犬童頼房作品

鎖の夏合宿

第5話
 なんだろう。この気持ちのいい感覚は…
 幸江は、気怠いまどろみに浸りながら考えていた。先ほどから、甘いさざ波が波紋を描いて体中に広がっている。と同時にくすぐったいような感覚も…
「んん…」
 幸江はかすかに身じろぎをした。目を開ける。幸江は布団の中にいた。いつの間にか眠ってしまったらしい。薄いかけ布団がかけられていた。
「お目覚め? 幸江」
 横を見ると美園がいた。一人用のベッドに美園と一緒に眠ってしまったらしい。誰かと一緒に寝るなんて何年ぶりだろう、と甘酸っぱい感傷にひたっていると、
「はうっ」
 甘美な性感が下半身から駆け昇ってくる。今、気がついたのだが、美園の手が布団の中に潜り込んでいて、幸江の花びらに指を遊ばせていたのだ。雌しべを愛でる度にヒクヒクと反応する幸江の様子を、面白がって見ていたに違いない。寝顔をじっくりと観察されていたのかと思うと、幸江はなんだか恥ずかしかった。昨夜はもっと恥ずかしいことをされたのだが。
「あん…やめてよ。美園のエッチ」
 幸江は身をくねらせた。形ばかりの抵抗だった。本当はもっと可愛がってもらいたかった。だから自然と甘えた声音になってしまう。
「あら、幸江の雌しべ、こんなにしこっているのに。でもいいわ。止めて欲しいなら止めてあげる」
 そう言って美園は指を引いてしまった。
「えっ…」
「えって何よ。不満そうね。本当はもっと欲しいんじゃないの?」
 美園の意地悪な質問に、幸江は耳まで真っ赤に染めてしまった。
「幸江がどうしてもって、おねだりしてくれたら考えるわよ」
 幸江はすねたように親友を見た。しかし、もう答えは決まっている。美園になら何でも言える。
「お願い。私を可愛がって」
「もっと具体的に」
「ええー。い、言うわ。言うわよ。私のアソコを美園の指でこすってください。い…いじってください」
 恥ずかしさのあまり、言葉の最後の方は枕に顔を埋めながら早口で言った。その言葉が終わるか終わらない内に、美園の指が幸江の最恥の場所に殺到してきた。片方の手で秘められた門を押し広げ、もう片方の手の指がそこで淫らなダンスを舞い踊る。
「ああ、すご…すごい…」
 大胆かつ繊細な指の技巧に翻弄され、幸江は肢体をのけ反らせた。そんなに乱れたらはしたないとは思うものの、体が言うことを聞いてくれない。じっとしていられないのだ。幸江は拘束された体をヘビのようにクネクネさせ、偶然をよそおって美園の体に自身の体をこすりつけた。淫靡で濃厚なスキンシップだ。
「あ…幸江、どこに脚を突っ込んでいるのよ」
 幸江は、拘束されていない方の脚を、美園の脚の間にこじ入れた。そして体が許す限り、下着に守られている親友の股間をこすった。
「んあ…ダメ、そんな」
 この合宿が始まってから初めて聞く美園の慌てた声。それが面白くて幸江はますます調子に乗ってスポーツ健康美少女の股間を刺激した。が、さすがと言うべきか、そうされている間も、美園の指は幸江の少女の場所を責める手を休めない。指を駆使する美園と脚しか使えない幸江では勝負にならず、程なく幸江は昇りつめてしまった。
「もうイっちゃったの。朝の朝っぱらから恥ずかしいわね」
 はあはあ、と荒い息を吐きながら、美園はからかう。
「な、何よ。美園だって人のこと言えないじゃないの。私が脚をこすりつけた時、ずいぶんと変な声を出したわよね」
「……」
「まだあるわよ。その時、美園の下着、何だか湿っぽかったわよ。あれ何?まさかとは思うけど、私が寝ている間にオナニーしていたんじゃないでしょうね」
 いつもは冷静な美園が面白いほどに狼狽した。
「あ…汗よ」
