−緒形つかさ−
彼女、緒形つかさは今回の脱走騒動において、中心的立場となった人物であった。
今日、不意に訪れた白衣の男が落としていったIDカードと点検スケジュールから、監視システムと、無断で施設外に出たときに作動する拘束下着『くすぐりコルセット』の起動信号が停止する僅かなタイミングを知った彼女は、脱走する仲間を集い、当番制になっていたフロア管理者を色仕掛けで油断させて殴り倒し、監獄フロアと呼んでいた3階からの脱出に成功した。
チャンスのタイミングが迫っていたため、綿密な計画が練られないままの決起であったため、多くの仲間は捕まったようだが、彼女は何においても施設から離れる事を優先した。
ただ悔やまれるのは、それを優先するあまり、ろくな装備も用意できなかったと言う点であった。
今彼女は、絶対に自力では外せないくすぐりコルセットの他に、自前のパンティとブラの上から、ロッカー室で拝借した白衣を羽織り、同じく拝借した大きめのスニーカーを履いているだけと言う、痴女と大差ない格好であった。
自分の格好に恥じらいを感じるつかさは、ここが人気のない密林である事に感謝した。だが同時に人里が全く見あたらない環境に、失望感と言う相反する2つの感情を抱いていた。
恥ずかしくもあるが、とにかく今は現状から解放されるために、人のいる所へと向かわなければならない。その確実な方法として彼女は、今日訪れた男の車によって生じたタイヤの跡に添って移動する事に決めた。
堅実な判断と言えたが、それ故に追跡者にもその考えは読めた。この方向に逃げた者がいるだろうと予想し、積極的に追い始めた者は2名。男女の体力差もあり、その距離は徐々に詰まりつつあった。
「ビンゴだっ!」
2名の追跡者、香川と鹿島は供給された探知機のモニターに反応があったのを見て、互いに笑みを浮かべた。
お楽しみのチャンスが得られたと同時に、個人的な汚名を返上する機会が得られたことに感謝した。
彼等は今回の脱走騒ぎの一件で、脱走者達の不意打ちを受け、脱走の原因を作ってしまった者達だったのだ。
一部、影山の手引きがあったのも事実ではあるが、奴隷に不意打ちを受けた挙げ句に取り逃がしたと言う結果は、不名誉でしかなかった。
ほとんど余興扱いされているこの追跡において、彼等だけは私怨によって突き動かされていると言ってもよかった。
「方向は合ってる。こっちを選んで正解だったな」
「右も左も分からないこの森だ。頼るとしたら、この車の来た道しかないさ」
香川と鹿島は、手にした探知機を見つめながら前進を続け、憎き獲物との距離を徐々に詰めていった。
「!?」
車という重量物の通過によって生じた『道』を唯一の道しるべとして進んでいたつかさは、きっと何とかなるだろうと言う思いの直後、自分の背後に迫る追跡者の微かな声を聞き取り、思わず鳥肌を立てた。
(追いかけてきた?)
何故?とは考えない。彼女が不運にも遭遇した『組織』の規模を考えれば、追跡はあって当然と思ってはいたものの、いざ間近に追跡者の存在を実感すると、身体が自然に震えあがるのだった。
正直、正攻法の取っ組み合いになった場合、武道の心得など無いつかさに勝ち目は無い。だが、チャンスはまだあると考えていた。
ここは施設内ではなく、彼等も知り得ていない樹海である。いくらでも隠れようはある。
つかさは周囲を見回すと、無数にある樹木の一つに大きな「うろ」がある物を見つけ、その中に身を隠した。
彼女の背後で聞こえていた声は徐々にその大きさを増し、接近を知らせる。獲物の反応を感知した事で歓喜し、捕獲した時の事を楽しげに話していたのだが、それがターゲットに自分達の接近を知らせる要因となっていた。
これを影山などが見れば、追跡者失格の判を押したであろう。
一方で、捕まればどうなるか容易に想像できたつかさは、うろの中で息を潜め、決して見つからない事を祈り、そのまま相手が妄想に気を取られて通り過ぎるのを待った。
しかし事態は彼女の望む方向に傾斜してはいなかった。
追跡者である鹿島と香川は、通り過ぎるかと思われた所で歩みを止め、周囲を見回し始めたのである。
「どうだ?」
「多分、この辺のはずだが・・・・やっぱり特定はできん」
つかさは悲鳴を上げんばかりに驚いた。
(ばれてる!?)
しかし追跡者の会話を聞く限り、その根拠は曖昧らしさが感じられ、自分がへまをしなければ逃げられる可能性はまだあると信じたかった。
彼女に出来ることは、とにかく息を潜め自分の存在を隠す事だけだった。
「どうだ?」
香川は周囲を見回しながら、一方で探知機を見つめる鹿島に尋ねる。
「だめだな。これ以上変化しない。話通りなら、ここから20メートル範囲にいることは確実なんだが・・・・・これは結構骨がおれるぞ」
鹿島も周囲を見回し、鬱蒼と繁る植物を見て唸った。
「地道に捜索すればそうだが、こっちには「ポケベル」があるだろ」
「そう言えばそうだったな」
二人は揃って笑みを浮かべる。それはあと一手で大きな役が決まる直前となった、初心者麻雀士のようでもあった。
鹿島は探知機のもう一つの機能である、くすぐりコルセットの起動スイッチを押し、その反応を期待して周囲を見回す。
だが、周囲に劇的な変化は生じず、変わらぬ静寂を保っていた。
二人も今の行為に過大な期待はしていなかったため、大きな落胆は見せなかった。
「さすがに一発大当たりはないか」
「仕方ないさ。だが、時間の問題だ。ここを中心にして二手に分かれよう」
「そうだな。どっちが先に見つけても手柄は折半だぞ」
「もちろんだ」
言って二人は二手に分かれ、リモコンの有効距離ごとに反応を伺う作業を始めた。
つかさは最新の注意を払いつつ、そっと物陰から様子を伺い、二人の追跡者が自分の位置を確実に把握していないと悟った。
だが、相手が通り過ぎず、この場での集中的な捜索を始めた事により焦りを感じ始めていた。
(ばれてる?いえ、違う・・・・もしばれてたら、まっすぐこっちに来るはず。何か痕跡を見つけられたのかしら?)
