『私は外惑星域哨戒船『フロンティア号』一級航海士レミ。この通信を最後に冷凍睡眠に入り救助を待ちます。設定惑星である火星圏到達は1998日後。救助されることを期待します』 薄暗い宇宙船のコクピットの中で、救助信号を交えた通信を送り終わった女性は、通話マイクを戻すと大きく息を吐いた。 (信じられない・・・・・あれは本当に現実だったのかしら・・・・・・) つい数時間前、実際に体験した事を思い起こして尚、彼女はそれを信じきれずにいた。だが、出来事は事実であった。冷静に、客観的に見る者がいればアレをどの様に判断したかは分からない。だが、当事者である彼女達は生命の危機に直面し、仲間も失っている。 だが、それも今や過去の事。過ぎ去って戻ることのない事であった。その事が、唯一の彼女の救いと言えた。