「嘘つかないで。もしかして私のことを想像しながら?」
 顔を赤くしながらも、美園は肯いた。
「ご…ごめん、幸江。あなたが私の手でなぶられている場面とか、私の目の前でおしっこを漏らしたシーンとかをを想像しながら…」
 美園の妄想の中で自分が弄ばれていたかと思うと、幸江は嬉しくもあり恥ずかしくもあった。
「私の方こそ、ごめん。昨日から私ばかり感じていたわよね。それでそんなことしちゃったんでしょ。ごめんね。今度は私が気持ちよくしてあげる。私、手が使えないから、お口で。だから下着を脱いで」
「え、そんな、いいよ」
 顔を桜色に染めながら美園は首をよこにふった。しかし、どう見ても心底から拒絶しているようには見えない。それどころか、幸江の愛撫を心待ちにしているかのような表情さえうかがえる。だが、自分の口から愛撫をねだるのは女の子としては恥ずかしいのだろう。その気持ちを察し、幸江は助け船を出した。
「お願い。下着を脱いで。私だけ狂わされて、美園は澄ました顔をしているなんて不公平でしょ。だから脱いで」
「う、うん。わかった」
 幸江と目を合わさないようにしながら美園は肯いた。寝具の中に手をやり、湿った下着を膝まで下ろす。それを待っていた幸江は、布団にもぐり込み、美園の美脚の間に顔を寄せた。そこに息づく朝露を含んだ花にじっと目を注いだ。
「美園のここって、こんな風になっているんだ。感激。とっても綺麗よ。昨日は見られなかったから、たっぷり観察させてもらうわよ」
「や、やめてよ。恥ずかしい」
 美園の手が、自身の股間を覆い隠す。
「あ、手をどけてよ。でないと可愛がってあげられないでしょ」
 幸江は、軽く美園の手を噛んだ。すぐに美園の手はひっこむ。黒い下草に縁取られた女の裂け目。かすかに咲きほころんでいる親友の花弁に、幸江はそっと唇を寄せた。ついばむように口づけする。
「んん…」
 たったそれだけなのに、美園の体は過敏に反応した。腰が小さく跳ね、刺激に耐えかねたかのように性器が蠢く。
「うふふ、美園だってこんなに敏感じゃない。人のこと言えないわね。昨日の夜、美園がしてくれたみたいに可愛がってあげる」
 幸江は、美園の女にキスの雨を降らせた。岩魚が苔をついばむように優しく、時にはピラニアが獲物を喰らうかのように激しく、美園の性器の至る所に途切れることなく接吻する。そのたびに美園の口から艶めかしい喘ぎ声が聞こえ、幸江の耳を楽しませた。興奮してきたのか、蕾がほころんで、女の肉芽が顔を出す。あふれ出た朝露が会陰を伝って垂れ落ち、白いシーツに染みをつくった。美園の緊張がほぐれてきたと見ると、幸江はおもむろに、親友の媚唇にしゃぶりついた。
「あ、ああん。んあ、そんな…」
 切羽詰まった声がもれ聞こえた。腰がうねり舞って幸江の顔をふりほどこうとする。しかし幸江は、美園の淫唇に吸いついて離そうとしなかった。それどころか小陰唇をかき分け、谷間の粘膜を嘗めこする。膣の入り口や尿道に舌を刺そうと試みる。
「ああ、幸江、やめて。お願い。もう、壊れちゃう」
 美園の手が幸江を引き剥がそうとする。しかし、その手には全く力がない。ただ幸江の頭に添えられているだけである。それどころか、いつしか幸江の頭を抱えて自らの股間に押しつけてさえいた。脚もかすかに開き気味で、幸江の舌を受け入れている。言葉とは裏腹に美園が自分の愛撫を喜んでいる。そのことが倒錯した愉悦を呼び起こし、幸江はますます激しく唇を動かした。
 二人の少女が我を忘れて性の戯れにふけっていた時…
「あらまあ、お楽しみの最中だったようね」
「やっぱりあなたたちって、そういう関係だったのね」
