(た)作品

密室の宴

第3章 カメラの前の小便小娘
 「あ…、あ…」

 悲鳴のようなかすれた声とともに、みゆきの体が徐々に震え始めた。ついに、みゆきの膀胱が、それ以上の女性尿を溜め込むことができなくなったのだ。そうなれば、このあとで分泌される女子大生の尿は、全て出口に向かって歩を進めざるを得なくなる。

 ここから先は、みゆきにとって、さながら、地獄絵図のようだった。

 ドクッ、ドクッ、という心臓の鼓動のように、少しずつ、自分のオシッコが、出口に向かって押し出されてゆく。それは、尿道の中を掻きむしられるような、それでいて、どこか物悲しいような感触だった。

 「いや…、でちゃう…、でちゃう…、ほんとにでちゃうよ…」

 自分のからだの中から、熱い液体が、勝手に私の体の外に放出されようとしている…。それは、自分の意思で止めようとしても、おそらく、もう押しとどめることはできない…。なのに、その瞬間は、もうすぐそこまで来ている…。でも、私は縛られていてどうすることもできない。どうしよう…ほんとにどうしよう…。

 みゆきは、自分の運命が、ただ一つの方向にしか向いていないことを知りつつ、そこから逃れる方法が見つからずに、ただ、みゆきは椅子の上でうろたえるしかないのだった。そんな状況でも、女子大生の残酷な生理現象は、一切休むことをせず、「最後の一滴」を用意するために、せっせと女のからだの中で分泌を続けるのだった。

 女子大生の体が、ワナワナと勝手に震え出す。それは、もう、みゆきという女の肉体の中には、「数滴分」の空間しか残されていないことを示す合図に他ならなかった。そして、そんな状態でも、何ら変わることなく、一滴、また一滴と、女性尿がみゆきの膀胱へと送り込まれてゆく。そのたびに、美しい女子大生の肉体は、「あうっ!」という悲痛な声とともに、ビクッ、ビクッと震えるのだった。そんな状態の中で、みゆきは、頭をかかえて狼狽した。それはまさしく、失禁へのカウントダウンと呼ぶにふさわしい光景だった。

 女子大生の心の中は、もはや錯乱状態だった。自分のお尻の下にセットされた2台のカメラ、このカメラに向かって、自分は今からオシッコをするのだ、という運命を、みゆきはどうしても受け入れることができなかった。目の前のスクリーンにまで映された状態で、今から、自分はカメラに向かってオシッコをしてしまうのだという現実を目の当たりにして、それでも、みゆきは体の震えを止めることさえできず、ただ、首を大きく横に振って叫ぶのだった。

 「いや!、いやだ!、い、いやあああっ!」

 しかし、2台のカメラは、やはり、みゆきのお尻の下に存在し続けた。そして、目の前のスクリーンには、ワナワナと震える女子大生の白い太腿と、その真ん中に、今から放水を始めようとしている女子大生の陰部が、はっきりと映し出されているのだった。もはや、最後の恥辱の瞬間を迎えるためのお膳立てとしては、これ以上のものはないと言っても過言ではなかった。

 みゆきは、顔をひきつらせ、体を震わせたまま、一瞬のうちに、いろんなことが頭の中を駆け巡っていた。もう今にもオシッコが出そう…という焦りと、もうすぐ最後の一滴が加えられてしまう…という一瞬の焦慮感。しかし、今のみゆきが最も感じているのは、自分が今しも尿意との戦いに敗れ、全身全霊を賭して閉じていたアソコの力もついに及ばず、女の恥ずかしい液体が、管を通って自分の体の外に出てゆくのを許してしまうときの、あの敗北感ではないだろうか。

 みゆきの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。でも、残酷な運命は、彼女を決して助けることはなかった。


 「おねがい…、みないで…、いやっ…、おねがい…、撮らないで…、お…おねがい…、い、いや…、あ…、い…いやあああっ、あっ…、いやっ…、ああっ…、あ…、あああああっ!」

 シャ…、シャ…シャアアアアアアッ…!

 スクリーンに映し出された全裸の女子大生の陰部から、生温かくて黄色い液体が、ガラスに向かって勢いよくほとばしった。みゆきは、思わずスクリーンから目をそらした。

 ジョ、ジョジョジョーーーーッ!

 ずっと縛られ続けたあげくに、尿意をこらえきれなくなり、カメラを前にして、ついに全裸の女子大生がオシッコをもらした。スクリーンには、ガラスに向かって勢いよくオシッコをほとばしらせている女子大生の、あられもない下半身の様子が、アップで大きく映っていた。

 みゆきは、自分の足元を濁流が流れる中で、その流れをくい止めようと、半狂乱になりながら下腹部に力をこめた。だが、自分が押しとどめられなかった流れを、再び堰き止められるはずもなく、両足のすき間から恥ずかしい液体が溢れ出すのを、黙って見ていることしかできなかった。それから再び、みゆきはこの椅子から逃れようともがいたが、その最中も、女の秘所から黄色いオシッコを垂れ流していた上に、一旦腰を上げた椅子の上に、再びへたり込んだため、椅子の一面に広がっていた女子大生の尿を、バシャッ、と大きな音をたてて周囲に飛び散らせてしまった。そして、その様子までもが、目の前にいる女のカメラに収められていることに、みゆきはすぐさま気づくのだった。

 みゆきは、はしたない姿でオシッコをちびりながら、やがて、声をあげて泣き始めた。みゆきは、人生でこんなひどい仕打ちを受けたことは初めてだった。真っ裸で椅子に縛られたまま、カメラの前でオシッコを失禁している女子大生の姿というのは、それほどに惨めなものなのだ。
 
 「ごめん…、ゆるして…、ごめん…、ほんとにごめん…」

 美しい女性の陰部からは、まだ、温かい女性のオシッコがほとばしり続けていた。そして、みゆきは、みっともない格好で下腹部からオシッコをしたたらせながら、何度も、何度も、女に向かって謝り続けた。それは、このままいつまでも、いつまでも謝り続けていそうな、そんな姿だった。

 「じゃあ、そろそろ解いてやろうか…」

 涙を流し、自分に対する許しを乞いながら、カメラの前で黄色いオシッコを垂れ流す女子大生の姿…、女は少しだけ後悔の念が芽生えたような気がしたが、すぐに自分でそれを打ち消した。ここまでやったんだから、という気がしていた。

 みゆきの失禁が終わったあと、部屋の真ん中は、女子大生が撒き散らした女のオシッコで、大きな湖のようになっていた。そして、その湖の真ん中で、みゆきは、オイオイと嗚咽を洩らしながら、全裸で椅子に縛られたまま、悲しそうに声を上げて泣き続けるのだった。


 …その日の直後、みゆきは、いたたまれなくなって、大学を退学した。女は、みゆきの秘蔵の映像を、学校でばら撒いたりすることはなかった。もう必要のないことだから、というのもあるが、やっぱり、自分の悪戯が他人の人生を変えてしまったことに、少なからず反省の念があったことは否めないであろう。(完)


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