ミニメロン作品

聖華学園の悪夢

2
その日の朝8時。
美奈子は他の生徒よりも30分も早く登校しなければならなかった。
今日から7月。
美奈子が聖華学園高校に転入してきてから、早くも1ヶ月が過ぎようとしていた。
教室に現れたのは、クラス委員長の新藤優子であった。
優子のとりまきである荒木香織、桜井エリカ、佐藤由佳も一緒だ。
「美奈子、よく来たわね。今日からさっそく、あたしたちの言うことをきいてもらうわ」
昨日までの美奈子であれば、何か言い返す所であるが、今日の美奈子はだまっている事以外なにもできなかった。
昨日、美奈子は学校帰りに同じ聖華学園高校に通う山田浩章の家に遊びに行ったのだ。
聖華学園はもともとお嬢様学校で、数年前までは女子校だった。
現在の聖華学園には男子生徒もいるが、男女共学ではなく並学だった。
つまり、男子ばかりのクラスと女子ばかりのクラスに分かれているのだ。
そして、男女交際も好ましく思われてはいなかった。
従って、美奈子が男子と交際しており、しかも学校帰りに家にまで遊びに行ったという事が学校に知れれば、美奈子は教師達からは要注意人物として絶えず監視され、友達からは白い目で見られる事になる。
今日の美奈子は、優子に逆らう事はできないのだ。
「それじゃ、このお水を飲んでもらおうかしら」
香織は、手に持っていたペットボトルを差し出した。
容量表示には1.5リットルと書かれており、中には水が満杯に入っている。
「他の生徒が入ってくるまでに飲めなかったら、昨日の事ばらすわよ」
美奈子は、ばらされるのが恐くて、急いで飲んだ。
水の入ったペットボトルは、両手で持ってもずっしりと重い。
これだけの水を一気に飲んだ事など、今まで経験した事がなかった。
あまりの量に途中で咳込みながらも、なんとか飲み干す事ができた。
「よく飲めたわね。感心だわ」
「どう?胸が苦しいかしら」
「く、苦しいわ」
エリカと由佳の問いかけに、美奈子は息を詰まらせながら答えた。
「ふふっ、その程度なら、すぐに楽になるわ。でも、その後が大変よ。あなたには今日一日、女の子の辛さをたっぷりと味わってもらうわ」
優子は胸を押さえる美奈子の顔を覗き込み、微笑んだ。

やっと1時間目が終わった。
教室にはクーラーが十分に効いていたが、美奈子の体からはまるで短距離を何度も走ったかのように汗が激しく吹き出していた。
美奈子は一目散に教室の出入り口へ向かった。
と言っても、今にも噴出しそうなオシッコのせいで、思うように歩く事すらできない。
もう少しで廊下に出られるという所で、だれかに手を掴まれた。
優子だった。
すぐ側に香織もいる。
「美奈子ちゃん、どこへ行くのかしら」
優子は微笑をうかべながら聞いた。
「ちょ、ちょっとトイレへ」
美奈子は小さな声で、しかしはっきりと答えた。
「聖華学園の乙女がトイレなんていう言葉を人前で使うもんじゃないわ。罰として、この休み時間はずっとこの教室にいてもらうわ」
香織も悪戯っぽい笑みをうかべている。
しかし、美奈子には二人につきあっている余裕はない。
「お願い、あたしもう漏れそうなの。行かせて、ねえお願い、お願いします」
「それじゃ、これを飲んでからにしてもらおうかしら」
そう言ったのは、いつの間にか美奈子の後ろに立っていたエリカだった。
今朝と同じペットボトルを両手で持ち、美奈子に差し出している。
「い、いえ、遠慮しとくわ」
ペットボトルは今朝ほど満杯ではないが、少なくとも半分は入っている。
ただでさえオシッコがしたくてたまらないというのに、さらにそんな量の水を体に入れてしまったら、トイレまで間に合わないかもしれない。
それに、第一休み時間中に飲み終わるかどうかすら疑問だ。
「そう。それじゃ、この休み時間はずっとこの教室から出ない事ね」
優子がそう言うと、香織が美奈子のもう片方の手をつかんだ。
「は、放してよ」
「それじゃ、飲むわね?」
「わ、わかったわ。飲めばいいんでしょ?」
美奈子はエリカからペットボトルを受け取ると、一気に飲みはじめた。
しかし、美奈子の女の子の悲鳴に体が勝手に反応し、水を飲むことに全てを集中する事ができない。
途中で休みながらやっとボトルに入っていた量の半分くらいまで飲みおわった所で、無情にも授業開始のチャイムが鳴り響いた。
「残念、もう2時間目が始まっちゃったわ。早く席につかなきゃね、美奈子」
明るい口調で言う優子の言葉もまた無情だった。
そして、美奈子の尿意は容赦なくその激しさを増していった。


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