 部屋の入り口で、千里と瑞穂とが淫らにほくそ笑んでいた。
 美園は青ざめた。幸江も、寝具の中で身を縮めている。
「せ、先輩。いつからいたんですか…」
「『ああ、幸江、やめて。壊れちゃう』のあたりからよ。それにしても、朝っぱらから激しいわね。若いって羨ましいわ。こうなるとは思っていたけどまさかこんなに短時間で、しかもこんなに親密になるなんて。」
「本当よ。私たちが入ってきても全然気づかないんだもの。完全に二人の世界に入っちゃって」
 瑞穂はつかつかとベッドに近づくと、いきなり掛け布団を引き剥がした。
「ひっ」
 明かりの下にさらされて幸江は身を縮めた。昨夜の戯れのままに、幸江の衣服ははだけたままだった。短パンと下着とは足鎖に絡まり、シャツも背中に回された腕に止まっている。どれも肝心な場所を隠しておらず、全裸も同然である。せめてもと思い、幸江はうつぶせになって膝を抱えた。。
「胸を隠して尻隠さず、というわけね」
 じっとして恥辱に耐えている幸江の尻朶を、瑞穂の手が無遠慮に撫で回してくる。目を固く閉じたまま幸江はこらえた。後ろ手に拘束され、足首も繋がれて逃げることすらできない獲物を前にして、瑞穂のいたぶりはエスカレートした。尻の割れ目を痴漢のように卑猥に撫で上げたかと思うと、左右の尻肉をつかんで一気に割り裂いた。
「いやー、そ、そんなとこ、見ないでください」
 尻の谷間に外気を感じ、幸江は泣き叫んだ。尻肉の狭間の秘められた部分に先輩たちの粘つく視線を感じ、幸江は屈辱感に身悶えした。瑞穂の手から逃れようと、精一杯に腰を揺する。
「お尻をくねくねさせちゃって。誘っているの?」
 瑞穂の嘲りの声すら幸江には聞こえなかった。尻から手が離れてほっとしたのも束の間、瑞穂の指が、うずくまった幸江の腰の底を強引にまさぐった。
そこには幸江の陰部が、暴力に怯えながら身を潜めている。姿こそ隠れているものの、瑞穂の淫指はやすやすと幸江の中心部をとらえた。女特有の淫靡な指使いで、幸江の花園は犯される。傍若無人な同性の指に、思うさま少女の花弁を蹂躙されても、幸江には抵抗するすべもない。無理やりに注がれる刺激に、腰が蠱惑的に揺れた。
「やめてください」
 陰部を手で隠してうずくまっていた美園だったが、幸江に対するあまりの仕打ちに我慢ができず、瑞穂につかみかかった。が、その手を千里に押さえられ、瞬く間に後ろ手にねじり上げられてしまった。
「くうっ」
「さすがは美園。勇ましいわね」
 美園の耳元で千里がささやく。千里の息が耳の穴にかかり、美園は首を縮めた。その反応に気をよくしたのか、千里が耳に舌を這わせてきた。
「いや!」
 その異様な感覚に美園の体は拒絶反応を示す。首をねじって逃れようとした。しかし千里の舌は執拗に追いかけてくる。
「幸江のはよくて、私のは嫌だと言うの。仲がよくて羨ましいわ。今の今まで何をしていたの? 乳首がたっているわよ」
「……」
「黙っていてもすぐにわかるわ。瑞穂、美園のアソコを調べて。どうせぐちゃぐちゃになっているわ」
「わかった」
 幸江を責めなぶっていた瑞穂は、その矛先を健康美少女に向けた。立て膝になっている美園は、身をかがめて股間を隠そうとしたが、千里に押さえつけられているためにそれもままならない。無防備な股間をさらすまいと、太ももをよじり合わせ、はかない抵抗を試みた。しかし上級生の淫らな指先は、太ももの付け根の合わせ目に容赦なく押し入った。生い茂った下草をかき分け、敏感で繊細な女の秘部を乱暴にくじりまわす。
「あ、痛い。や、やめてください。先輩」
