雪の降る夜の山道を、一台の黒い車が走っていた。車には黒いドレスを着た女が一人で乗っていた。
「まったく、予定が台無しだわ」
運転を自動モードに任せた彼女は、背もたれに身を預けながら、不機嫌そうに呟いた。
彼女が重役を務める家電メーカーの社長から、ミダラーナ帝国にあるサイバーエクスタシー社がケッペキーナ帝国内で極秘裏に行う新製品発表会を視察するようにとの指示を、今日突然受けたのだ。その為、友達とのクリスマスパーティーの予定をキャンセルし、この山奥まで車を走らせる事になったのだ。
「ミダラーナには、クリスマスが理解できないのかしら」
その可能性は大いにありうると、彼女は思った。
何しろ、この10年間、ミダラーナ帝国の真の姿を見た者は、ケッペキーナ帝国の国民のみならず、他の国にもいないはずなのだ。それがミダラーナ帝国の持つ特異な文化的価値観に起因するというのであるから、そのような国にクリスマスが理解できなくてもおかしくはない。それは多分、国際条約で禁止されているミダラーナ帝国との接触を自ら行わずに部下に指示する社長の態度と同じ程度に自然な事なのだ。
ほどなくして、社長から指示された洋館に到着した。敷地内の駐車場には既に車が5台停まっている。他の招待客たちは、もう到着しているようだ。
彼女は車を降りると建物に入り、吹き抜けの階段を上がって、会場である3階の大広間に向かった。
その頃、山脈の上空を一台の大型ヘリが飛んでいた。
翼と2つのプロペラを持つその大型ヘリの貨物室に、シルキー、シルヴィア、セシルの三人が立っていた。彼女たちの全身は、手と頭を除いて赤褐色のコンバットスーツに包まれている。レオタードのように肌に密着し、身体の線を露に見せつける彼女たちのスーツは、防弾性能に優れた特殊素材でできている。
シルヴィアはシルキーとセシルの顔を交互に見ながら厳しい口調で口を開いた。
「現場到着前に、今回のミッションの内容をもう一度確認しておく。今から2時間前、わがケッペキーナ帝国の領空内にミダラーナ帝国からと思われる未確認飛行物体が侵入。レーダー網による追跡の結果、その未確認飛行物体はこの山奥に着陸したと推測される。その付近にはかつてミダラーナの玩具メーカー・サイバーエクスタシー社が所有する高級ラブホテルとして建てられ今は閉鎖されている建物がある。監視カメラの映像から、サイバーエクスタシー社の諜報員ミカ・サイトウをその建物内部に確認。わが国の主要な家電メーカー及び量販店の幹部らもその建物に集結している模様。我々の今回のミッションは、密入国したミカ・サイトウの身柄の確保と、彼女が所持していると推測される製品サンプルの押収だ」
「「了解」」
シルキーとセシルが声を揃えて返答する。
彼女たちは貨物から取り出したジェットパックを装着し、数分後の出動に備えた。
洋館の大広間では、白いワンピースとピンクのコルセットを身に着けたミカ・サイトウが、そこに集められていた6人の女たちの前で自分の胸に手を当て、まるで自分の生い立ちを回想するかのような口ぶりで世界の歴史について語っていた。
「我々人類は50年前、宗教戦争に始まった世界大戦により、その多くを失いました。さらに、戦争終結のために使われたY染色体にのみ作用するウィルス兵器は、地上の男たちをことごとく死に至らしめました。その苦い経験にもかかわらず、人類は宗教的な思想の些細な違いから、再び戦争への道を歩み始めようとしています。戦いを好む野蛮な生き物であった男たちが絶滅した今もなお人々の間で争いが絶えないのはなぜでしょうか」
ミカは窓際に歩み寄り、外の景色を眺めながら先を続けた。
「それは、人類が今でも、人間の生きる喜びとは戦いに勝つ事であるという、男たちの価値観にすがって生きているからなのです。そして多くの国の女たちは、女だけが体験する事ができる女としての大いなる悦びを自ら追い求めてはならないという、男が女を支配するために考え出した宗教的思想によって、人としての真の喜びがいかなるものかを悟る事を妨げられているのです。わが社の製品が世界に広まり、それによって全人類の女の悦びが艶やかに開花するならば、人々はその無限の悦びこそが現代における真の生きる喜びである事を悟り、再び互いに争う事はなくなるでしょう」