つかさは、今にも逃げ出したい衝動を堪えながら、再びうろの中に身を隠した。
今、下手に動けば間違いなく自分は捕まる。唯一助かる道があるとすれば、息を潜めて相手をやり過ごすしかなかったのである。
とにかく彼女はじっとした。イメージで気配を消したつもりでもいた。
だがそんな時、彼女の身体を忌まわしい感覚が貫いた。瞬間的に生じる刺激と共に駆け巡る堪えがたい笑いの衝動。
そう、彼女の意志では外せない特殊なコルセットが、その機能を発動させたのである。
捜索していた鹿島のリモコンの電波が有効範囲に入ったため起動したのだが、そんな事情を彼女が知る由もなかった。
乳房の下辺りからへそ辺りの胴回りにフィットしているコルセットの内側で、幾つもの突起が隆起し、バイブレーションによる振動で彼女の皮膚を刺激した。
「うっ・・・うくっ・・・うっ・・・ぁ」
つかさは不意に生じた刺激に対する悲鳴を辛うじて堪え、今にも口から漏れそうな笑い声を必死に抑えた。
もともと彼女はくすぐりに対して、そこそこの耐性がある体質で、その改善の為に施設へと送り込まれていた。
基本的にくすぐりに反応はするのだが、笑い悶えるには至らず、余程の熟練者でなければ望む反応を見れないために、弱点開発調教を施されていたのである。
だがその調教も未完であったため、コルセットの不意打ちを何とか堪える事が出来たのである。
「ぐっ・・・う・・うぷっ・・・うぅっっくくくくく・・・・」
つかさは身をビクビクと震わせながら笑い声を発しないように懸命に耐えた。暴れそうになる四肢を意志の力で押さえつけ、燻り出しのために行われているこの刺激が終わるのを待った。
だが、コルセット内の突起が、バイブレーションだけに止まらず、小さな円運動を始めた時、彼女の堤防は決壊した。この、小さなバイブによるツボこね回し責めは、彼女の最も苦手とする責めだったのだ。
「くぁっ・・・あっ、あぁ〜〜〜っ!あぁ〜〜〜〜〜〜っっっはは、あはははははははははっははははははははは!!!いやっっははははははは〜〜〜〜〜!!」
腹部に生じた刺激は、一瞬で彼女の許容量をオーバーし、耐えられなくなった彼女はうろの中で大笑いしながら悶えた。
「いたぁっ!いたぞ!」
待ち望んだ声を聞いた鹿島が歓呼の声を上げ、パートナーを呼ぶべく声を張り上げた。
そして声を頼りにいち早く彼女の隠れているうろを覗き込み、獲物の確認をした。
「ほぉ、これはこれは・・・・・」
鹿島はその巡り合わせにこれ以上ない喜びを感じた。
「こちら鹿島、逃亡者発見。紹介ナンバー0236 緒形つかさ を確保。尚、懲罰権は共同捜索者の香川と共有することを宣告します」
『了解・・・おめでとう。捕獲第一号だよ』
総合モニターで全体の状況を把握していた影山の返答は、いたって簡潔であった。
「さぁてと、お楽しみの時間だ」
鹿島と香川はいやらしい笑みを浮かべてつかさを見やった。
彼女は悔しさに歯がみしたが、抵抗すらままならない状況ではどうすることも出来なかった。
今、彼女は逃走時に奪った白衣とスニーカーを没収され、最低限の下着とコルセットと言う格好のまま、彼等が用意していたロープによって両手を縛られた状態で木の上から吊されていた。
つま先がどうにか地面に着く高さで維持されており、彼女はつま先立ちによって辛うじて手首に全体重がかからないようにしていた。
更に彼女にとっての不運は、相手が脱走時に叩きのめした相手である事だった。少なくとも、同情や慈悲を望めるような相手ではなかった。
「それじゃぁ、いくぞ」
復讐心に燃える二人の男は、つかさの左右からゆっくりと迫る。恐怖感を煽る意味も含め、手をワキワキとくねらせながら・・・・
十二分に調教された娘や、くすぐりに弱い娘であればこれだけで身悶えする事もあるのだが、彼女はまだその域には達してはいなかった。むしろ、嫌悪する相手に触れられる事に対して恐怖心を感じるのだった。
「い、いやっ、よるな」
つかさは半裸の身体を揺るし、果敢にも近づく二人に蹴りを試みた。身体が完全に自由であれば、その行為は威嚇にもなる。だが、吊されて自由が制限されている体勢では思うように命中させる事も、鋭さもなく、逆に相手に無駄な抵抗という印象を与えるだけだった。
そう言った抵抗には慣れている二人は、つかさの脚を片方づつ受け止めて小脇で抑えると、残った腕の指で、土で汚れていた彼女の足裏をくすぐり始めた。
「はうっぅううっく・・・・うくっ・・・・うぅぅぅ〜〜〜〜〜〜」
遂に始まったくすぐりに、彼女の息は詰まった。左右同時に始まった足裏のくすぐりは、行為自体は同じでも、感じる刺激はかなり異なっていた。
鹿島と香川の力加減と癖の違いは、全く異なる刺激となって彼女の足裏を責め続けた。
つかさはくすぐりに対しては耐性があった。だがそれは完璧と言う物ではなく、単に他の人より耐えられる時間が長いと言う事だけだった。
今も爆笑こそしていないだけで、足裏をまさぐられる感触に、彼女の身体はピクピク跳ね、表情は今にも吹き出しそうな笑いを懸命に堪えていた。
「ふっ・・・ふぅ・・・あくっ・・・・あ・・・・あぁっ・・・」
「ほれほれ、結構頑張るな」
「だが、どこまで持つかな」
くくく、と、喉の奥から漏れるような、噛み殺した声は、責める側を自然と奮起させた。彼等にとって、この抵抗をうち破り相手を悶笑させる事が最大の楽しみなのである。
「くひっ・・・・くぅっふふふっ・・・・」
懸命に閉じられていたつかさの口元から、僅かな笑みがこぼれた。
鹿島がくすぐり方を変え、足の裏を人差し指で引っ掻きだしたのである。それは足裏に付着した土を落とそうとしているようにも見えたが、彼女はその新たな刺激に耐える努力をしなければならなかった。
「うっうぅ〜〜〜〜〜」
つかさは首を激しく振って、込み上がる笑い声を抑えようとする。それでも、二人の指が蠢く度に、新たな刺激が彼女の抵抗をそぎ落とそうと襲いかかる。
足の指は絶え間なく蠢き、反り返り、足首を中心に動き回ってくすぐりから逃れようと暴れ回る。
また、脚全体もビクンビクンと跳ね、相手の腕を振り払おうと努力していたが、男の腕による締め付けは頑強で、吊された身体を無様に振り乱すだけの結果に止まった。
それから数分間、足裏の責めが続けられ、つかさは吊り下げられた状態のまま身をピクピクと震わせ続けた。
ある程度のその反応を堪能した鹿島と香川は、新たな責めに入った。
二人はいったん、足裏へのくすぐりを止めると、足場に注意して互いの距離をとった。
その際、双方が小脇に抱えていた脚を放していないため、彼女の両足は開かれ、大股開きとなった。
「やっ、あっ!」
あられもない格好にされたつかさが小さな悲鳴を上げたが、その目は今だ反抗心に輝いていた。
「まだまだやる気満々って感じだな」
挑戦的な視線に気づいた鹿島が満足そうに笑った。
「そりゃ、あの程度でねを上げられたら、こっちの楽しみがないさ」
さも当然だと言わんばかりに香川が言った。
「だが、これは耐えきれるかな〜」
言って二人は、脚を前後逆に抱え直し、正面を彼女の身体の方に向けると、今まで足裏を責めていた指で今度は、彼女の左右の内股を同時に撫で回した。
「うくっ・・・・はっ・・・ぅ」
5本の指先を足の付け根に添え、ゆっくりと膝の方へと滑らせて行く。そして膝に達すると今度はゆっくりと脚の付け根に向かって上がっていく。
それを不規則な速度で何度も繰り返さすと、その都度、彼女は反応して吐息に近い呼吸を繰り返した。
内股に生じるムズムズとした感覚は、つかさの性感を焦らせた。くすぐったくもあり気持ちよくもある。どっちつかずの刺激は延々と続けられ、彼女の抵抗は徐々に弱々しくなって行った。
「ふっ・・・ふっ・・・ふっ・・・ふっ・・・・」
無理な体勢による責めに体力を消耗していったつかさの呼吸は大きく乱れ、ひくついた物となっていた。
だが、内股に添えられた二人の指が強く股に押し当てられ、不意に震わせられた時、彼女の反応は一変した。
「きゃぁっ!あっあっぁぁあ〜〜〜っっ!あはっ!あははははははははははっいやっっははははははははははははは!!」
押し込められた指先から加えられるプルプルとした刺激はつかさの精神的抵抗を容易く打ち破り、彼女の身体に激しいくすぐったさを加え、懸命に閉じていた口からついに激しい笑い声を引き起こした。
