くすぐり漫画を3Dデジ額で読む

 去る2009年は立体映像元年と言われ、両眼視差を利用した立体視対応の映画が数多く公開された年でありました。
 そして今年2010年は3Dホームシアター元年と言われ、両眼視差による立体視対応テレビが本格的に市場投入される年であります。
 しかし、いくら立体視できるテレビが普及しても、それによって立体視できるコンテンツに女の子のくすぐりシーンやオシッコ我慢シーン、おもらしシーンなどが含まれていなければ、当サイトを御覧の皆様にとっては非常に残念な話ではないかと思います。

 2010年1月現在、両眼視差を利用した、そのようなシーンを含む立体映像作品の存在は、残念ながら確認できておりません。
 しかしながら静止画ベースの作品であれば、くすぐりシーンを含む立体視対応フルカラーコミック「最笑兵器ミラクル歌織」が存在します。
 全106ページのうち頭10ページが体験版に収録されており、その体験版にもくすぐりシーンが含まれています。
 ご存知のとおり、この作品は、従来のPCモニタ上の左右に並んだ画像の片方を左目で、もう片方を右目で見て頂く事により立体視を実現するものです。
 しかし、「平行法」や「交差法」と呼ばれるこのような目の使い方を習得するには訓練が必要であり、「何度やっても出来なかった」という方もいらっしゃるのではないかと思います。
 また、一般的な立体映像の醍醐味の一つとして、画面から飛び出して見える物体に手を伸ばし、「そこに見えるのにさわれない驚き」を体験する、という事が挙げられると思うのですが、平行法では不可能(手が画面に邪魔されて届かない)であり、交差法でもかなり難があります。
 同梱のアナグリフ画像を赤青メガネで鑑賞すると、そのような楽しみ方もできるのですが、色の再現性という点で大きな問題があります。
 つまり平行法・交差法・アナグリフは、それぞれ一長一短があり、だからこそ世の中では立体視のための特別な機材が必要とされているのです。

 それではこのコミックを、立体視のために作られた今時の機材で見ると、どのように見えるのか。
 これについて確認するため、そのような機材の一つを取り寄せてみる事にしました。
 PC用コンテンツなので、PC用立体視モニタを、といきたい所ですが、今使っているモニタは健在ですし、2台目として買おうとすると置き場所を考えなければなりません。もう少し小規模なもので試してみたい所です。
 そこで今回は、立体視対応デジタルフォトフレームを試す事にしました。

 立体視対応デジタルフォトフレームとしては、2010年1月現在、日本では2つの機種が入手可能です。
 2009年8月に発売された、富士フイルムの3DデジカメFinePix Real 3D W1の専用ビューアーV1と、その少し前の2009年7月に発売された、テクネ社の2D/3Dマルチメディア・フォトフレームSDP818-TEXです。
 前者は多くの量販店で販売されており、評価記事もネット上に多数存在するので、皆さんもご存知かと思います。
 対して後者は購入手段が極めて限られており、ネット上の評価記事も少ないため、あまり知られていないかと思いますが、発売日が前者より早く、つい最近までは前者よりも価格が安かったためか、立体視画像を配信する業者の中には前者よりも後者を推奨する所もあります。

 両者の主なスペックを比較すると、以下のようになります。

 FinePix Real 3D V1SDP818-TEX
画面サイズ8インチ7インチ
解像度(2D)800×600800×480
立体表示方式パララックスバリア
3D静止画フォーマット新フォーマットサイドバイサイドJPEG
3D動画フォーマット独自フォーマットサイドバイサイドMPEG4
対応メディアSDカード等
PC接続USB
電源ACアダプタACアダプタ及びバッテリー
重量630g550g
寸法216(横)*162(高さ)*30.9(奥行)212(横)*138(高さ)*28(奥行)
オーディオ出力スピーカーステレオイヤフォン出力及びスピーカー

 このように比較すると、全体的に大きな差はないものの、漫画のような文字を含む画像の鑑賞を考えた場合に特に重要な項目である画面サイズ及び解像度においてV1の方が若干勝っている事が分かります。
 気になる価格についてですが、V1は発売された2009年8月当時は4〜5万円であったものの、2010年1月現在は33,000円以下で購入できる店が存在します。対するSDP818については購入店に関して選択の余地がなく、発売当初の36,000円のままです。
 V1の3D静止画フォーマットが対応ソフト等の少ない新フォーマットである事が多少気になる所ではありますが、有志の方々の努力等により、現在はさほど大きな問題ではなくなっているようです。
 これらの事から、両眼視差を持つ静止画によるフルカラーコミックを立体視するための機材として見た場合、2009年1月現在の状況としては価格・性能共にFinePix Real 3D V1の方が優れていると判断できるため、購入機種としてそちらを選定しました。