窓の外は一面の銀世界。森に囲まれた灰色の闇の中に降りしきる雪は次第に量を増していく。建物の近くに人影は見当たらない。これなら広間の女たちが甲高い悲鳴を上げても問題はなさそうだ。
「この件に関して、我々サイバーエクスタシーに御賛同頂ける方は、どうか拍手でお答え下さい」
ミカは窓の外を眺めながら待ったが、拍手が聞こえてくる事はなかった。
それは彼女の予想したとおりの事であった。
「ふふっ、できるわけないか」
口元に小さな笑みを浮かべたミカは、その顔を部屋の中に向けた。そこには、ミカが自社から持参した新製品のサンプルに夢中になっている女たちの姿があった。
「みんなそれどころじゃないって感じだものね」
ミカの言うとおり、製品サンプルに夢中になっている女たちに、ミカの声を聞く余裕などなかった。
「きゃははっ ああぁっ!」
「もうだめ もう だめぇっ!」
大広間に女たちの悲鳴が響き渡る。
彼女たちは一糸まとわぬ生まれたままの姿で手足を拘束されている。仰向けになった三人の女にはワインレッドの触手のような物体が女たちの手足に巻き付き、彼女たちに万歳をさせているのだ。
彼女たちのいる床の一帯にはワインレッドの液体が広がっており、触手はその液体の表面のいたる所から伸びていた。
彼女たちの腕に巻き付いた触手はその先が細く枝分かれし、彼女たちの脇腹や腋の下を這い回ると同時に、固く尖った胸の頂を摘まむように転がしている。
そして、足に絡みついた触手によって大きく開かされた彼女たちの太股の間では、残る三人が四つん這いになり、やはり触手に手足を拘束されながら、目の前の女の太腿の付け根の花園に唇を押し当て、固く尖ったメシベや激しく蠢く花びらを舌で激しくかき回しながら、奥から溢れ出る淫らな女の証しを吸い続けている。
そして、四つん這いの彼女たちのお尻やフトモモにも枝分かれした触手が人の手の指のように這い回っている。そして、そのうちの一本が女の子の花園の奥深くへと入り込み、内側で枝分かれした無数の触手が内壁を這い回りながら、淫らな歓びを送り込み続けていた。
「アソコを他の女の人になめられながら腋の下と乳首をくすぐられるのはどんな気分かしら?」
「ああっ、だめぇ! おかしくなっちゃう!」
ミカの質問に、仰向けの女の一人が甲高い悲鳴で答えた。ケッペキーナ帝国の国民が普段は感じる事のない初めての女の恥ずかしい歓びの凄まじさに、彼女は今にも気が狂いそうだった。
「ムムッ!」
四つん這いの女の一人がくぐもった声を上げた。彼女が口づけていた花園から女の歓びが迸り、彼女の口の中を満たし、飛沫が顔を濡らしたのだ。
「さあ、もっとしっかりなめておあげ。でないと、あなたのぐちょぐちょになっているここへの悪戯をやめちゃうわよ」
ミカにそう言われた四つん這いの女は、目の前の女の花園に押し当てた唇と舌を一層激しく動かしながら、メシベと花びらを舐めしゃぶり続ける。
彼女の内側で蠢く無数の触手によって送り込まれる変質的な歓びは、ケッペキーナ帝国国民としての彼女の理性を確実に狂わせていた。
「ああっ、もうだめ、もうだめぇっ! ああああぁぁっ!」
別な仰向けの女が甲高い悲鳴を上げた。全身をガクガクと震わせ、女の子の花園から恥ずかしい証しを迸らせ、そこに口づけていた四つん這いの女の顔をしとどに濡らした。
「あらあら、あなたはずいぶんと敏感なのね。これで何度目かしら」
ミカのその言葉に、仰向けの女は答えられなかった。太腿に頭を挟み込んだ女の舌と唇によって送り込まれ続ける凄まじい桃色の快感に言葉を発する余裕もなく、今日この場で初めて感じた女の歓びに悲鳴を上げさせられた回数を思い出す事もできなかった。
「でもまだまだこれからよ。今晩中に何度絶頂を迎えるか、とっても楽しみね」
ミカがそう言った時、今しがた絶頂を迎えて仰向けの女の花園に口づけていた四つん這いの女もまた、激しく身を震わせた。
「ムムッ!」
絶頂の悲鳴は口を塞いだ花園に遮られて声にならなかったが、触手に悪戯されている彼女自身の花園からは女の歓びの証しが激しく迸っていた。
「あら? あなたも同時に達するなんて、この短時間でずいぶんと仲良くなったのね。女同士、仲良くなるのは素晴らしい事だわ。わが社の製品によって世界中の女性が互いに仲良しになるならば、戦争など二度と起こる事はないと思うのだけれど、皆さんはどのようにお考えかしら?」