「あはっあはははははははは、やっ、やめ、やはははははいやっはははははははっっ!」
つかさは嫌々と首を振って脚をばたつかせたが、ようやくにして発見した彼女の弱点を早々に放棄するほど二人も甘くはなく、暴れる両足をがっしりと押さえたまま、更にその責めを激しくした。
「いひひひっひひひひゃはっっははははは!やめっやめ、やっひゃはははあははははははは!!」
一度緊張の途切れた彼女に、自身を抑える術はなかった。
最も苦手とする刺激を受け、身悶えれば身悶えるほど、当初反抗的だった態度とのギャップを広げ、責める側の被虐心を煽る結果となった。
「どうやら、こう言う刺激に弱いようだな」
鹿島は指を震わせながら嬉しそうに言った。
「なら、こいつにも似た機能があったよな」
そう言って香川は、懐にしまっていた探知機を取り出し、兼用されているくすぐりコルセットのリモコンを操作した。
途端に、コルセット内の突起物が一斉に振動し、女体のツボをこねくり回した。
それは、彼女が自分の隠れていた場所を、笑い声で教えてしまった時の、最も苦手とする刺激であった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっいやっいやぁ〜〜〜〜〜〜〜っっっははははははははっははははひゃぁ〜〜〜〜〜っっはははははははっははあは!あっあぁ〜〜〜〜〜っっははははははっははははあはっはははははははは!」
つかさはそれこそ狂ったかのような勢いで笑い悶え、脚だけでなく上半身をも激しく振り乱した。
それは、目に見えぬ憑き物を振り払うかのような狂気さも垣間見せ、彼女がどれほど必死なのかを伺わせた。
だが、どんなに彼女が抵抗しようと、密着し開放できない着衣の内側にある突起を振り払えるはずもなく、言いようにその刺激に翻弄され続けた。
「あはっ、あはははははあはははははっ!あぁ〜〜〜〜っっはははははははは!!」
つかさの悶え狂うさまは鹿島と香川の責めが終わって尚、続いた。
彼等は慈悲とばかりに彼女の脚責めをやめ、脚を開放していたが、くすぐりコルセットは停止していなかったのである。
グリグリと自分の弱点を、最も弱い責め方で刺激され続けているつかさは、吊された状態のまま、自由になった脚をばたつかせ、首と腰を激しく振り乱しながら笑い狂った。
「さすがに脱走なんて考えるだけあって、活きがいいな」
水揚げ間際の魚のように跳ね続けるつかさの肢体を眺め、いやらしく香川は笑った。
「もうやめっ、もうっ、もっ、もうっ、ひゃぁっははははははははははははは!!」
懇願の言葉もまともに放てないまま、彼女は吊された状態のまま踊り狂った。手首に食い込むロープに全体重がかかっているはずであったが、その痛みすら、今のくすぐったさの前に掻き消されていた。
「ゆ、ゆるして、いひゃはあはははははははっ!許して、おねがいぃ〜〜〜〜っっははははははははは!!」
つかさはとにかく訴えた。捕獲された当初、この二人は自分に対し恨みを抱いている故に、決して許されないだろうということは予想できた。
自分がどれだけ許しを請うても、当人達の気が済まない限り、自分の開放はあり得なかった。それが判っていて懇願する以上、彼女の苦しさは生半可なものではなかったと言える。
「どうする鹿島、こいつ許してほしいそうだが?」
「お前はどう思う?」
「永遠に罰するわけにもいけないからな、どこかで、区切りをつけるべきどろうしな」
「おねがい、おねがぃ〜〜〜いやっははははっはあはははっはははははは!!もう、許してぇ!!!」
二人が言うように、彼女が死ぬまで懲罰を続ける訳にもいかず、そう言った事情はつかさにも理解できていた。自分、いや、自分達囚われの者達は、生きていてこそ役に立つ存在である以上、命を奪われる心配はなかったが、今彼女が受けている仕打ちは、ある意味、死より辛いものと言ってもよかった。
つかさは苦しくてもこみ上げてくるくすぐったさに、笑い声を搾り出しながら、二人の話がまとまるのを待った。
だが二人は、そんな彼女の切なる願いを無視するかのように、長々と話を続けていた。
「ぎゃっははははははははは!!ひぃ〜〜〜っひゃはひゃははははははははは!!」
それからどの位の時間が経過したか?
絶え間ないコルセットのくすぐりによって笑い続け、その声色が変わりだしてから、ようやくにして、二人の男の話がまとまった。
「さて、そろそろ許して欲しいか?」
「はぁ〜〜〜〜っはははっはははあははははは!はいっ!はいっ!はいぃぃぃっひゃっはははは!」
当然だと言わんばかりに、つかさは笑い悶えながら首を縦に振った。
「自分の行為を反省しているか?」
「してます!してますぅ〜〜〜うっうぅ〜っふふふふふふふぁはっはははははは!」
「大人しく施設に戻るか?」
「あはっあはははっあはははははははははははは!!」
つかさは返事ではなく、首を何度も縦に振る事で答えた。
「それなら・・・・」
言って鹿島がリモコンを操作し、くすぐりコルセットを停止させた。
ようやくにして地獄の責め苦から開放されたつかさは、暴れ狂っていた身体をだらりと下げた。時折身体をビクビクと痙攣させる様子は、彼女の多大な疲労度を伺わせた
長時間全力疾走を行ったかのように呼吸を乱して項垂れているつかさに、近づいた香川が囁いた。
「こっちにも準備があるんで、その間は休ませてやる。ただし、逃げてきた距離の分だけは反省してもらうからな」
彼の言葉はつかさの耳に届いていた。だが、激しく疲労していた彼女は、その言葉の意味を深く考慮するゆとりがなかった。
一瞬、僅かに残っていた反骨心が、間近に迫った香川に蹴りの一発も喰らわせてやろうかという思考を選択しかけたが、それによる報復がどの様な物かが、容易に想像され思いとどまった。
「さあ、出発だ」
不意にかけられた声に、つかさは顔を上げた。
疲労のため朦朧として意識を半分失っていたためか、彼女には時間の経過の自覚がなかった。
だが、状況を見る限りそこそこの時間が経過しているのが予想できた。
鹿島と香川は周囲の樹を削りだしたのだろう、1本の丸棒を抱えていた。長さが2メートル程度である以外は、特に何の変哲もない木材に見えた。
「さぁ、支度するぞ」
香川はナイフを取り出すと、彼女を吊し上げているロープを切断した。
「あっ」
急に全体重の荷重が腕から脚に移り変わり、その変化についていけなかったつかさはよろめき地面に伏した。
立とうにも両手首は以前縛られたままであったため、立ち上がるのに若干手間がかかり、それでも何とか立ち上がろうとしたところで、鹿島に足首を掴み上げられ、彼女は再びバランスを崩した。
「な、なにを」
彼女の戸惑いも無視して鹿島は彼女の両足首を揃えさせると、手首同様に縛り付けその自由を奪った。
これから戻ると言う時に、手首はともかく足首まで揃えて縛っては、歩くことすらままならない。
二人の意図が分からず戸惑うつかさの心情を見抜いたかのように、香川は彼女を見下ろしながら言った。
「お前は脱走者だ。施設までの護送は俺達がやる。少し原始的な方法でな」
そう言って彼は、用意していた棒を、揃えて縛られている彼女の両手足首に通し、それぞれの両端を香川と鹿島が担ぎ上げた。
「きゃっ」
つかさは小さな悲鳴をあげて、不自然な体勢で持ち上げられた。
彼女は、シルエット的には時代劇に見られる篭屋。率直に言えば、原始人に仕留められ運ばれる猪か豚のような無様な格好にされたのである。
「お前は俺達に捕まった『獲物』だ。お似合いの格好だろ」
位置的につかさの尻側を担ぐ事になった香川が、手前にある無防備な尻を撫でながらせせら笑った。
「ここから施設まで、こうやって護送される訳だ。楽でいいだろ?」
「そ、そんな・・・」
「いやいや、気を使わなくてもいいさ」
つかさの言葉を遮り、鹿島が言った。無論彼女は余計な労力を伴うことになった二人に気兼ねしたわけではない。無様な格好にされる事に対する抗議のつもりであった。
当然、それは二人にもわかっている。分かっていてるからこそ、わざとらしくはぐらかしたのである。
「反省すると言ったからには、帰り着くまで罰を受け続けてもらうからな」
「ば、罰」
悪意に満ちた笑みを受け、つかさの顔から血の気が引いた。もう、何をされるか容易に察しがついたからである。
「そう、これだ」
その直後、つかさの腹回りに忌まわしい刺激が生じた。