 なお、今回の目的には直接関係ないのですが、SDP818にあってV1にない機能の一つとして、運動視差しか持たない2D動画に両眼視差をつけて立体表示するというものがあり、それに対するネット上での評価はかなり高いようです。
 また、SDP818はバッテリーが内蔵されているのに対し、V1にはバッテリーがありません。
 オーディオイヤホン出力もSDP818にあってV1にはありません。
 従って、例えば従来のくすぐりビデオなどに両眼視差をつけて立体視するといった使い方や、外出先での使用を考えるならば、今回とはまた違った選択になるかもしれません。

 さて、上記のデジコミをV1で見るためには、V1で表示できるように画像ファイルを変換し、V1に供給しなければなりません。
 画像ファイルの変換は、一般的な画像処理ソフトでPNGからJPEGに変換後、V1付属のソフトでMPOファイルに変換してもよいのですが、大量のファイルを一度に変換する場合などはステレオフォトメーカーというフリーウェアを使った方が簡単です。
 ステレオフォトメーカーはWindows用のソフトなので、2010年1月現在の状況においては変換作業はWindowsで行うのが最も簡単かつ確実です。

 変換対象である上記デジコミの本編画像ファイルは、ファイル名本体末尾の文字によって、左目用・右目用・アナグリフ・フキダシ有無を区別できるようになっています。
 例えば、本編1ページ目の画像のファイル名は、以下のようになっています。

 フキダシありフキダシなし
左目用img001l.pngimg001ld.png
右目用img001r.pngimg001rd.png
アナグリフimg001a.pngimg001ad.png

 アナグリフはV1で見る意味があまりなく、コミックとしての鑑賞にはやはりフキダシやセリフがあった方がいいと思うので、今回は、左目用・右目用フキダシあり画像をV1で立体表示してみました。
 そのための準備作業をWindowsXP及びステレオフォトメーカーのインストールされたPC上で行う場合の手順をまとめると、以下のようになります。

1、Cドライブの直下にworkというフォルダを作り、その下にsrc及びmpoというフォルダを作成します。
2、作品の本編画像が含まれているフォルダ(pagesという名前のフォルダ)から、img*l.png及びimg*r.pngを全てC:\work\srcフォルダへコピーします。
3、ステレオフォトメーカーを起動します(今回使用したバージョンは4.13)。
4、「ファイル」メニュー→「一括ファイル変換」をクリックします。
5、表示されるダイアログボックスの以下の項目を設定します。
 ファイルの場所→c:\work\src
 入力ファイル形式→左右別画像
 出力ファイル形式→右側の小さいリストボックスでMPOを選択(左側は自動的に左右別画像になる)
 出力先フォルダ→c:\work\mpo
6、「全画像一括変換開始」ボタンをクリックします。
7、変換の進行状況が表示されるので、全ファイルの変換が終わるまで待ちます。

 左目用・右目用の変換元画像ファイルの対応付けは、ファイル名に基づいて自動的に行われ、一つのMPOファイルに二枚の画像が格納されます。
 変換結果のファイルは出力先フォルダに指定したc:\work\mpoに出来上がるので、V1の取扱説明書に従ってUSB接続・転送するか、あるいはSDカードにコピーして背面のスロットに挿入します。

 作業完了後、V1の電源を入れてしばらくすると、自動的にスライドショーが開始され、上記デジコミの画像がV1の画面に順番に表示されます。
 工場出荷時の設定では画像の上にカレンダーが重なって表示されますが、本作の鑑賞時にはオフにしておいた方がよいでしょう。
 画面を間近に見ると、絵が左右にダブったりダブらなかったり部分的に歪んでたり違和感剥き出しといった感じに見えますが、説明書どおり顔を画面から適度に離すと立体的に見えてきます。
 画面に指などを近付けてみると、描かれている物体のいくつかが画面から飛び出して、あるいは画面の向こう側へ引っ込んで見えている事がはっきりと分かると思います。
 残念ながらPC表示を平行法や交差法で立体視する場合に比べて体感解像度が低下してしまいますが、そのかわり訓練などしなくてもフルカラーで立体視できます。
 文字が読みづらいのが難点ではありますが、判読できないほどではありません。また2D表示に切替えればはっきりと読めるので、3D表示と2D表示を必要に応じて切替えながら鑑賞するとよいかもしれません。

 うまく立体視できたら、例えば体験版にも含まれている3ページ目の画像を表示させ、くすぐり拷問を受けながら画面から飛び出して見えている女スパイの脇腹あたりの空間を指や棒などでなぞってみましょう。自分がくすぐり拷問に参加しているような気分になれるかもしれません。

 当サイトの主成分にこだわらなければ、すでにネット上には平行法や交差法による鑑賞を前提とした立体視画像が多数存在しており、V1はそれらを訓練なしで立体視させてくれそうです。
 発売当初から大幅に値下がりしたとはいえ、まだまだ通常のデジタルフォトフレームに比べて高額なV1ではありますが、2010年1月現在デジタルフォトフレームの購入を検討されている方は、選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。


戻る