を聞かなければ、何も分からないのだ。
――そうよ、美奈子。勇気を出すのよ。
美奈子は自分に強く言い聞かせた。
「なあに、美奈子ちゃん。もしかして、またお水が飲みたくなったのかしら?」
昼休み、美奈子が優子に近づくと、優子は無邪気な口調で恐ろしい言葉を口にした。
「い、いえ、結構です」
慌てて否定する美奈子。
「遠慮しなくてもいいのよ。さっき、教室であんなにいっぱい漏らしちゃったんだから、身体から水分が抜けて、喉が乾いたでしょ?」
いつの間にか、優子のとりまきの一人である荒木香織が水の入ったペットボトルを抱えて優子の脇に立っていた。
すぐ近くに桜井エリカ、佐藤由佳もいる。
二人とも不敵な笑みを浮かべながら胸の前で腕を組み、美奈子をじっと見ている。
「あ、あたし、お水が飲みたいわけじゃないの。喉なら乾いてないわ」
またあの大量の水を飲まされて激しく恥かしい欲求に耐え続ける事になってはたまらない。
「そう。でも、水分不足は美容に良くないわ。授業中に喉が乾いても大丈夫なように、今のうちに水分を補給しとかなきゃね」
言いながら、美奈子にペットボトルを差し出す香織。
しかし、美奈子には彼女に取り合っている暇はない。
「あの、私はただ優子に聞きたい事が……」
「だったら、これを飲むのが先よ」
香織の口調は美奈子に有無を言わせなかった。
「……分かったわ」
美奈子はついに諦めた。
彼女たちは自分たちの目的を達成するまで、美奈子の話は聞かないつもりなのだ。
美奈子は香織からペットボトルを受け取り、飲みはじめた。
朝と同じように、時々口を放し、息を整えながら、1.5リットルの水を喉に流し込んでいく。
長い時間をかけて、ようやく飲み干す事ができた。
「さあ、飲んだわよ。これでいいでしょ。優子、ちょっと話があるんだけど……」
優子がそこまで言った時、鐘の音が聞こえた。
「ざーんねん、昼休み、終わっちゃったわ。早く席に着きましょ」
優子はそう言い残すと、さっさと自分の席の方へ歩いていってしまう。
「ちょっと、待ってよ。話がまだ……」
慌てて優子を追いかけようとした美奈子の前に、香織、エリカ、由佳の3人が立ちふさがった。
「さあ、あなたも早く席に着くのよ」
3人は美奈子の肩をつかみ、無理矢理席に着かせた。
間もなく廊下の方から、5時間目の担当の先生の足音が聞こえてきた。
「……ちょうどこの頃、ベルサイユ宮殿に集まった女子高生が一夜にして行方不明になってしまったという事件があったのですが、それ以来彼女たちを見た者はなく、一部の学者の間では心霊現象ではないかという説もありまして……」
5時間目は世界史だった。
世界史の先生はかなり研究熱心らしく、教科書に書いてない事件などとも合わせて興味深く説明してくれる。
しかし、その話をまともに聞いている余裕など、美奈子にはなかった。
授業開始から30分が経過したあたりから、美奈子の恥ずかしい扉を守る女の子は、再び猛烈な圧力に耐え続けていた。
授業終了まであと20分。
その間、女の子の部分は次第に強まっていくその恥ずかしい力に耐え続けなければならない。
いや、たとえその時間だけ耐え続けたとしても、女の子の部分がその恥ずかしい力から開放されるかどうかは分からない。
しかし、とにかく次の休み時間までは絶対に我慢しなければならない。
そして、鐘が鳴ったら、一目散に教室の扉を目指して机の間を走り、ついで廊下を走って誰よりも早くトイレにたどり着かなければならない。
恥ずかしい水で下半身をぐっしょりと濡らしてしまうなどという、思春期の少女にとって最高に恥ずかしい失態を、教室で一日のうちに2度も演じるなどという事態は何としても避けなければならない。
美奈子は太腿を上下にもじもじと擦りあわせながら、女の子を苦しめる意地悪な自然の力に必死に耐え続けた。
授業終了まであと15分。
美奈子は女の子の部分の激しい悲鳴についに耐え切れず、ついにその部分にスカートの上から左手をしっかりとあてがった。
女の子の部分が一瞬楽になったが、安心した隙を狙って恥ずかしい水が突進しようとする。
慌てて再び渾身の力を込める美奈子。
もう目をまともに開けていられない。
可愛らしい顔に大粒の汗が伝う。
もじもじと上下に擦りあわせる足の動きが少しずつ激しくなっていく。
授業終了まであと10分。
美奈子の身体は激しく擦りあわせている足と共に、大きく身悶えていた。
身を揉むような美奈子の身体の動きに、近くの席の生徒達がちらちらと視線を向ける。