くすぐりコルセットが今再び、彼女の最も苦手とする起動パターンで作動したのである。
「きゃぁ!?いやっっはははははははははははっはあっはははははははは!」
いきなりの刺激につかさが首を仰け反らせて笑い悶えた。
先程までなら脚を狂ったように振り乱すのだが、今度は両足首も縛られているため、吊された状態のまま身を揺する程度の抵抗しか出来ず、唯一首だけが盛んに振り乱されていた。
暴れる度にギシギシと棒が軋んだが、こういう事を想定して用意された棒は頑強で、折れる素振りを見せなかった。
「それじゃぁ、出発だ」
香川と鹿島は、笑い悶え続けるつかさを抱え、ゆっくりと歩みだした。
通常、「篭屋さん」体勢で移動を行う場合、一方が前、一方が後ろと言う位置に立つのだが、今回の彼等は横向きになった状態で前進を始めていた。
理由はただ一つ。通常の運搬方法の場合だと、どちらか一方だけしか悶えるつかさを眺める事が出来ないと言う不公平感があるためで、共に分かち合うと言う誓いのため、左右に展開しての前進となったのである。
これなら、互いが視線を横に向けることで、彼女の様子を楽しむことが出来るのである。
「そんな、そんな、あはあははははははははははははは!」
ようやく開放されたかと思ったくすぐりを再び我が身に受け、つかさは虚しく笑い狂った。
施設まで帰るまでと言えばかなりの距離がある。その上、ただ歩くのではなく、自分を 抱えるという不安定きわまる状態であるため、その進行速度は更に落ちるのは確実だった。
「な〜に、退屈しないように俺達も相手にしてやるから」
そう言って二人は、用意していたとあるアイテムを手に取った。
それは、棒の先端にローターが取り付けられたスティックバイブと言われる物だった。
二人はスイッチを入れると、それを彼女側に面した手で持って、笑い悶えているつかさの身体に先端を這わせた。
「はぁっ?やん、あは、、やははっはあははっはあははははははは!」
彼女の頭側に立つ鹿島は主に耳や首筋、脇の下を中心にスティックバイブを這わせ、尻側に立つ香川は尻回りと、決して逃げることが出来ない股間の敏感な部分をにそれを蠢かせた。
「いひゃぁ〜〜〜〜っっははははははははは!はぁぁぁぁ〜〜〜ん、あっ、あっ、あはぁっはははっはははっははははは」
腹周りのたまらないくすぐったさと、その他のムズムズしたバイブの責めに、つかさの性感は大きく翻弄された。
彼女は時には笑い声を、時には喘ぎ声を出して激しく悶え、身体を激しく痙攣させた。
快感とくすぐったさが入り乱れる感覚の中で、彼女は何度も許しを請うたが、今回はそれを聞き受けてもらえず、施設まで戻されるまでの間、数回、絶頂と失禁を繰り返し、施設にたどり着いた時、彼女は失神しビクビクと身体を震わせ、悶絶していたという。
−桜井美希&桜井美緒−
彼女達、桜井美希・桜井美緒は双子である。
まるで鏡合わせの様に瓜二つな二人は、セミロングの髪に着けられた髪飾りだけが外見における相違点であり、年齢は、今回施設に送られた女性の平均年齢より若い18才であった。
本来なら敏感な年頃と言われる年代であったが、彼女達に対する調教は遅々として進んでいなかった。
この姉妹はくすぐりや快楽に対する反応が実に稀薄で、不感症と言う評価のもと、体質改善のために施設に送られたのだが、ここでも調教は進まず担当者を悩ませていた。
それを自覚しての事か、彼女達は脱走による報復(コルセットの発動や捕獲されたときのお仕置き)を恐れていなかったため、行動に躊躇がなかった。
ただ、逃げることのみを考えていたため、二人とも、くすぐりコルセットとパンティの上に、白のTシャツとスリッパ履きと言う貧相この上ない格好であった。
双子故、脱走後も二人は共に行動していたが、その逃亡方向に当てはなく、とにかく施設から遠くへと闇雲に進み続けた結果、彼女達は小さな川に辿り着いた。
「川だわ」
姉の美希が見たままのことを呟き、美緒が頷いて応じた。
「うん、これに添って行けば、ひょっとしたら村か町に辿り着けるんじゃないかな?」
「多分ね・・・・森を適当に彷徨うより、村か町の人に助けを求めた方がいいよね」
「うん・・・・・」
二人は心細さを補うかのように寄り添いながら川縁を歩いた。時折切り立った地形によって回り道を余儀なくされる所もあったが、とにかく二人は川が頼みの綱と言わんばかりにその位置を確認し続けながらゆっくりとした移動を続けた。
彼女達はこの一件に関わるまではごく普通の、遊びたい盛りの少女であり、こう言った山岳行動の知識もなければ、追われる者の心構えなども持ち合わせていなかった。
そのため、現状における不自然さに全く気づく事ができなかったのである。
もし彼女達に、もう少し洞察力があれば、周囲が静かすぎる事に気づいた事だろう。川の流れる音の他に、あってしかるべきの虫や鳥などの声が全くしなかったのである。
これは、動物や虫が警戒している証拠であり、それが彼女達の周囲だけでないと言う事は、他に何者かが存在している事を示していた。
物陰から二人の少女を狙っている存在も、本物の狩人と言うわけではなかった。だからこそ気配を完全に断つ事ができず、鳥や虫の警戒を受けていたが、要はターゲットである少女達にさえ気づかれなければ良いのである。
そもそも、鬱蒼とした森に逃げ込んだ時点で追っ手はないと楽観視していた姉妹は警戒心そのものが欠落していたのである。
そのまま、何のトラブルにも遭遇しないまま、姉妹は獣道と言って差し支えない山道に辿り着き、そこからややして、小さな村にたどり着いた。
そこはかなり寂れた村で、藁じき屋根の、昔話の絵本に出てきそうな古すぎる造りの家しかない所であった。
「美緒!」
「うん!」
それでもこの姉妹にとっては、村の存在は遭難者におけるオアシスに匹敵した。二人は顔を綻ばせながら、手近な家へと駆け込んだ。
「ごめんください〜」
「すみません」
二人は扉を軽く叩いたつもりだった。
しかし人が住まなくなり、痛みが激しかった扉は脆くも崩れ、ここに人が住んでいないことを無言のまま証明して見せた。
「ひょっとして誰も住んでないのかな・・・・・・」
「どうしよう・・・・・」
これだけ不便な地理にある村である。廃村となっても当然であっただろう。せっかく見えた光明に影が差し込み、二人の表情は再び不安に曇った。
その時、また新たな光明がその視界に飛び込んだ。
「美緒!あれ!」
ぱっと輝いた目で美希が一方向を指さした。
そこは村の中程にある一軒の家で、造りは他と同様であった。ただ大きく異なる点として、その家の縁側から、微かに光が漏れ、煙が立ち上っているのが確認できたのである。
「人が住んでいる!」
人類以外に火を扱う動物がいない限り、この判断は正しいと言える。
姉妹はその家に向かって駆けだして行った。
「すみません」
「助けて下さい」
二人は同時に扉を叩いた。先程の事があったため、力加減がされていたが、その分を声の大きさで補った。
『誰だ、開いてるから入れ』
ぶっきらぼうな返事が家の中から返ってきた。反応自体は好意的とは思えなかったが、受け入れてもらえた事に姉妹は嬉しさを抑えきれず、自分の格好も忘れて家の中に飛び込んだ。
中は思った以上に暖かかった。意外にも電気が通っているらしく、電灯が室内を照らし、場違いなほど上質な空調機が室内の温湿度を快適に保っていた。その上何かを煮ているのか、土間に設置されていた釜に火がかけられ湯気を立てていた。
「あの、すみません・・・」
姉妹は室内を見渡し、住人を捜した。
『何の用かな?』
先程とはうって変わって、落ち着いた声が正面のついたての奥から聞こえた。
姉妹は自分達の状況をどう説明しようかと考えた挙げ句、端的に言って、相手の質問があれば答える手法を取ることにした。
「わ、私達逃げてきたんです。電話、ありませんか?」
『逃げてきた?あの上の変わった施設からだね』
声の主は、唐突な来訪者の突飛な発言に、一切の同様も見せずに受け答えた。
「御存知なんですか?」
「あそこは、あ、あの、Hな施設なんです。そこで無理矢理・・・・」
姉妹はとにかく事情を説明して保護してもらおうと必死だった。あまりに現実離れした出来事をどうやって説明するか、説明の言葉が上手く出ない間に、相手側が彼女らの言葉を遮った。
『知ってるよ・・・・関係者だからな』
