ナンシーの悲劇 |
ナンシーはぼんやりと目を開けた。 自分の部屋の天井ではない。ベッドではなく、何か固いものの上に寝かされている。 自分がなぜこんな場所にいるのか、一瞬分からなかった。 必死で頭を回転させ、ようやく思いだした。 ――そうだ。あたし、学校から帰る途中で、気がついたらここにいたんだわ。そして…… ナンシーは慌てて身体を動かしてみた。 さきほどまで大きく広げられたまま拘束されていた腕は、今は逆に腋の下にぴったりと密着したまま、広げる事ができない。胴体と共に服の中にすっぽりと収まっているのだ。 その服は、さきほどまで着ていた制服ではない。真っ白で丈夫な布でできたその服は飾り気がまったくない殺風景なもので、おまけに腕を通す穴や袖さえもないのだ。確かに制服には違いないのであろうが、それは学校の制服ではなく刑務所の制服、いわゆる拘束衣と呼ばれるものだ。 それでも上半身はさきほどよりは自由に動かせる事ができる。しかも、この状態では少なくとも腋の下を攻撃される事はなさそうだ。 しかし、さきほどまで足首しか固定されていなかった脚の方には膝にも金属の拘束具が追加されており、全く動かす事ができなくなっていた。 「あっ目覚めたぞ!」 聞き覚えのある声に、ナンシーはどきっとした。これから自分が何をされるのかという事に、瞬時に思い至ったからだ。 さきほど足の裏に施された男たちの悪戯の激しい刺激を思い出したナンシーは、思わず身震いしてしまう。 身を捩りながら腹筋を使ってなんとか上半身を起こす。 大きく広げれた足の前にはさきほどの3人のニヤけた顔があった。 その時、ナンシーは自分が想像していたよりもさらに悪い状況である事を知った。 さきほど悪戯された時その刺激をわずかながら和らげていてくれたであろう靴下が、両足とも脱がされ、素足になっている。 さらに、ナンシーの大きく開かれた足の間には、筆やヘアブラシ、歯ブラシ、タワシ、そして細いマジックなどがずらりと並べられている。 さきほどは靴下の上からでもくすぐりに慣れることなく2時間もくすぐられ失神させられたのだ。そのあまりにも敏感な部分を、あのずらりと並んだアイテムで集中してくすぐられたらたまらない。それも靴下の上からでなく直接……。 その想像が間違いであって欲しいとナンシーは願った。しかし、正解であった。 リーゼントの男が歯ブラシで右足をもう一人が筆で左足をくすぐりだした。 「アーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハーお願いだからやめて〜ギャーハハハハハハハハハハハハハー」 素足のくすぐりはナンシーには耐え難い物だった。広げられた指の間を執拗に這いまわったかと思うと、土踏まずへと移動し、再び指全体を撫で回す。 その予測不可能な動きのもたらす刺激に、ナンシーは激しい笑い声を上げながら上半身をのたうち回す。しかし、いくらもがいても、足の裏への執ような悪戯から逃れる事はできない。 その悪戯がどれくらい続いただろうか。 実際には数分程度なのかもしれないが、ナンシーには何十分にも感じられた。 リーゼントのくすぐりが中断された。 耐えがたい悪戯から解放され息を弾ませるナンシーの耳許で、パンチパーマの男が囁く。 「二度と正義感ぶった行動はとらないと誓って俺達に誠心誠意を尽くして謝ればゆるしてやる」 それはあまりに理不尽な条件だった。悪い事をしていたのは奴らなのだ。本来なら奴らはとっくに警察に掴まっていて然るべきなのだ。 「何で私があんたらみたいな変態に謝らないとだめなのさ〜さっさとほどいてお前らが謝れ!」 ナンシーは思わず叫んでしまっていた。 「ふふっ、残念だな。せっかく許してもらえるチャンスだったのに。それとも、もっとしてほしかったのかな?」 止まっていたくすぐりが再開された。 今度は両足をヘアーブラシで激しくこすってきた。 「ギャーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハーやめーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハー」 ヘアーブラシの何本ものプラスチックの細い棒が、ナンシーの足の裏をなぞる。