小説作品紹介

ハイド・アンド・シーク
暗闇のかくれんぼ

 2005年5月現在劇場で公開中のサスペンス映画のノヴェライゼーションです。

 主人公のデビッドは、妻の自殺による娘の自閉症の治療の為、都会からとある田舎町に引っ越します。
 その後、娘の自閉症は多少改善されるのですが、それと同時に別な問題が出てきました。彼女はデビッドの知らない所で、チャーリーと名乗る男とかくれんぼをして遊ぶようになったのです。
 最初、チャーリーは娘の心の病が作り出す架空の人物と思われていました。しかしその後、チャーリーなる人物が実在するとしか思えない現象が彼らの周りで次々と起こるのです。果たしてチャーリーの正体は……?

 ここで紹介するノヴェライゼーションにはいくつかのくすぐりシーンが含まれていました。
 まずは18ページで、ベッドの中で寝る前の娘を、母親がベッドカバーの上からくすぐります。
 次は21ページで、デビッドが隣の家の様子を窓から望遠鏡で覗いていた時、隣の家の旦那が奥さんをくすぐります。
 最後に57ページで、引越し先の田舎のご近所の女の子が保護者役の女性にくすぐられます。
 いずれのくすぐりシーンも1〜2行で終ってしまうものなのですが、それでもくすぐりシーンが3回も登場する小説というのは珍しいのではないでしょうか。

 これらのシーンの中で特に注目すべきは2番目のシーンです。
 このくすぐりシーンは、デビッドが望遠鏡で目撃するものなのですが、それを見た時のデビッドの心境にご注目。
 実は彼もまた、私たちと同じように、女性がくすぐられるのを見るのが大好きなようです。
「娘の為に必死にがんばるお父さんは、くすぐりが大好きなんだぞー!」っていう事なのでしょうか。さすがはくすぐり大国アメリカですよね。

 あ、でもこのお父さん、実はちょっと問題があるようです。
 どんな問題かというと……それはこの小説を最後まで読んで頂くなり、あるいは映画を見て頂くなりればおのずと分かって頂けるわけなのですが……。
 うーん、それを考慮してしまうと、「こんな大問題のあるお父さんは、くすぐりが大好きなんだぞー!」っていう、かなりひねくれた解釈も可能になってしまうわけなのですね。
 それと、これらのくすぐりシーンが脚本に含まれているのか、日本語への編訳の段階で付け加わったものなのかによっても、解釈のしかたが変わってくるわけですね。
 たった2行のくすぐりシーンではあるのですが、そのシーンを一体どのような解釈をするのが正しいのか、非常に興味深く難しい問題です。
 というわけで、この小説は、日本とアメリカにおけるくすぐりを取り巻く環境や思想等について、いろいろと考えさせられる作品だったりするわけであります。

 ちなみに、これらのくすぐりシーンが映画の方にあるのかというと、それはまだ(2005年5月現在)未確認だったりします。


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