その言葉と共に姿を現した家の住人を見て、姉妹は凍りついた。相手は見知った顔。あの施設の中で何度も見た顔がそこにあったのである。
「「い、いやぁぁぁぁっ!」」
恐怖にかられた姉妹が同時に逃げ出そうとしたが、今し方、彼女達が入ってきた扉の前には、既にもう一人の男が立っており、後ろ手に扉を閉めていた。
「いらっしゃい、嬢ちゃん達。せっかく来たんだたっぷりともてなしてあげよう」
姉妹は自分達に逃げ道が無いことを悟った。
「こちら三国、紹介ナンバー0036 桜井美希を確保」
「こちらは大崎、紹介ナンバー0037 桜井美緒を捕獲」
『はいはい了解。それじゃ、楽しんで』
無線に同時に入った報告に、影山は軽く受け答えた。
「楽しめ・・・・と言ってもなぁ」
「この二人か・・」
報告を終えた三国と大崎は互いに見やって、ため息をついた。
捕らえた獲物達が、くすぐりはおろか、快楽にも耐性・・・・と言うより重度の不感症状態である事は知られており、彼等も過去何度もこの姉妹を調教したのだが、大きな反応を得たことが無かったのである。
反応が第一とも言える彼等のお楽しみにとって、彼女達はハズレとも言える存在であった。
だが、本来の目的が逃亡者の捕獲であるため、見逃すわけも行かなかったため、山中で二人を見つけた際、その行動からこの村に向かっている事を予測し、先回りして避難所を兼ねたこの家で待ちかまえていたのである。
「やああああああああっ!!」
ヒステリーにも似た悲鳴を上げて姉妹は家屋の中を逃げまどった。
三国と大崎は、とにかく逃がさぬように二人を追いつめ、ほぼ同時に二人を背後から抱きかかえるようにして捕らえた。
美希も美緒もただの女学生であり、当然ながら武道の心得などない。それ故、捕らわれた際にはちょっとしたパニック状態となり、二人はまるで子供のように激しく手足をばたつかせ、男の腕から逃れようと抗った。
「こ、このっ・・・」
さしもの二人も、我を忘れて抗う二人の様相に辟易となった。
これでは下手な拉致誘拐と同じだ。そう思った大崎はどうすればいいかと迷い、無意識のうちに、捕らえている美緒の腹に位置している自分の指を蠢かせた。
これは良いポイントに女性の肌の感触があったための反射的な反応でもあった。
それが意外な結果をもたらした。
「きゃぁぁぁぁぁっっっ!やっ!!やっっははははははははははははははは!」
思いも寄らない反応。かなり重度の不感症とされていた美緒から、実によいくすぐりの反応が生じたのである。
「!?」
「お、おい?」
三国はおろか、実施者の大崎すらも自分の耳を疑った。
大崎は気を取り直し、改めて今の現象を検証すべく、再び指を蠢かせ、美緒の腹をくにくにとくすぐり回した。
「いやっいやぁっっははははははははははっははははは!あ〜っっははははははは!」
その刺激にも美緒は実に良い反応を示し、自分を捕らえている腕を引き剥がそうと、非力な腕で抗い、生じるくすぐったさに、身体を前のめりにして笑い苦しんだ。
「き、効くじゃないか」
嬉しい反応ではあったが、この事態は全くの予想外と言えた。
「じゃあ、こっちもか?」
大崎の腕の中で暴れ悶える少女を見て、三国も自分の腕の中の少女を見やる。
その言葉を耳にした美希は、全身に鳥肌が立つのを感じた。
「やっ、止めてお願い!」
美希はくすぐられるより早く藻掻いて、脱出を試みたが、やはり彼女の力では大崎の腕力から逃れることは適わなかった。
「やっ・・やっ・・・や〜っっっっははははっははっはあはあはあはっっははははあ!いやっははっははっははははははあっはははは!!」
美希もまた、三国の僅かな指の動きに敏感に反応した。がっしりと固定された腹周りで蠢く指をなんとかして止めさせようと必死に藻掻くが、暴れれば暴れるほど、指は違ったポイントに滑り込み、新たなくすぐったさを生じさせる結果となっていた。
「どうなってるんだ?」
驚いた表情で大崎に問いかけた。だが、問われた側も訳が分からないと言った表情で相方を見ていた。しかし、双方の腕の中で儚く笑い悶える少女二人の反応は、驚きこそすれ、決して好ましくない物ではなく、むしろ、歓迎すべき反応であった。
今まで不感症と評されたこの二人には、隠された秘密があった。
彼女達は双子である。双子にはある種の感覚の共有現象が生じると言う話は良く聞くことであった。一種のテレパシー現象という説ではあるが、まだ解明はされていない。
この二人の場合、その能力が更に変化した特性が生じていたのである。
それは、自分の感覚の放棄。つまりは、一方の意識・感覚が一方に同居するという、信じがたい現象がこの二人には発現するのである。
美希が責められている時、彼女の意識と感覚は遮断され、美緒のそれと共有される。逆に美緒が責められた時は、二人の意識と感覚は美希の身体に宿っており、その間、責められている身体は、生命活動のみが行われている人形のような物だったのである。
彼女達姉妹に対する調教は、一方が責められる様子を見せつけ、羞恥心を煽る方法をとっており、二人を同時に責めるという手法が用いられていなかった。
それはたまたまの事ではあったが、これによりこの姉妹は全くの不感症体質と言う偽の姿を演出することができたのである。
だがそれは、あくまで片方が無事である状況にのみ有効な方法であり、二人が同時に責められた場合、刺激に対する逃げ場所は存在しない。
今回は不意打ちを受けたせいで、意識を逃がす隙がなかった事もあり、あっさりとその本性を現したと言う訳である。
この特殊な逃げ道がなければ、この二人も年相応の敏感な肢体を持った少女なのである。
そうした事実を知りようもない三国と大崎ではあったが、この喜ばしい反応に対して拒絶する理由はなかった。
理由はどうあれ、楽しめる物は楽しむ!
そう言った結論に至り、二人はそれぞれが捕らえた少女に対する責めを開始した。
三国は無計画な暴行犯そのものの様相で暴れる美緒を組み敷くと、自分の身体を彼女の両股の上に置いて押さえつけ、抗う両手も捕らえて床に押さえつけた。
これにより相手の抵抗は抑えたものの、両手を使っていては肝心の責めを行使する事ができない状態ではあったが、彼には責める手がのこっていた。
三国は一旦、右手を離すと、自分の懐から探知機兼コントローラーを取り出した。
美緒は、自分の上にのしかかっている男が取り出したそれが、何なのかを本能的に理解し、青ざめた。
「それだめっ!やめてっ!」
彼女は一時的に自由になっていた左手で、コントローラーを奪おうとしたが、その手はあっさりとかわされ、虚しく空を漂った。
三国はそんな彼女の焦り様を、不適な笑みをうかべて眺めると、容赦なく起動スイッチを押した。
コントローラーとくすぐりコルセット。共に異常はなく、コントローラーは信号を発し、コルセットはそれを受信し、その機能を発揮した。
肌に接触した部分に設置された無数の突起物が小刻みな振動を発し、敏感な柔肌を刺激した。
「きゃはっ、きゃははははははははははははっ!いやっっははははははははははははは!!」
美緒は、腹回りに生じた刺激に対し、全く堪える事もなく、激しく笑い悶えた。
「い、いひゃ、いひゃっははははははははは!あ〜っははははは!」
そのたまらないくすぐったさに彼女は敏感に反応し、その身体は逃げ道を求めたが、三国はそれを許さず、その身体を押さえつけたため、ピクピクと弾ける身体が虚しく床を打つだけに止まった。
「いやっっははははははは!きゃぁああはははははははっははははは!やめて!やめて!!やはははははははははははは!」
「おい三国、急にコルセットを使うなよ!」
大崎が非難の声を上げた。今し方のリモコン操作は、彼が相手をしていた美緒のコルセットをも起動させ、笑い狂わせていたのである。コントローラーには対象の識別を行えるほどの機能が備わっていなかったため、有効範囲内にいた彼女のそれも起動してしまったのである。
それを想定して取り押さえていた三国と違い、完全に動きを征する前での出来事であったため、彼は悶えて振り回される美希の手足に辟易としていた。
「おっと、すまんすまん」
そう受け答えするものの、彼等は互いを見てはいなかった。どちらも腕の中にいる獲物に意識が集中している状態であった。
大崎はくすぐったさに耐えきれず床を転がる美希を何とか取り押さえて背後に回ると、彼女を羽交い締めにして腕の自由を奪った。
