小説作品紹介

マリア様がみてる
レディ、GO!/ハロー グッバイ

 「一般ライトノベルの百合作品は、この作品を抜きに語る事はできない」と思えるほどの人気を誇る小説で、コミックやテレビアニメにもなっています。最近百合なテレビアニメが多少なりとも作られるようになっているのも、この作品があったからこそかもしれません。

 舞台は名門お嬢様学園である、私立リリアン女学園。
 その高等部には、ある特殊な制度が存在します。それは、先輩が後輩にロザリオを渡す事によって擬似姉妹関係を結び、姉が妹を導くがごとく先輩が後輩を指導する、「スール(姉妹)制度」と呼ばれる物です。
 また、高等部の生徒会は「山百合会」と呼ばれ、それを運営するのは薔薇様と呼ばれる三人の幹部。そして薔薇様方の「妹」は「つぼみ(ブゥトン)」と呼ばれ、次に咲く薔薇として周りから認められています。
 ある日、主人公である福沢祐巳ちゃんは、生徒たちの憧れの的である紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)こと小笠原祥子さまに突然声をかけられた事をきっかけに、山百合会に関わる事になります。そして、彼女が祥子さまの「妹」になるまでの過程を通して、山百合会やその周辺に渦巻く複雑な人間関係が描かれているのが、サブタイトルなしの初巻です。
 それ以降も次々と続篇が書かれ、2006年6月現在、初巻を含めて23冊も続いています。

 少し前までは、「百合」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、「女の子同士の、男など入る隙のないほど濃密なラブシーン」であったりして、その特殊性からか、背徳的なイメージが多少なりともつきまとっていたわけですが、「マリみて」で描かれている世界は、そのようなイメージとは全く無縁の、文字どおり清らかな乙女の園だったりするわけです。
 「マリみて」には、様々な「姉妹」が登場するわけですが、「姉」と「妹」の出会いは様々、「姉妹」になった理由や過程も様々、そして、彼女達が相手に抱く感情も様々、というわけで、女の子同士のそのような様々な人間関係が一つ一つ丁寧に描かれている所もまた、国民的人気の理由の一つなのではないかと思います。
 ちなみに、現在放送されている百合アニメはどうかというと……女の子同士でしっかりと、あんな事はこんな事をしてたりします。もちろん一般向けなので、あまり過激な描写はありませんが。一度は払拭された概念も、何らかの条件が整えば再び復活するという事でしょうか。

 さて、今回紹介するサブタイトル「レディ、GO!」は「マリみて」の15冊目で、P206にくすぐりシーンがあります。ただし、たったの2行。
 その内容とは、2年生になった祐巳ちゃんが、後輩の女の子から秘密を聞き出す為の、いわゆる「くすぐり拷問」だったりします。どの程度の時間、どんなふうにくすぐられたのか、といった詳しい事は書かれていません。

 今「くすぐり」と聞くと、やはり多くの人々は「くすぐり拷問」を思い浮かべるわけで、その犯罪的な響きの為に、このような作品の中で事細かに描写するといった事はできないのかもしれません。
 それでは、今後様々な作品にくすぐりシーンが登場し、それらがリアルに表現される為には、何が必要なのか。もしかしたら、そのヒントが「マリみて」シリーズには隠されているのかも知れません。

 ちなみに、2巻後の「チャオ ソレッラ!」では、海外へ修学旅行に行くリリアンの生徒たちの体験するトイレのお話などが多く書かれています。
 もちろん、トイレ我慢の場面もあるわけなのですが、残念ながら大きい方なのか小さい方なのか分かりません。
 外国のトイレがどうなっているかを知りたい方には、こちらもお薦めです。

(2006/6/1)

 ……というのが「レディ、GO!」のくすぐりシーンだったのですが、「マリア様がみてる」シリーズはその後も新刊が発行され、2012年3月現在、アニメ版を紹介した「プレミアムブック」とシリーズの表紙や雑誌掲載のイラスト等を集めた画集である「イラストコレクション」を含めて「ステップ」までの38冊が発行されております。
 その中で今回紹介するのは、主人公の福沢祐巳ちゃんのお姉様である小笠原祥子さまの卒業式の模様を描いた「ハロー グッバイ」で、シリーズ35冊目となります。

 卒業式が終わった後、マリア像の前で待ち合わせをしていた祐巳ちゃんの同級生である島津由乃と中等部の卒業生である有馬菜々ちゃん。
 由乃は菜々にロザリオを渡して妹にするつもりだったのですが、「私の妹になってください」というという由乃の言葉に対して菜々が少々分かりにくい答え方をしたために、話は決裂寸前に。
 そこへ居合わせていた、由乃の姉である支倉令さまは、由乃の脇の下をくすぐる事によって、ロザリオを菜々ちゃんの首にかけさせるのでした。
 ちなみに、くすぐりシーンのある箇所はP193で、3行程度です。

 というわけで、くすぐりによって女の子同士が仲良くなるお話に萌える方にはおすすめです。

(2012/3/3)

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