 先ほどの性の戯れで湧き出した蜜。お願いだから乾いていて、という美園の願いもむなしく、美園の下半身からは、ぴちゃぴちゃくちゅくちゅという恥ずかしい音が聞こえる。その音、自分の受けている屈辱的な仕打ち、淫部を荒々しく陵辱する瑞穂の指。それらが美園の心の深くに眠っていた被虐の悦びを呼び覚ました。幸江の口唇愛撫によって火がつけられた体は、上級生の指にすら感じてしまう。
「あ、あん。ああ、いい。んふ…」
 美園が鼻にかかった甘い喘ぎを発し始めるのに、大した時間はかからなかった。ほんの一分かそこらで、美園は上級生の指に屈服してしまった。体の奥からは新たな蜜が湧き出す。ますます大きくなった蜜音は、美園の喘ぎとともに淫らな和音を奏であげる。
「美園ったら、朝からこんなに濡らしているわ。手がこんなに濡れてしまったわ」
 淫ら蜜で光る指が、美園の目の前にかざされた。
「ふかせてもらうわよ」
 瑞穂の指が、美園の尖りきった乳首になすりつけられる。自分の愛液を乳首にぬりつけられているというのに、充血した蕾からは甘い快楽が広がる。
「まったく幸江といい美園といい、見かけによらず本当に淫乱ね。牝だわ」
 美園の耳を噛みながら千里が言う。今の美園には、それすらも性的な快感を感じてしまう。
「体は十分に温まっているようね。いいわ。これから最後の仕上げをするわよ。代々うちの部に伝わっている練習方法で、主にダブルスのパートナー同士でやるの。お互いに一体感が得られ、心肺機能も向上し、おまけにとっても気持ちいいの。いいことずくめでしょ。ちょっと恥ずかしいかもしれないけどね。でもこれは練習なんだから、恥ずかしがらないで」
 不安と恐怖、屈辱、快楽がないまぜになった状態で、二人の少女はベッドの上に横たえられた。体にまとわりついていた布切れは先輩たち手によって剥ぎ取られ、二人が見につけている物は拘束具のみとなってしまった。16歳の少女の肢体に、同性の視線が粘つくように絡んでくる。
「幸江って、清楚なお嬢さまの割には胸も尻も大きいわね。責めがいが有りそうだわ」
「本当ね。でも美園だって、引き締まった体をしていて、とっても美味しそうよ。あそこの毛も濃いめだし」
「すごく濡れていたしね」
「ええ。でもそれは幸江も同じよ。二人そろって淫乱なのね」
「こんな淫らな後輩を持って、私は先輩として恥ずかしいわ」
 同性に目による批評、嘲りが、幸江と美園との羞恥心を掻き立てる。幸江は、体を丸めて目を閉じ、先輩からの辱めに耐えた。気にしていた乳房を先輩にまで見られてしまい、おまけに性の戯れの現場を見られ、もうどうしていいのか分からないほど恥ずかしかった。顔も体も火照ってくる。
「さあ、美園。幸江の腰に手をまわしなさい」
 千里の声が、残酷な命令を下す。
「え…でも…」
 美園はためらっている。いくら何でも他人の目のあるところで抱き合いたくはないのだろう。それは幸江も同様で、二人だけで美園と戯れたかった。
「恥ずかしがっちゃダメよ。これは立派な練習なんだから。あんまり面倒をかけさせると、この部屋に他の部員も呼ぶわよ。それともこの姿で食堂に連れていってあげようかしら」
 口元に妖しい笑みを浮かべつつ、千里は、張りのある美園の尻を撫でている。
「いいわね。それ。首輪とかつけてさ。股縄もいいかもね」
 幸江の乳首の感触を楽しみながら、瑞穂が話を合わせる。時に繊細に、時に力強く、瑞穂の指は幸江の胸の膨らみを責めなぶる。その巧みな技巧に、幸江の乳首は休む間もなく充血し通しだった。何か他のことを考えて興奮を沈めようとするのだが、すぐに性楽に心を奪われてしまう。同じ女である以上、自分の乳首がしこっていること、自分がなぶられつつも性感を得ていることは、瑞穂にも明らかなはずだ。それを思うと幸江はますます体が熱くなった。
