ミニメロン作品

遠足の思い出

第3章 紀子の恥ずかしい敗北
4時30分。
ようやく解散場所の公園に着いた。
女子生徒はそれぞれ隣の男子生徒に見張られながら、ゆっくりとバスを降りた。
苦しんでいる女の子の部分をかかとで押さえるべく、しゃがみこんでしまう女子生徒に、恵子先生は冷酷な言葉をかける。
「それでは、解散の挨拶をしますので、整列してください」
すでに他のクラスの生徒は整列を済ませている。
もちろん、座り込んでいる彼女たちは、そう簡単に立ち上がれる状態ではない。
かかとのおかげでようやく少しだけ楽になった女の子の部分。
かかとが外れたら、再び無防備な状態で激しい攻撃に耐えなければならない。
しかし、間もなく男子生徒によって強制的に立ち上がらされ、整列を始めた。
「気を付け!」
ただ立っているのも辛い彼女たち、足の付け根を常にぴったりと閉じていなければ今にも噴出してしまいそうな彼女たちにとって、あまりにも冷淡な号令がかかる。
「今日は一日絶好の遠足日和で、幸い事故などもなく、みなさん楽しい一日を過ごされたことと思います。これからここで解散になるわけですが、家に帰るまでの間も事故になど遭わないよう、気を付けて帰って下さい。なお明日は……」
先生の話は、数分間続いた。
女の子の部分に渾身の力を入れていなければ、次の瞬間にも噴出してしまいそうな女子生徒たちにとって、永遠とも思える時間だった。
その間、彼女たちはずっと気を付けの姿勢を取り続けなければならなかった。
気を付けの姿勢では、肝心な部分に足の付け根をぴったりと押し付ける事ができない。
彼女たちのか弱い女の子は、真上からのしかかる大量の恥ずかしい水の重さに、なんの助けも借りずに耐えなければならなかった。
女の子の激しい悲鳴に思わず体と腰が大きく震えてしまうのを、どうする事もできなかった。

4時40分
ようやく先生の話が終わり、解散となった。
その直後、紀子のクラスの男子生徒が、公園に一つしかないトイレの個室に殺到した。
男子生徒のいる所で女子生徒がトイレに向かう事はできない。
ましてや、男子生徒の後ろに並ぶなど、できるわけがない。
彼女たちは再び地面にしゃがんでかかとで女の子の部分を押さえ、そのまま男子生徒が公園から消えるのを待った。
早くも数名の男子生徒が個室に入り、出て、公園から立ち去った。
やがて、列の先頭の数名よりも後ろの男子生徒たちは、よそのトイレを探すべく、列を離れて公園から出ていった。
残った数名の男子生徒も用を足し終え、公園から出ていった。

5時。
女子生徒たちは、かかとで女の子の部分を懸命に押さえながら、公園のトイレを目指して進み始めた。
「ちょっと……紀子……待ちなさいよ」
女子生徒の群れの真ん中あたりを進んでいた紀子は、後ろにいた女子生徒から呼び止められた。
菊池由佳だった。
「あんたは……んぁっ……一番最後よ……。そうでなかったら……んんっ……他の女子生徒も……あんたを許さないわよ!」
由佳はやはり紀子と同じように、かかとで女の子の部分をしっかりと押さえながら前に進みつつ、声を絞り出していた。
いつの間にか、紀子の周りを数名の女子生徒が取り囲んでいた。
彼女たちは紀子がそれ以上前に進めないように、紀子の両腕をしっかりと掴んだ。
「ちょ、ちょっと……放してよ……。あたしが何か……悪い事でも……したって言うの?」
「とぼけないでよ。バスの中で、さんざん恥ずかしい事を言ったりしたりしてくれたじゃないのよ。あんたはこのクラスの女子生徒の恥だわ!!」
「恥ずかしい事って、何よ!」
「自分でじっくりと思い出してみる事ね!」
やがて女子生徒は、この公園のトイレに一つだけある個室の前に、長い列を作っていった。
そして、紀子はその最後尾に並ぶ事となった。
しゃがんだまま女の子の辛さに身悶えていた女子生徒が一人、また一人と、その地獄のような苦痛と不安から開放され、元の笑顔で公園を去っていく。
――ああ、早くあたしもトイレでオシッコして楽になりたいのにぃ……。
紀子は身悶えながらも腕時計でトイレタイムを計っていた。
だいたい一人あたり3分くらいだろうか。
という事は、この列には20人程度の女子生徒が並んでいるから、自分の番になるまでにはあと1時間程度かかることになる。
――そ、そんな……
オシッコの我慢の限界はとうの昔に通り過ぎ、少しでも力を抜けば、いや、力を抜かなくても今にも漏れそうなのに、あと1時間などどうやって耐えろというのか。
しかし、今の紀子にとってはそれしか道はなかった。
紀子はかかとでしっかりと押さえられた女の子の部分に更なる力を込め、天国の門をくぐる時をひたすら待ち続けた。