「ひぃやっはははははははははははははっ!はなっ、はなっ、離してぇ〜〜!!」
肩口をホールドされ、自由を失った彼女の両腕は自由な肘から上を虚しく振り乱して笑い悶え続けた。例え腕が自由であっても、コルセットのくすぐりを緩和させる事など適わない物ではあったが、刺激を受けている部分に手が届かないと言う状況は、実にもどかしく苦しいものであった。
「やはっ!やぁっはははははははははははははははは!!!!」
美希は苦しさのあまり、脚を激しく振り乱し、床を蹴り続けた。時折、レスリングのように反動をつけて仰け反ろうともしていたが、どの様にあばれようと、大崎の腕を解くことは適わなかった。
「もう少し大人しくしろ」
大崎はあまりに美希が暴れるのを見て、彼はその動きを封じるべく、自分の両脚を彼女の脚に絡めて脚の動きも封じ込めた。
それでも、彼女の悶えは止まる事を知らず、特に尻や腰はくすぐったさに反応して振り乱れ、密着状態にあった大崎の股間をズボン越しに刺激して、彼を興奮させた。
また一方で、三国に押さえ込まれ、その眼前で笑い悶える様子を惜しげもなく見せている美緒も、その艶やかさで相手を徐々に興奮状態へと、導いていた。
今まで不感症者として知れ渡り、調教師達の人気もなかった姉妹の乱れ狂う様相は、かなりの希少価値を得たと言える。
だがそれは、彼女達にしてみれば望むようなものではなく、ただ、余計な責めを引き込む要因でしかなかった。
さんざんくすぐりコルセットで悶える様子を堪能した二人は、姉妹が気を失う前にスイッチを切り、一時の休息を与えた。
三国と大崎は無造作に二人を解放したが、もはや二人に逃亡を企てる気力はなく、続いたくすぐりによって消耗した体力を回復するため、大きく喘ぐだけで手一杯であり、今、僅かながら逃げる機会があると考えつつも、身体は立つことはおろか、身を起こす事すらやっとという状態にあった。
その事情を見抜いていた三国と大崎は、次なる責めの準備に取りかかっていた。
用意されたのは箒などに使われる竹の棒に二人分の枷とロープ。それに鳥の羽であった。
それらに不具合がないかをチェックした二人は、いやらしい視線を姉妹に向けた。
また、いやらしい責めが行われる。そう悟り、この場を逃げたいと思う二人ではあったが、彼女達の身体は、そんな願いに即応することができなかった。
二人は再び姉妹に覆い被さると、リモコンを使用してコルセットの特殊金具を解除してはぎ取り、更にTシャツとパンティも強引に剥ぎ取った上で、両手足に革製の枷を装着させ、二人の両足首を用意していた竹棒の両端に繋げた。
これにより二人の両足は一本の棒により、肩幅よりやや広い間隔の位置で固定された。
そして、両手首の枷のフックを繋げ、手錠のように両手首を揃えさせると、二人まとめてロープを通し、天井に備え付けられた滑車で吊し上げた。
二人の脚は床に着いてはいたものの、背中合わせの格好のまま腕は天井に目一杯上げられ、脚は開かれた状態のまま、閉じることが許されない格好となり、全裸のまま『人』と言う字を全身で象った形にされていた。
二人は恥ずかしさのあまり、頬を染め、目にうっすらと涙を浮かべながらさらけ出された胸や股間を隠そうと足掻いたが、全て徒労に終わった。
「さて、お仕置きを再開しようか」
実に嬉しそうに大崎は言って、美希の前に立つと、三国は美緒の前に立ち、背中合わせにされた二人を挟み、全裸となったうら若き肢体を舐め回すように眺めた。
そして、たっぷりともったいつけて懐から出したのは、用意してあった二本の羽箒であった。
「「!!」」
姉妹には、それで何が行われるか、容易に察しがついた。
三国と大崎は、二人の表情の変化を見て満足感を憶えると、両手に羽箒を持ってそれをゆっくりと近づけていった。
「や・・・やぁ」
「・・・・うぅ・・」
想像しただけで身体がむずむずとする羽箒の接近に、二人は揃って身を震わせた。吊された身で逃げようがなく、身を捩り少しでも避けようと努力はするものの、自分の背後にいる姉妹も同様に足掻いていたため、その動きは相殺されてしまう結果となっていた。
「ほ〜ら、今までどうして感じなかったか知らないが、今回はたっぷりと悶えてもらうぞ〜」
「ひっ!」
ユラユラと先端を揺れる羽先が、腹回りに近づき、美緒は小さな悲鳴を上げた。久々にくすぐりコルセットから開放された事もあるためか、その表皮は敏感になり、近づく羽を見ただけでその腰は引けてしまった。
反応としては実に自然なものではあったが、今二人は背中合わせである。必然的に、反対側にいる美希の腹は、彼女の側に立っていた大崎の前に突き出される結果となった。
「おや?君は羽でくすぐられたいのかな?」
状況を知りつつ、わざと大崎が言うと。引く間も与えず両手に持った羽箒の先端で、突き出された腹を撫で回した。
「やはっ・・・やはぁぁぁ・・あっ、あっ、やははははははははははははは!!!」
快感とくすぐったさの入り混じった刺激を受け、美希は反射的に身をくねらせた。
と同時に三国も、美緒の腹から脇腹辺りを羽箒の全体を使って撫で回す。双方で異なった責め方ではあったが、どちらにとっても十二分に有効な刺激となって二人に襲いかかった。
「ああああぁ〜〜〜〜〜〜っっはははははははははは!やははははははは!」
「きゃははははははは!いやっははは!あはっやはっやぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」
二人は揃って笑い声を張り上げると、いやいやと身体を捩って羽の刺激を避けようと藻掻くが、姉妹揃って手足首を固定されていては、その動きすら満足にできる状態ではなかった。
そうした、身体の振りすら満足にできない二人の身体を、羽は遠慮なく這い回り、くすぐったさと、誘い込むような微弱な快感を与え続けた。
羽の刺激は実に微妙であり、ポイントによってはくすぐったさと快感、両方の刺激を与える事が可能な物であり、羽くすぐりによって「くすぐり」を「快感」と認識する者は意外と多かった。
三国と大崎は手慣れた力加減によって、それを調節し、どっちつかずの刺激を与え続けていた。
「やはぁぁぁ・・・あっあはははっははあははははは・・やっ、やぁん」
「んんん〜〜〜〜〜っっっくくくくく・・・くひひひっひっひっっひひひひ・・・」
もともと、身体的特徴さえなければ、施設に送り込む必要のない感度を持っていた二人に、調教師である彼等の責めに耐えられる程の精神力もなく、良いように翻弄され続け、責める側を楽しませた。
三国も大崎も、羽の一撫でごとに敏感に反応する若々しい裸体を眺める事ができ、自分達の幸運を素直に喜んだ。
羽の動きは、縦横無尽に身体を行き来して、彼女達を笑わせ、時には悶えさえながら徐々に肉体と精神の抵抗を剥ぎ取りつつ、ソフトな刺激によって身体を敏感にさせていった。
彼女達も、自分の身体が羽の刺激に対して過敏になっている事を実感し、それが自分達をいけない世界へ誘っている事を理解した。
逃げようのない状況で、何とかしないとと言う焦燥感も徐々に空回りを始め、彼女達の肉体は徐々に刺激を求める方向へと傾斜し始めて行った。
「やはっ・・あっ・・はぁぁぁぁぁ・・・・・」
「ふふ、何だか反応が色っぽくなってきたみたいだな」
美希の反応を目敏く察知した大崎が、羽の動きを休めることなく言った。
「こっちもだぜ、羽の刺激が気に入ったみたいで、小刻みに震えてる」
「ちっ違っ!」
「う、嘘よ!」
羞恥に頬を染めて二人は否定したが、そんな言葉を相手は信じなかった。
「そうは言っても、ここはもっとしてって言ってるみたいだが〜?」
そう言って三国は、刺激によって隆起し始めていた美緒の胸の先端を羽の先で軽く撫で、大崎も羽の柄の方から先端と、腹部分全体を使ってゆっくりと擦った。
「「はっ!はあぁぁぁぁっ!」」
今まで刺激を受けていなかった敏感なポイントに対する不意打ちを受けて、二人はたまらず喘ぎ声をあげた。
今までの刺激を上回る快感が彼女達を襲い、脚がガクガクと震える。
本来なら脱力していたところであるが、吊された身は、例え脚に力が入らなくても、その姿勢を維持したままであった。
「ん〜言い声だ」
「欲情している女の声だな」
三国と大崎は満足そうに頷くと、手に持った羽箒を握り直し、そっと二人の首筋を撫で上げた。