 そればかりではない。乳首から広がった快楽が体中に広がり、下半身の中心部が刺激されるのだ。心地よいようなむず痒いようなその刺激に、幸江は腰をヒクつかせてしまう。つい先程までの百合の戯れで堅さのほぐれた幸江の体は、刺激に対して過敏なまでに反応するようになっていた。
「ん、ん…んふっ…」
「どうかしら、私の指使いは。我慢しないで声を出してもいいのよ」
 親友に痴態を見せまいと頑張ってみても、こらえきれずに先輩を喜ばすような呻きをもらしてしまう。胸だけでこんなにされてしまうのなら、下半身を刺激されたらいったい自分はどうなってしまうのだろうか? 瑞穂の手つきは手慣れており、おそらく昨夜に目覚めたばかりの美園よりも上手だった。
 一方の美園は、千里からの脅しに怯えていた。全裸のままで部員の前に引き出される。幸江と二人で。首輪をつけられて家畜のように。みんなの視線が私と幸江の裸を… 胸も下半身も見られて… 同級生のまなざしが私の性器に刺さって… 幸江と比べられてしまうのね。その光景を瞼の裏で想像するにつけ、死ぬ程の屈辱感とは別の、何か甘やかな感覚が湧き上がってくる。
 そんな…私ってそんなに破廉恥な女だったの? でも…見られて濡れてしまうかもしれない。まさか。でも、もしかしたら。それなら… 美園は目の前で痴態をさらしている幸江を見た。脅しに屈したふりをして、幸江の美味しい身体を… ただ腰に手をまわすだけなら、人前でもそんなに恥ずかしくないよね。美園は、幸江の腰におずおずと手をのばした。二人とも裸であることは忘れようとした。
「え、あ? 美園? 何を、やめて! 先輩が見ているのよ。目を覚まして」
 とは言うものの、幸江はかすかに腰を浮かせた。美園の手を邪魔しないために。ベッドと腰の間をスルリとくぐり抜け、美園の手は幸江の腰にまきついてきた。昨晩、幸江をさんざん泣かせた手が。幸江を何度も昇りつめさせた手が。
「お願い、幸江。みんなの前で裸をさらすよりはマシでしょ。今は先輩の言うことを聞くしか…」
「うん…」
 幸江と美園との視線が交錯する。その瞬間、幸江の胸と下半身の中心とがきゅんと疼いた。身体が、特に股間が熱い。自分の恥ずかしい場所が、今どんな有様になってなっているのか、幸江は見てみる勇気はなかった。
「あらあら、そんなに見つめ合っちゃって。これから練習だっていうのに不謹慎ね」
 ニヤニヤと笑いながら瑞穂は、幸江の腰にまわされた美園の手をとる。カチャリという音とともに、美園の手首は手錠で繋がれてしまった。幸江の腰に抱きついたまま。
「え…?」
 これで、容易には抱擁を解くことはできなくなってしまった。二人は顔を見合わせて戸惑いつつも、胸を高鳴らせた。
「次は幸江の番よ」
 昨夜から幸江の自由を奪っていた手錠が外された。のも束の間、すぐに無理やりに、美園の腰に手をまわすように強制された。しかし幸江は、わずかの抵抗さえ示さずに、為されるがままに美園の締まった腰を抱いた。本当は力の限り抱きしめたかったのだが、先輩たちの目を憚って、控えめに手を添える。その手も、すぐに手錠で拘束された。互いの腰に手をやったまま手錠をかけられ、二人の少女は、身体を離す自由さえ失った。
 が、二人は別の何かを得た。
「幸江…」
「美園…」
 これから始まるであろう、先輩の理不尽で淫らな仕打ちに怯えつつも、無言のまま幸江と美園とは肯きあった。互いの存在を励みに耐えきってみせる。肌と肌との温もりがとても心強い。
「どうやら二人とも覚悟はできたようね」