6時。
ようやく紀子の前に並ぶ女子生徒はただ一人、菊池由佳のみとなった。
二人とも、顔は苦痛に歪み、汗と涙でぐっしょりになっていた。
女の子の部分にあてがわれた足を、さらに両手で押さえ、火あぶりになったヘビのように身悶えている。
由佳がその無理な姿勢で進みながら、ようやく個室に入った。
――もう少し、もう少しで楽になれるわ。紀子、がんばるのよ。
自分で自分を励ましながら、ひたすら由佳が出てくるのを待つ。
もう女の子の部分は失神寸前だ。
その失神寸前の女の子を、激しい波は容赦なく苦痛の高みへと突き上げ弄び、羞恥の悲鳴を上げさせる。
「ああ……でちゃう……オシッコでちゃう……もう……ああっ……トイレ……は……はやくトイレへ……」
紀子は恥ずかしい言葉をうわごとのように漏らし続けた。
しかし、5分経っても10分経っても、由佳は出て来ない。
「ゆ……由佳……は……早くして……お願い……あたし……もう漏れそうなのぉ!!」
紀子は個室のドアをドンドンと叩いた。
中からトントンと返事のノックが聞こえる。
「あ……あたし……もうダメなのぉ……」
そこまで言ってから、紀子はハッとした。
もしかしたら由佳はわざと長い間出てこないのかもしれない。
そして、自分にオモラシをさせようとしているのかもしれない。
いや、きっとそうに違いない。
そうと分かれば、こんな所に長くいるわけにはいかない。
紀子は個室のドアに背を向け、他のトイレを探すべく、公園の出口を目指して進みはじめた。
しかし、まだいくらも進まないうちに、紀子の前に立ちふさがる者がいた。
荒木健一だった。
1時間以上も前に帰ったはずの彼がどうして今ごろこんな所にいるのか。
そんな事を考える余裕は、紀子にはなかった。
「紀子ちゃん、どこへ行くのかな?」
健一は紀子に意地悪な口調で質問した。
「と……トイレを……さ……探しに行くのよ」
激しい尿意の波にもまれながら、紀子は必死に言葉を絞り出していた。
「君みたいな可愛い女の子がトイレでいったい何をするのかな?」
「お……オシッコよ。もう……何度も……同じ事……言わせないで」
「可愛い乙女がオシッコなんて言葉使っちゃいけないな。まあどっちみち、この近くにトイレなんてないぜ」
「それなら……ど……どこかの……家で……貸してもらうわ……う……んぁっ」
「それは無理だな。この近辺では最近、強盗が多いんだ。たいてい犯人はトイレを貸してくれと言って家の中に入り、いきなり凶器を取り出して家の者に突きつけるんだ。警察はどんな事があっても知らない人間を家の中に入れないよう呼びかけてるよ」
「そんな……」
紀子は健一の言葉に絶望した。
激しい尿意の波が襲ってくる。
「まあ、トイレを探すなんて無駄足使わずに、ここに俺と二人でいないか? 紀子がそうやってしゃがんで股間に手を当ててモジモジ腰をゆすってる姿、けっこうイカしてるぜ。記念写真でも撮っておこうか?」
「えっ?」
紀子は驚いて健一を見上げた。
その時、紀子は初めて、彼がデジタルカメラを手にしていた事に気づいた。
彼は、紀子が座り込んだまま苦痛に顔を歪めて身悶える姿を何枚も撮影した。
「お……お願い……こんな……恥ずかしい所……写さないで!」
「そんなぁ。せっかくの可愛いポーズなのに。それじゃ、残りの容量は、後のお楽しみに取って置こうかな」
「後の楽しみって……?」
「もちろん、この後君のポーズが変わってからさ」
「そんなぁ……あっ……」
「きれいに撮れたら、俺のホームページに載っけてやるよ」
「ま、まさか……そ……そんなぁ……それはダメよ……あ……ああ……もう……もうだめぇ!」
紀子が大声を上げた時、公園に一人の女性が入ってきた。
「片桐さん、何がもうだめなんですか!?」
「せ、先生……!」
それは、もう帰ったと思っていた高山恵子先生であった。
「何がもうだめなんですか?」
恵子先生は、地面にしゃがみ込んでスカートの中に両手を入れて身悶えている紀子に、厳しい口調で質問した。
「あ……あたし……お……オシッコが……漏れそうなんです……も……もう……我慢できないんです!」
「相変わらず、あなたは本校の乙女にあるまじき下品な言葉を使うのですね。まあ、もうずっと前からあなたには失望してましたから、大目にみることにしましょう。でも、処分の対象にだけはならないように気を付けて下さい」
「しょ……処分って……?」
紀子は苦痛にきつく閉じていた目を大きく開き、恵子先生を見上げた。
「あなたも知ってるでしょう。本校の女子生徒には、男子生徒に知られてはならない秘密があるのです。それを悟られるような言葉を男子生徒に聞かせた上に、現場を男子生徒に見られたとあっては、この学校に置いておくことはできません」
「そ……そんな……!!」
紀子は叫んだ。
次の瞬間、最大級の波が、紀子の恥ずかしい女の子の部分を直撃した。
「んんっ……あっ……ああっ……あああっ……ああああっ……もうダメェ、で……でちゃう〜〜〜!!」
公園に響き渡る高い悲鳴。
紀子の女の子の部分から、決して男子生徒に見せてはならない恥ずかしいシャワーが激しく噴出していた。
水の吹き出すシャーっという音、そしてそれが地面に当たるピチャピチャという音、紀子が座り込んでいる場所を中心に大きく広がっていく水溜まり。
その一部始終を健一はカメラに収めていた。
彼の撮影した数枚の写真。
それは、彼女が、そして女子生徒が、「お手洗い」と呼ばれる場所に行かなければその結果としてどうなるのか、そして「お手洗い」と呼ばれる場所でどのような秘密の行為が行われているのかをまざまざと物語る証拠写真であった。
公園のトイレのそばで、菊池由佳が満足そうな笑いを浮かべていた。


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