その一つ一つの刺激が、ナンシーの刺激を狂わせる。 このままでは気が狂う、とナンシーは思った。 この狂おしい刺激の嵐から逃れるためには、とりあえず謝っておくしかなさそうだった。そして、許してもらった後でこっそり警察へでも相談しよう。 「きゃはははぁ、分かった、謝る、謝るから、もう二度と正義感ぶった行動はとらないから」 しかし、その言葉も今となっては遅すぎた。 「ふふふふ、遅かったな。俺達は今、お前の笑い悶える姿に夢中なんだよ」 リーゼントの男の持つヘアブラシの動きはますます激しさを増していく。 パンチパーマとスポーツ刈りも別なヘアブラシを持ち、ナンシーのもう片方の足に妖しくも耐えがたいマッサージを施した。 敏感な足の裏の猛烈な刺激の嵐についに耐え切れず、ナンシーは身を顫わせながら甲高い悲鳴を上げ、その後ぐったりと動かなくなった。 その安らかな寝顔に、男たちは容赦なくバケツの水をかける。 ナンシーは再び目を開け、ずぶぬれになった髪を振り乱し、わめき散らす。 男たちは、そんなわめき声など聞こえないといった態度で、ナンシーの両足にローションを塗たくった。 ローションに濡れたたいくつもの手の指が、ナンシーの足をぬるぬると撫で回す。その刺激は乾いている時よりも何倍も耐えがたいものだった。その刺激から逃れようと、足が勝手にくねり、暴れる。しかし、足枷はその足を決して男たちの指から逃れさせる事はなく、男たちの指はさらに激しくナンシーの足を責めなぶる。 ナンシーのわめき声がたちまち甲高い笑い声に変わる。 指による悪戯をひとしきり楽しんだ男たちは、台の上から再びヘアブラシを取り上げた。無数のプラスティックの細い突起がローションで濡れそぼった足の裏を滑らかに滑る。刺激の嵐が足の裏に注ぎ込まれ、激しく暴れ回り、ナンシーの理性を砕いていく。 激しい笑い声に活気付いたかのように、ヘアブラシの動きは次第に激しさを増していく。その刺激に耐え切れず、ナンシーは甲高い笑い声を上げながら気を失ってしまった。 すかさず水をかけられて起こされたナンシーは、足の裏にペンで字書かれた。ペンの刺激から必死に気をそらす。しかしそれを長く続ける事はできなかった。 「何て書いたか当てたら許してやる。当てられなかったらお仕置きだ」 男たちの一人にそう言われたナンシーは、「お仕置き」をまぬがれる為、ペンの動きのもたらす妖しく耐え難い刺激に必死に意識を集中しなければならなかった。しかし、意識を集中すればするほど、くすぐったさに気が狂いそうになる。 結局当てる事ができなかったナンシーは、お仕置きと称して石鹸でヌルヌルにされた足の裏をタワシで死ぬほどくすぐられ、またも気を失った。 そして次に目覚めた時には 「お願いですからゆるして下さい」 と、狂ったように懇願していた。もはや彼女の正義感もプライドも、度重なる妖しい悪戯に粉々に砕けてしまっていた。 「よし、いいだろう」 リーゼントの言葉に、ナンシーはほっとした。 彼はポケットからバターの箱を取り出した。 「おわびのしるしに、これをごちそうしてあげよう」 男は箱の蓋を開けると、手で中味をかき出し、ナンシーの足の裏にたっぷりと塗りつけた。 「ちょっと、何するんですか」 「何って、これをごちそうしてやるんだよ。あいつらにな」 男は部屋の隅を指さした。そこにはいつの間にか小柄な犬が2匹、尻尾を振りながら立っていた。 「誰かが見つけてくれるまで悶え苦しめ」 リーゼントのその言葉を残し、男たちは部屋から出て行った。 2匹の犬は台に近づくと、身軽にジャンプして上に上がった。そして、それぞれナンシーの足の裏の前に立つと、舌を出してペロペロと舐め始めた。 「だめぇ、お願い、やめて、きゃはははははは」 犬の舌の狂おしい感触に、ナンシーはたまらず大声で笑い始めた。しかし、おいしいエサにあり着いた2匹の犬が、ナンシーのお願いを聞き入れるはずはなかった。 その後犬は5時間ほどナンシーの足の裏をなめまわし続け、部屋の中に甲高い笑い声が響き続けた。
ナンシーは再び目を開けた。いつの間にかまた気を失ってしまったらしい。 終わり |
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