しかし、激しい欲求に必死に耐えている美奈子には、そんな事を気にしている余裕はなかった。
なんとしてでも、この極限状態を耐え抜かなければならないのだ。
その極限をさらに加速するかのように、恥ずかしい欲求はさらに強まっていく。
極限を超えたさらに先の極限に、美奈子は身をよじりながら必死に耐え続けた。
授業終了まであと5分。
その5分間、美奈子の女の子の部分を責め続ける自然の力は、その特権を十分に利用し、美奈子の女の子の部分への意地悪な悪戯を存分に楽しんでいた。
「起立、礼!」
ようやく5時間目の授業が終わった。
足踏みをしながら太腿の付け根をもじもじと擦りあわせながら急いで席を離れ、教室の出口へと向かう。
しかし、机の列を抜けて教室の後ろのロッカーの前に来た所で優子たちが美奈子の行く手に立ちふさがった。
「美奈子ちゃん、これからどこに行くのかしら?」
優子が意地悪な口調で質問する。
美奈子としても優子に聞きたい事があったが、今はそれどころではない。
「と、トイレよ。お願いだからトイレに行かせて!」
美奈子は優子たちを強引によけて進もうとしたが、優子たちはそれを許さなかった。
「あら、あなたみたいな乙女がトイレに行くだなんて、そんなはしたない事は許されないわよ」
優子や香織は美奈子の肩を掴み、あくまでも先に進ませない。
「お願いだから、トイレに行かせてよ」
「だめよ。もしもトイレに行くというのなら、またペットボトルのお水を飲んでからにしてね」
大量の水を飲んでからでは、トイレに行く時間などなくなってしまう。
そして6時間目はさらに激しい女の子の欲求に耐え続けなければならなくなるのだ。
「そ、そんな、だめよ。もう漏れそうなの。お願い、トイレに行かせてよ」
美奈子がさらに力をこめて、肩にかかった手を振りほどこうとした時、すぐそばのロッカーの上に立てかけてある鏡が目に入った。
「えっ?」
美奈子はその鏡を見て不思議な事に気が付いた。
鏡の向こう側とこちら側が違っているのだ。
違いは美奈子と優子に現れていた。
鏡の向こうの美奈子は必死に女の子の恥かしい欲求を我慢しつつ優子や香織に邪魔されながらもトイレに行こうとしているのではなく、逆にトイレに行こうとしている者の肩を掴み、邪魔する方に回っていた。
そして、恥かしい欲求を我慢しつつトイレに行こうとしている者は、鏡のこちら側では美奈子を邪魔している優子だったのだ。
二人の立場が向こうとこちらで完全に入れ替わっている。
その時、向こうの優子もこちらの様子に気づいた。
「美奈子……聞こえる?」
鏡の向こうの優子が美奈子に声をかけてきた。
「え? え、ええ、聞こえるわ」
答えながら、美奈子は周りを見回して、さらに異様な現象が起こっている事に気づいた。
美奈子の周りの人の動きが、まるで凍り付いたように止まっているのだ。
いや、人だけではない。
遠くの方である生徒が他の生徒に向かって投げたと思われる消しゴムも、空中に浮かんだまま静止している。
美奈子の周りの空間で、時間が完全に止まっているのだ。
あまりの驚きに美奈子の女の子の部分から気がそれた。
その瞬間を、美奈子の中の恥ずかしい水は見逃さなかった。
すかさずかよわい女の子に突進する。
「あっ、んあっ」
それを慌てて食い止めようと、再び女の子の部分に渾身の力を込める美奈子。
間一髪、美奈子は女の子の部分からのからの恥ずかしい噴出をまぬがれた。
「美奈子……大丈夫?」
鏡の向こうの優子も、よほど激しい欲求を我慢しているのか、もじもじと足踏みをしながら、スカートの前を押さえている。
「だ、大丈夫」
そう答えてから、美奈子はハッとした。
――そうだ。今ならトイレに行けるかも。
美奈子は、自分の肩を掴んでいる優子や香織の手に手を掛けた。
彼女たちの手は美奈子の肩から簡単に外れた。
鏡の向こうの優子も同じようにして自分を邪魔していた者たちの手から逃れ、鏡に近づいてきていた。
美奈子が教室の出口に向かって歩き出した時、鏡の中の優子が叫んだ。
「美奈子、待って……トイレに行っちゃだめよ」
その言葉を聞いて、美奈子は思った。
――やっぱり鏡の中の優子も、私をトイレに行かせずにいじめようとしてるんだ。
鏡の向こうの優子はこちらの優子とは違い、女の子の恥かしい欲求を我慢する辛さを分かってくれていると思っていたが、やっぱり意地悪な性格は変わらないらしい。
美奈子には、優子に取り合っている暇はなかった。
美奈子の方にも鏡の向こうの優子に聞きたい事がいろいろあったが、今はもっと大事な事がある。