「それじゃあ、いよいよ始めるわよ。バドミントン部に代々伝わる地獄のくすぐり特訓を!」
 喜々とした千里の声を合図に、上級生の淫らな指が、ベッドで抱き合う下級生の腋の下に襲いかかった。相手の腰に手をやっているために、幸江の腋の下は半ば無防備になっていた。そこにもぐりこんだ淫靡な手指は、思うがままに少女の神経を刺激する。
「ひゃ、あ、ああ、きゃはははは」
 たまらずに幸江は声を上げた。それは美園も同じで、二人の少女の高らかな声がホテルの部屋に響きわたる。腋を閉じて、指の動きを封じようとすると、必然的に相手の腰を抱き寄せることになってしまう。しかし、耐え難いくすぐったさに苛まれている幸江と美園とは、そんなことに構っていられなかった。少しでも腋を締めてくすぐったさを和らげようと、人目もはばからずに同性の腰を抱き寄せる。豊満な幸江の胸に、美園の形よい小ぶりな胸が押しつけられる。美園の乳首が充血して堅くなっているのが、幸江にはすぐにわかった。尖りきった先端を感じ、幸江もまた胸の頂を堅くしていた。
「んあっ!」
 不意の刺激に幸江は嬌声を発した。腋へのくすぐりに慣れた頃に、いきなり脇腹をつつかれ、反射的に声が出てしまったのだ。その声は、性的刺激へのよがり声に酷似していた。
「まあ、いやらしい声」
 ニヤニヤ笑いながら、上級生たちは、ベッドの上の獲物の脇腹に責めを加える。その手から逃れようと、獲物たちは腰をうねらせた。全裸の少女二人が胸を合わせて抱き合い、白い尻を振りたてている。それがどんなにか淫らでいやらしい光景であるのか考える余裕は、今の二人には全くなかった。上級生による特訓の名を借りたくすぐり虐めに耐えようと、幸江たちはもがき、もだえ、その結果として身体をこすりつけ合った。
「きゃはは、あ、あ、あ」
「ふふふ、激しいのね。いいわ。さっきからお待ちかねの場所をくすぐってあげる」
 幸江の腋の下をくすぐる手を休めぬまま、千里のもう片方の手が、幸江の豊麗な尻の割れ目を撫で下ろした。尻の割れ目の底で手が止まる。千里の手がそのまま脚をくぐり抜ければ、そこには潤みきった幸江の性器が息づいている。幸江は、くすぐったさに身悶えしながらも、千里の意図を察してピタリと脚を閉じた。しかし幸江の身体は心を裏切った。まるでくすぐりと愛撫とをねだるかのように性器は咲きほころび、汗と言うには粘りけのある液体を溢れさせようとしていた。
 自分の中の淫らな欲望を知られなくない。懸命になって幸江は脚に力を込めた。
 千里はゆっくりと楽しみながら城攻めをすることに決めた。腋の下への攻撃を小休止して、幸江の膝裏をほんの一撫でしてみる。それだけで幸江の身体はヒクンと反応し、一瞬だが脚から力が失われる。
「んっ」
その隙を突いて、千里は、下級生の閉じ合わされた太ももに指を差し込んだ。今度は、おもむろに脇腹を揉んでやる。
「やっ!」
 幸江の意識は脚から離れ、また少し千里は指を進めた。そして、幸江の身体の底、つまり肛門と恥裂との間を指でこすってやる。
 自分でも触ったことのないような場所をさわられ、恥ずかしさのあまり、幸江は腰をもじもじとさせ、脚をよじり合わせた。千里の指から逃れるために腰を前に突き出す。幸江と美園との下腹部は、これ以上無理というくらいにくっついた。おまけに、千里の指が動く度に幸江が腰を揺らすので、二人の少女の下半身は、肌と肌とを密着させたまま淫らに揺れ動く。
「あと少しよ」
 千里は、しっとりとした肌が、手にからみついてくるのを堪能しながらも、一気に指を押し進める。腰の裏側から突き立てられた手指は、太腿の門をくぐり抜け、幸江の秘密の場所へと到達した。そこは千里が想像していたよりも遙かに濡れ潤んでいた。千里の指が恥唇を優しくこすると、それを歓迎するかのように幸江のそこはヒクヒクと蠢く。