「もっともっと、よがらせてやるからな」
「快楽の鎖で、二度と逃げられないようにしてやるよ」
その宣言と共に、二人の羽責めが更に激しさを増した。
それは先程のような、快楽とくすぐったさを交えた物ではなく、快楽を優先した動きへと変化していた。
美緒を責める三国は、主に上半身に羽を這わせていた。
まだ完全に成熟していない胸の周囲を羽先でなぞり、時折、胸の縁から渦を描くような動きで頂点を目指してゆっくりと蠢いた。
だが、最も感じる乳首に達しようとする寸前、羽はコースを変え乳房の方へと戻っていく。
これに美緒がもどかしさを感じたかと思うと、いきなり羽が乳首を捉えて延々と擦り続け、堪えようのない快感を与えて彼女を乱れさせる。
「やはぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜い、い・・・あぁぁん」
快楽に呑まれ始めた美緒は、思わず口から漏れそうになった拒絶の言葉を呑み込んで、喘ぎ声をもらす。
ここで拒絶し、意地悪く本当に刺激を止められ、焦らされるのを嫌った、彼女の『女』がそうさせたのである。
もともと快楽などに対する経験が不足している彼女に、この責めが耐えられるわけもなく、甘美な感覚の誘惑に彼女は徐々に呑まれていった。
当然それは姉妹の美希にも言える事であった。
彼女は美緒とは異なり、下半身を重点的に責められていた。
大崎は羽先を器用に立てて、触れるか触れないかのタッチで下腹部から脚の付け根辺りを刺激し続けていた。
そのソフトタッチは実に弱々しい刺激ではあったが、美希に与える影響は絶大で、彼女はその一撫でごとに、痙攣したような身震いを見せ、自分が感じてしまっていることを体現していた。
特にパンティラインに近い脚の付け根を撫でられた時の反応は良く、何度行っても、可愛らしく、それでいて色っぽさを含ませた吐息を漏らしていた。
「はぁん・・・・・・ぁん・・・・あっ・・・・はぁぁん」
美希は絶え間なく加えられる刺激に喘ぎながら身悶えた。その刺激が自分を墜とそうとしていることは判っていたが、拒む意志より、快楽を求める感情の方が勝りつつあるのが現状であった。
その最たる原因は、執拗に蠢く羽先が、行動範囲内にある最も敏感なポイントに一切触れず、あと一歩という所で引き返してはまたゆっくりと近づくと言う行動を繰り返し、焦らしていた事にあった。
それによる焦燥感が彼女に快感を要求させ、徐々に意識を支配しようとしていたのである。
施設に収監されていたため、その刺激に屈した先に何があるのか、それを知っているが為に、理性は必死に抵抗を促していたが、快楽という欲望を刺激されている身体は今にも屈しそうになり、股間からあふれ出す液体が内股を伝った。
「ふふ・・・・もう限界かな」
「はぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
美希は切ない悲鳴を上げながら、自分を誘い込もうとする刺激を振り払おうと、小刻みに腰を振る。しかしそんな抵抗も弱々しく、傍目からは逆に刺激を求めてるかの様にも見えた。
「ほ〜ら、素直になって快楽に身を委ねな・・・そうすれば楽になるぞ」
それは、大崎達への従属の第一歩を踏めと言う宣言とも言えた。
「ぃ・・・いやぁ」
美希は拒絶したが、その口調は実にか細く、耳元で同じ事を囁かれながら、下腹部の陰毛を羽でなぞられると、拒絶の言葉もかき消えた。
美希は何度も首を振っていたが、股間から滴る液は止まる様子を見せなかった。
彼女の抵抗は、拒絶の意志表示ではなく、まとわりつくような危険な快楽を振り払おうとしているのだという事を大崎は見抜いた。
「ここまで来たら抵抗は無意味だよ」
言って彼は、美希を焦らしていた羽先を、先程のように触れるか触れないかのタッチで、今一番刺激を欲していた、股間の最も敏感な部分を撫で上げた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!」
その接触は一瞬のものであったが、美希にとっては今までにない強烈な刺激となって、身体を突き抜けた。待ちに待った快感に脚は震え、体重を支えきれなくなっていたが、脱力した分を、吊し上げのロープがカバーし、身体が床にへたり込むのを支えていた。
その見事な反応は、責め側を満足させるに十分であり、大崎は股間に対する責めを重点的に行った。
十分に滴っている股間周辺を羽で撫で回し、十分に焦らした後、敏感な部分にほんの一瞬の接触を行う。かと思うと、両方の羽で敏感な部分を徹底的に撫で回すと言った行為を不規則に続け、思考するゆとりさえ与えない勢いで責め続けた。
美希は大きく仰け反り、言葉もろくに出せないまま悶絶し続けた。ただ、断続的に襲いかかる快楽の波に流され、翻弄されるままとなっていた。
その限界寸前の状況は美緒にも訪れていたが、この時この姉妹の間には、双子にあるとされる感覚の共有現象が生じていた。
もともと、感覚の放棄という特殊な現象が生じる彼女達である。共有現象が生じてもおかしくはなかった。
だが、今の状況での感覚の共有は、二人にとって過酷としか言いようがなかった。
今、彼女達は一方で上半身、一方で下半身を重点的に責められており、その感覚が共有されると言う事は、ほぼ全身を徹底的に責められていることと同じであった。
彼女達の早い感情の高まりと過敏すぎる反応は、この現象が起因となっていたのである。
もちろん、三国達はそんな事情など知りようがなかったため、その行為に二人ががりで一人を責めていると言う認識がないため、手加減がなかった。
その結果、彼女達は急速に快楽に呑まれてしまったのである。本来なら、絶頂に達するタイミングを計り知る事の出来る三国達も、さすがに双方の性感も受信している姉妹の絶頂タイミングは計りようがなかった。
「いやぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っ!!」
「もうだめ!だめぇ〜〜〜〜〜〜!!」
二人は一際高い悲鳴を上げながら、身体を激しく痙攣させると、激しい快感に絶頂し、がっくりと項垂れた。吊された体勢ゆえに、倒れる事はなかったが、首はだらりと垂れ下がり、股間から滴った液体が汗と入り混じって、床に小さな水溜まりを作っていた。
「・・・・・な、何だ」
「・・・・・・」
三国と大崎は信じられないと言う表情で、動かなくなった姉妹と相棒を見た。
自分達が、絶頂を遮るタイミングを見誤った事だけが原因ではない。その絶頂に達する行程に今までにない違和感を感じたのが原因であったが、その正体を彼等が知る事はない。
これが調教であれば失敗と言えたが、幸いにしてこれは許されたお楽しみであり、本人達が楽しめれば問題はなかった。
時間的には短く、責める側にしてみれば、やや不完全燃焼と言えなくもなかったが、今まで全く反応がなかったこの姉妹を存分に悶えさせたという事実は、結果以上の満足感を二人に与えていた。
この事実を伝えれば、他の同僚を驚かせる事もでき、一種の優越感も得ることができる。
その上、これがきっかけで二人の調教が進めば、彼等の評価にも影響があり、お楽しみ以外の報酬も得たことになる。
「結構・・・意外だったな。まるっきりの素人女同然の反応だったな」
「ああ、これなら、ここに連れて来る必要すらない」
「環境なのか責め方なのか・・・」
「ともかく、この事は報告しておいた方がいいな」
「ああ」
二人は気を失った姉妹に視線を戻すと、頷き合った。
「さて、もう少し楽しみたいところだが、戻る時間を考慮すると、そろそろ・・・だよな」
三国は空の様子を伺って相棒の同意を求めた。
基本的に彼等の施設以外は未開の地であるため、陽が傾き始めると、暗くなるのは意外と早く、一旦森が闇に包まれれば、彼等とて帰り着くのが極端に遅くなる。
「ああ、物足りない気もするが、捕まえられずに森を彷徨った連中に比べればラッキーだったよな」
大崎もその意見には同意しながら、今回の唐突に得た運を喜んだ。
「そうだな、そう考えれば俺達は幸運だ。それに・・・・」
「それに?」
「帰る道中でも楽しめる方法もある」
三国は意味ありげに笑みを浮かべて、床に放置していたくすぐりコルセットを拾い上げた。
「ん・・・・・・」
激しい快楽に気を失った姉妹が目を覚ましたのは、しばらくしての事だった。