一刻も早くトイレに行かなければ、今にも漏れそうなのだ。
美奈子は女の子の部分に渾身の力を込め、太腿を必死に擦りあわせつつ、教室を出てトイレへと向かう。
廊下の端の方にあるトイレにやっとの思いでたどり着き、入口のドアを開けた。
しかし、その時美奈子はさらに異様な現場を目にする事となった。
トイレの入口付近にある洗面台の上の鏡から、優子の身体がちょうど這い出して来るところだったのだ。
四つんばいの状態で、上半身のほとんどが鏡のこちらにあり、洗面台に両手をついている。
そして、腰から下は鏡の向こう側にあった。
美奈子は一瞬びっくりして立ち止まったが、再び邪魔をされる事を恐れ、足を早めた。
しかし、優子の方が素早かった。
鏡を完全に通り抜けて洗面台から降り、通せんぼをするかのように、美奈子の前に立った。
「お願い美奈子……んぁっ……話を聞いてちょうだい」
優子はオシッコを必死に我慢しながら、何かを必死に美奈子に伝えようとしているようだ。
「話を聞くのはいいけど……んんっ……その前に私……大事な用事があるの」
美奈子は必死に個室の方に行こうとして、優子をよけようとする。
しかし、優子は美奈子を決して個室の方へ近づけなかった。
「お願い美奈子。あなたが今オシッコを我慢するのをやめてしまうと……ああっ……また話をする事ができなくなってしまうわ。私も今オシッコがしたくてどうしようもないの。だけど……美奈子と話すために今必死に我慢してるの。もしも美奈子か私のどちらかがオシッコをしてしまったら……んぁっ……私はまた元の世界にもどり……んくぅっ……鏡も元どおりになってしまうわ。私たちはお互いがオシッコが今にも漏れそうな極限状態にあるときだけ……鏡をとおして認識し合ったり、話したり、鏡の向こうの世界へ行ったりすることができるの」
「そんな……それじゃ、もし漏らしちゃったら?」
「その時も……私たちと鏡は元どおりになってしまうわ。次にオシッコを我慢して漏れそうになるまで……鏡を通して顔を見る事はないわ」
「それじゃ聞くけど、いったいどうして鏡の向こうの優子とこっちの優子と、優子が2人もいるわけ? どうしてこっちの優子は私に水を飲ませたりトイレに行くのを邪魔したりしてて、鏡の向こうでは優子がトイレに行くのを邪魔されてるの? それに、どうして毎日オシッコを我慢しなければならないの?」
美奈子は太腿をきつく閉じ合わせ、女の子の部分をスカートの上から思い切り押さえながら、優子に聞きたかった事を一気にまくしたてた。
オシッコを我慢している間しか話ができないのであれば、大急ぎで話をしなければならない。
優子は、美奈子と同じように足をもじもじと擦りあわせ、スカートの上から恥ずかしい所をしっかりと押さえながら答えた。
「私にも詳しい事は分からないわ。でも、この学校にはある種の呪いがかけられているのよ。それで、女子生徒のうちの一人が毎日オシッコを我慢しなければならなくなるの。あなたや私だけではなく、他の生徒も。この世界ではあなたが我慢しているけれど、世界はこの世界だけではなくて、パラレルワールドの別な世界では私が、そして他の世界では他の生徒がオシッコを我慢しなければならなくなっているのよ。このままだと、あなたや私はこの学校を卒業するまでの間、ずっとオシッコを我慢し続ける事になるわ。いえ、もしも女の子がおもらしを繰り返していたら、卒業もできないかもしれないわよ」
「それじゃ、このまま永久にオシッコを我慢しつづけなければならないわけ?」
「そうよ。それから逃れる方法はただ一つ。この学園にかけられた呪いを解く事よ」
「呪いを解くって、その方法、あなた知ってるの?」
「それを今から探しに行くのよ。さ、一緒に来て」
優子は左手を恥ずかしい所から放し、その手で美奈子の右腕を引きながら、廊下へ出ようとする。
「ちょっと、ひっぱらないでよ。漏れちゃう」
右手が大事な所から外れてしまい、慌てて女の子の部分と太腿と左手に改めて渾身の力をこめる美奈子。
「あ、ごめん……でも……急いで。二人で呪いを解く手がかりを……さがすのよ」
優子は片手で自分の股間をしっかりと押さえ、前かがみになりながら、美奈子の手を引き廊下に出た。
美奈子の方も、残りの片手を股間にしっかりとあてがい、前かがみで廊下を進む。
やがて二人は階段にたどり着くと、さらに激しくなっていく欲求に身をよじりながらも手すりによりかかりつつ、ゆっくりと階段を降りていった。
|