「ああ、いやあ。そんなトコ、そんな所、さわらないでください」
 幸江は哀れみを乞うたが全く相手にされなかった。それどころか、その様子を目の当たりにした千里の加虐欲を煽りたて、さらなるくすぐり快楽地獄への誘いになってしまった。
「幸江、私たちの前では、もっと素直になってもよいのよ。こんなに濡らして! 気持ちいいんでしょ。もっとよくしてあげるわね」
「あああ、ああああ。そ、そこを摘まれたら、わ、私、おかしくなっちゃいます」
「犯して欲しくなっちゃう? まあ、本当に幸江って顔に似合わずに淫乱なのね」
「そ、そんな…」
 幸江が弄ばれているそのすぐ横では、美園が瑞穂の手によっていたぶられていた。身体中をくすぐられた後、瑞穂の手がたどりついたのは、美園のぷりぷりとして張りのある臀部だった。亀裂に沿って手を行きつ戻りつさせながら瑞穂は生け贄の耳元にささやいた。
「前の方はさっきさんざん調べさせてもらったから、今度は後ろの方を調べさてあげるわね。どう? 嬉しいでしょ」
「いや。やめて下さい先輩。お、お願いですから」
 誰も耳にしたことのないような、美園の怯えた声。それが瑞穂にはたまらなく心地よかった。両手で美園の尻頬をつかみ、容赦なく左右に割り広げる。ある意味では女性器よりも恥ずかしい場所を人目にさらされる。その気の遠くなるような屈辱に、美園は親友の身体に抱きついた。ぎゅっと目を閉じる。
「ふうん。美園のお尻の穴って、こうなっているんだ。いいものを見せてもらったわ。綺麗よ。他のみんなにも見せてあげたいわ」
「お願いですから…」
 普段の勝ち気な美園からは想像もできないような弱々しい声音だった。
「美園って処女? それとも卒業記念か何かでやっちゃった? でも後ろの方はバージンよね。ふふふ。私にちょうだい」
 人差し指をペロリと一嘗めすると、瑞穂は、下級生の皺のよったすぼまりに指を突き立てた。
 つぷ。
「いやあああああ」
 悲痛な声が部屋に放たれる。うまれて初めての肛門への異物の闖入。身体の痛みこそあまりないが、16歳の少女が受ける精神的苦痛は想像するに余りある。美園は、指から逃れようと、しゃにむに腰を前に突き出した。指を抜こうと、腰をうねりまわした。またもや二人の少女の下半身がこすれ合う。
「んん…美園」
 親友の下腹部が自分のそれにぶつかると幸江は低く呻いた。身体の震えを通して、美園が感じているであろう屈辱感が伝わってくる。そして美園が感じている被虐の悦びをも。幸江は、美園を強く抱きしめた。幸江自身の下半身の中心からわき上がる性的欲求を鎮めるにはこうする他なかった。美園の太腿に、稚拙な腰使いで陰部をこすりつける。
「ああ…幸江」
 衝動を抑えかねていたのは美園も同じだった。大胆な仕草で腰を揺すり、濡れそぼった秘園を幸江の身体にすりつけてくる。二人の下半身は、どちらが分泌したか定かでない粘液にまみれ、淫らな臭気を発散している。全身汗まみれで、心臓が激しく鼓動を刻む。
「ああ、す、すごい。幸江…」
「美園、美園、みその…」
 どちらも、うわごとのように相手の名前を口走る。いつの間にか上級生がいなくなっていることに二人とも気づかなかった。先輩たちに脅されて抱き合っているわけではなく、自分たちの意志で抱き合っていた。二人は絶頂に達するまでじゃれ合った。互いの心が、ちょっと近くなった気がした。

終わり

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