これも双子故か、目覚めるタイミングも一致していた。
目を覚ました時、彼女達は大崎と三国に背負われていた。
「!」
驚き、身を起こそうとする美希であったが、それは適わなかった。
彼女の手が、右手が相手の肩から、そして左手が脇から回された形で相手の胸前で交差され、縛られていたのである。
いわば背中から抱きつくような状態で固定され、男の背に押しつけられた胸を離すことすらできない状態であった。
更に三国達の趣味なのであろう。彼女達はノーブラのまま、彼等は上半身裸で、直に胸が背中に当たる感触を味わえるようにしていたのである。
「気がついたか」
離れようとして彼女が身体を動かしたことにより、覚醒を感じ取った大崎が、首を傾け背負った相手に言った。
「い、一体何を・・・」
まさか背負われてるとは思いもよらなかった美希は不安げに問いながら周囲を見回した。
その光景に、彼女は見覚えがあった。廃村に辿り着く寸前の山道。すなわち、いたぶられていた家から遠くない位置であった。
「なに、ただ施設に戻るだけさ。こうして縛って固定しているのも、逃げださないための配慮さ」
大崎はわざと身体を揺らして見せて、彼女が抱きついた格好のまま、離れられない事を改めて実感させた。
「そんな・・・・捕まった以上、逃げられるわけ・・・・・」
「いいや、絶対に逃げようと足掻くのは分かっている。何しろお仕置きしながらの帰路だからな」
美緒の呟きを否定した三国は、そう言って含み笑いをすると、彼女の視界に見えるようにとある物を掲げて見せた。
「「!!」」
それを見て、美緒はおろか美希も顔色を変える。
それは忌まわしきくすぐりコルセットの操作リモコンであった。
二人は慌てて自分の身体に視線を向ける。そしてコルセットが元通り装着されている事に気づいた。
「やめてっ!それはっ!!」
美緒はたまらず眼前のリモコンを奪おうとしたが、拘束した腕を虚しく蠢かすだけに止まった。
そんな動揺の様子を嬉しく思った大崎は、彼女らの見える前で、リモコンのスイッチを無慈悲に、そしてゆっくり押した。
「ひっひっ、ひゃぁ〜〜〜〜〜ああああっははははははははっはははははははははは!!」
「いやっははははははははは!きゃっっははははははっはははいや〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ」
たちまち男達の背にいる姉妹は笑い悶え、激しく身を揺らした。
コルセット内の突起は的確に彼女達の柔肌を刺激し、耐えようのないくすぐったさを与えて笑い狂わせる。
「あはっあはっ、あはははははははははは!!もうもう、いやぁ〜〜〜!」
「ひひゃはははは、いひゃはははは、あ〜っっははははっはあっっはははっはは!」
手で腹を抱える事すら許されない彼女達は、狂ったように悶えたが、それでも密着状態から開放される事は適わず、逆に暴れる度に胸が三国達の背を刺激し、彼等を楽しませる結果となった。
「さて、この状態で施設まで戻るからな。それまではそのコルセットは止まらない」
「ここまで逃げてきた事、そのものがお前達の罰の度合いと言う事だ」
「そんな、そんな、いや〜っあああははははははははははははははは!!!!!」
二人は少しでも開放されたい一心で全身を激しく捩らせた。しかし上半身は腕を固定されている上に、下半身は彼等の腕によりがっしりと固定されているため、脱出は適わない。
更には、彼等の手は無防備な尻をいやらしい手つきで撫で回し、時折、股間の敏感な部分へも刺激を加え、激しいくすぐったさの中に、微妙な快楽を加えていた。
結局、美希・美緒の姉妹は、わざと遠回りをされた挙げ句、くすぐりコルセットと股間への快楽責めの同時攻撃を続け、数度の焦らし責めと絶頂、そして気絶を繰り返し、施設に戻る頃には、くすぐり奴隷としてほとんど完成に近い状態になっていたという。
−そして影山−
「影山さん、脱走者、追撃者、全員戻りました」
捕獲され、さんざん嬲られ、疲労困憊となった三人の逃亡者を三階の個室へ軟禁したのを確認してきた北田が会議室に戻り、最終報告を行った。
「ああ、見てたよ」
呆けて外を眺めていた影山が、今は電源が切れているモニターを指差し、言った。
「勝者連中は満足してたか?」
「ええ、それはもう・・・・」
それは決して世辞ではなかった。
全く変化のない環境で、決められた行程しか実施できない調教師にとって、今回の騒動は予想以上に気分転換になった事は、北田にも実感できた事だった。
「なら、ここまで来た甲斐があったって事だ」
影山は視線を北田に戻すと、はにかんだ笑みを浮かべた。
「来た甲斐って・・・・本来の仕事は、ここの施設の設備点検だけのはずじゃ・・・・」
「そうだけど、ここまで遠方に出て、それだけじゃつまらないじゃないか」
「つまらない・・・・って・・・・」
(だからといって、あんな騒動を起こすのも・・・・)
この辺りが彼の思考の特異ささのだろうと言う事を、彼は実感した。
「ともあれ、事態が無事に終了したなら、こっちもそろそろ帰るよ」
点検そのものは、彼の熱心な働きにより早々に終わっており、後は今回のイベントの監視役として従事していた。
思えば、彼の最初の勤勉さは、その為に仕事を早く済ませるための行為だったのである。
「そうですか・・・・」
その影山の予定が実施できない事を知る北田は、そう言う他なかった。
そうして彼が会議室を出ようとした時、タイミング良く、北田の秘書が電話の子機を手にやって来た。
「水沢様からです」
そう言って秘書は子機を影山に差し出した。
「俺?」
言って彼は子機を受け取った。
「もしもし」
『おう、『イベント』は問題なかったようだな』
既に事情を知っているようで、水沢の言葉は断言したものとなっていた。
「ええ、ただ、予定していたより逃亡成功者が少なかったんで、かなり競争率が高かったですけどね」
『そう簡単に逃げられても困るんだよ。それより本来の仕事は終わってるんだろうな?』
「もちろんですよ。イベントがしたい一心で、真面目に働いて済ませました」
『そりゃ良かった。その珍しい勤勉さを、後、数時間持続してくれ』
「は?」
唐突な言いように、影山は呆けた声をあげた。
『そこから数十キロ離れた山中に、とある学園があってな、そこでマシンの発注があったんで、設置に向かってくれ』
「は?」
『間もなくしたら資材を積んだヘリが到着するはずだから合流して現地に向かってくれ』
「あ、あのちょっと・・・こっちは車で来てるんですけど・・・・」
もう手続すら済ましているような事の運びに、影山は少し狼狽えた。
『学園の設置が終わったら、また戻ってくれば良いじゃないか』
「いや・・・そうすると、山中真っ暗になると思うんですけど・・・・・・」
はっきり言って道に迷う可能性もあり、帰路は更に遅くなる事が予想される。
『別に後日、急ぎの用事もないんだろ?今やる気がある内にやってくれ』
「やってくれって・・・・状況とか全く聞いてませんよ」
『ヘリに資料がある。移動中に読め。緊急の内容はFAXで送る。技術者の中では、お前が一番近いんだ。諦めて仕事しろ』
それを最後に電話は一方的に切れた。こうなると交渉の余地はない。どうあっても彼に仕事が押しつけられる事は明白であった。
「お気の毒です」
既に北田は事態を知っていたようで、何が起きたかを問う事はしなかった。
「聞いてたのか?」
「下に行っていた時、先に状況確認の連絡がありまして、その際に・・・・・」
「帰れるの、明日の晩だな・・・」
がっくりと肩を落として影山は呟いた。
「たまに仕事を真面目にすると、雪崩式に忙しくなっちまう」
(半分は趣味だったはずです)
どう言った事情かは知らないが、こんな山中から更に山中へと移動し、あまつさえ一旦ここへ戻らなければならなくなった彼の状況に、北田は大いに同情しつつも、彼の発言の一部を否定した。
結局、指令には逆らえなかった影山は、遠く離れた山中の、とある学園に発注されたくすぐりマシン設置を済ませた後、再びこの施設に戻った挙げ句、車で山中を突っ切りながら、当初予定していたガラス工芸展での買い物も行った後、館へと帰り着いたという。
その翌日、彼が自主休日を行ったのは、余談である。
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