ミカは女たちに問いかけたが、触手から与えられる女の歓びに酔いしれる彼女たちに、ミカの質問に答える余裕などあるはずもなかった。
「ああっ、あたしも、もうだめぇ!」
「ムムッ!」
新製品と称する液体の上で、全裸の女たちは敏感な部分に与えられ続ける桃色の刺激に歓びの声を上げ続けていた。
「あら?」
ふと、ミカが窓の外を見上げると、上空を飛ぶ大型ヘリからコンバットスーツに身を固めた女たちが飛び降り、建物の方へ近づいてくるのが見えた。
その大型ヘリに、ミカは見覚えがあった。
「司法省特殊警察部隊? ケッペキーナのレーダー網も少しは進化してるようね」
ミカは部屋のドアの方へ向き直り、襲撃に備えるためにスカートをたくし上げた。
シルキー、シルヴィア、セシルの三人が、大広間のドアの前に到着していた。
シルヴィアがドアに耳を近づけると、女の悲鳴が聞こえてきた。ケッペキーナ帝国では聞くことのない、淫らな悲鳴だ。
「この部屋で間違いなさそうね。少なくともクリスマスパーティーで盛り上がっているだけでない事は確かだわ」
三人はドアの正面で銃を構えた。シルヴィアがドアノブを回し、一気に押し開ける。
部屋の中の異様な様相を気にしている暇はなかった。
「動くなっ!」
「貴様を密入国並びに有害製品密輸入の疑いで逮捕する!」
シルヴィアとセシルが、部屋の奥の窓際に立つ、ミカ・サイトウに向かって叫んだ。
「失敬な! 新たなお客様のために当社で用意させて頂いた赤ワインを有害と呼ばれるあなた方には、わたくしのこの白ワインをふるまって差し上げますわ」
ミカ・サイトウは、既に白ワインの準備を整えていた。片足を高く上げ、大きく開いた太腿の付け根の女の部分を指で広げると、そこに息づく秘めやかな出口からレモン色の水流を迸らせた。
水流は三筋に分かれ、シルキー、シルヴィア、セシルの顔に勢いよく命中する。
「きゃぁっ!」
「いやぁっ!」
「ひいっ!」
三人は一斉に悲鳴を上げた。
三人がひるんだ隙に、部屋の中央付近に広がっているワインレッドの液体から新たな触手が伸び、三人に迫っていた。
「もっとも、赤ワインの方も黙ってはいないでしょうけど」
ミカの言葉に応えるかのように、触手が三人の持つ銃に巻き付いた。
「ひぃっ! なっ、何これ!」
シルヴィアが悲鳴を上げた次の瞬間、触手は彼女たちの手から銃を奪い、手の届かない所へ放り投げてしまっていた。
「しまった! 銃が!」
シルヴィアが叫んだ時、シルキーが窓際の方へ走っていた。
どうやらミカは、武器を持っていないようだ。銃がなくても捕まえる事はできる。
ミカは窓を開け放し、窓枠に足をかけた。
「ま、待てっ! まさか、この階から飛び降りるつもり?」
シルキーが窓際に到着した時、ミカの身体は既に窓の外にあった。
「本当に飛び降りるなんて……」
彼女は雪の降り積もる地面へと落ちていくミカを見送るしかなかった。だが、ミカの身体が地面に到達する事はなかった。
ミカが飛び降りた時には既に、建物の上空に巨大な円盤状の物体が待機していたのだ。
飛行物体は底面の中央から地面に向けて光を放ち、その光が落下中のミカ・サイトウを捉えた。
「何? あれは空飛ぶ円盤? まさに未確認飛行物体ね」
光に捉えられたミカ・サイトウの身体は、何かに引き上げられているかのように、上空の円盤に引き寄せられていく。
「牽引ビーム、それに反重力制御まで完成させているなんて……」
ミカを回収し、建物を離れていく円盤を、シルキーはただ見送る事しかできなかった。
「ちょっと、このスライム、どうしたら止まるのよ」
シルヴィアとセシルは、女たちのいる辺りの床に広がる液体の採取と、触手に捉えられた女たちの救出作業を始めていた。
「ああっ、だめぇ! これ、すごくいいの!」
二人が全裸の女たちの身体から触手を引き剥がそうとすると、女たちはまるで触手から与えられていた刺激を惜しむかのような声を上げる。
司法省特殊警察部隊の仕事が終わるのには、まだまだ時間がかかりそうだった。
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