水風船作品

MOTOKA

第18章
今日も素香が出てくる夢を見た。
どこかの高原のキャンプ場の草原で、素香のことを追いかけていた。素香ったらズルくて、わたしが追いつきそうになると、一瞬地面から浮き上がって、スッっと先に逃げちゃう。まるで小さな羽根が、背中に生えているみたいだった。
白いスニーカーを履いて、走ってゆく素香のうしろ姿。白い短パンのお尻と、黄色いTシャツの素香の背中。わたしに捕まりそうになると、Tシャツの背中の肩甲骨のあたりが急に盛り上がって、どうやら中で小さな羽根がパタパタと動いているみたいで、地面から少しだけフワッと浮き上がって逃げてしまう。それでもわたしは必死に素香のことを追いかけた。息が切れて、足がもつれそうになりながら、一生懸命追いかけた。
いくら追いかけても素香に追いつかないので、わたしは半ベソをかいて「素香、まってよー」と、走りながら叫んでいた。
キャンプ場から随分離れたところまで来ると、5メートルくらい先を走っていた素香が急に止まった。くるっと振り返ると、
「ねえねえ、あそこに秘密基地があるの」
と言って、右の方の、背の高い草が生い茂っている場所を指差した。
「行ってみる?」
わたしは、その草の密集しているところまで、素香の後をついて歩いて行った。 目の前の黄色いTシャツの、さっきパタパタしていた背中の部分がずっと気になっていたけれど、何故だかその事を聞く事が出来なかった。



*   *   *   *   *


Dearest MOTOKA
(↑フランス語だと、どう書くのかわかんないから英語ネ)
元気ですか?
こっちは、まあ、何とかやってます。
高校生活にも、少しずつなれてきました。
4月に急にパリに引っ越すっことになったって電話で聞いたときは、本当にショックで、何も考えられなかったよ。
でもあの後、2人でちゃんと会えてよかったです。
(泣いたりしちゃって、ゴメンナサイ)
何だかここ3週間くらい、ずっとショックから立ち直れなかった。
こんな事、うまれてはじめて。
(、、、っていっても別に素香のせいじゃないからね、責任感じないでね!)

そうそう、高校になってクラスがひとつふえたんだけど、
わたしと麻依は同じクラスでした(1-C)
カヨは1-A、
ちがうクラスになっちゃったけど、カヨとはメールで連絡とってます。

何だかカヨんちのパーティーが、スゴクスゴク昔の事のような気がする。
でも、あの日はとにかく面白かった。
夜中までみんなで大騒ぎだったね!
でもやっぱり素香はすごかったよ。
(おかげで、うちのチームが勝って素香たちをイタズラしちゃう、ってゆーオイシイ(?)計画が台無しになっちゃったけど!)

先の話だけど、夏休みは何とかフランスへ遊びに行けるようにしたいと思ってます。
(ガンバってバイトするぞー)
今日も夢に素香が出てきたよ!中身はナイショ、ヘヘヘ。

会いたい。すごく会いたいよ。

じゃあまたネ。

2002.5.6  優里




−−完−−

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