g作品

二人の教師の大作戦

1
ここは、生活指導室。
「スカート丈は膝頭っていつも言っているだろ!」と男性教師の声。
「スカートは膝頭?意味分かんないんですけど。その校則の存在意義説明してくれませんか?」と口答えする女子高生。
「短いスカートはだらしなく見えるんだよ!」
「はぁ?だらしない?まじめに膝頭にしている方がだらしないっつーか野暮で根暗って感じなんですけど。だらしないなんて学校だけの価値観じゃないですかー?」
「はあ…いいか、学校は社会に出るための訓練をする場所だ。今のうちに正しい服装を身につけていかなければいかん。そんなんじゃ社会にでられんぞ。ほら、OLを見てみろ。そんな短いスカートにしている人なんていないだろ。」
「そんなこと、分かってるから。うちらは今、この時間を大切にして生きたいわけ。女子高生と社会人を一緒にしないでください。お互い測る尺度違いますから。女子高生と社会人の価値観は違うんだよ。うちは社会人になればちゃんとやるっつーの。この短いスカートでいられる時間も今だけ。うちらは今を楽しみたいわけ。大体、スカートが短くてもいい○○高校の方がうちらの高校より勉強がよくできるし。生徒を縛り付けるのは生徒のやる気をなくさせんじゃないですか?あんたらはうちらをただ校則で縛り付けたいがためにやっているんじゃないの?何か見せろよ、スカートが短い生徒は将来もダメな社会人になるとか、成功しないとかいった確証されたデータを。ほら、ないんだよな?」
男性教師は血管の血が今にもはちきれそうだった。こいつを殴ってやろうか。
しかし、ぐっとこらえた。
36歳と34歳のこの女子高生の親は、元ヤンキーであると聞いている。
だから喧嘩も強いのはもちろんだが、相手を打ち負かす論理力もこの女子高生以上にあるとのことだった。
殴ったりでもしたら、逆に親に学校に殴りこみに来られてしまう。
「もういい!勝手にしろ!」と、男性教師は指導を投げ出した。
「教師の押し付けきんもー☆」と、女子高生はヘラヘラ指導室から出て行った。
この女子高生の名前は笠田藍。高校2年生である。
身長167cmでバスト87、ウエスト59、ヒップ85と理想的なスタイルを持ち、顔も整っている。
勉強も出来て、スポーツも万能であるし、顔も美人である。
男子の中には彼女に恋しているものも多い。
しかし、彼女は犯罪行為はしないものの、先ほどのように、スカート丈を違反する。髪を茶色くするなど、校則をよく破る。これは藍の親も承認している。「悪法は法ではない。不条理なものはどんどん破っていく」というのが、笠田家のやりかたである。
藍はクラスの女子にも人気がある。そのため、彼女のまねをして、校則を破る女子がたくさんいる。藍、いや、笠田家がこの学校の服装を乱しているといっても過言ではない。
「くそっ!ふざけんな!」
先ほど藍を指導した体育教師、江村孝太郎(52)は悔しさのあまり、机を拳で叩いた。
「どうしました?ずいぶんピリピリしていらっしゃいますが。」
となりに座っている同僚の化学教師、伊藤辰則(28)は、江村に尋ねた。
もう夕方。職員室にいるのは江村と伊藤だけである。
「笠田だよ、あいつ…もう許せねえ!」
「笠田ですか…自分もあいつには手を焼いています。今日の授業でも、『授業つまんねー。もっと楽しくしろ、うちらの金もらって働いてるんだからよ、給料泥棒が!』」
と罵倒されました。」
「もうあいつを指導したくないよ、親もこっちの言うこと全然聞いてくれないし。」と江村は嘆く。
「あいつに恥をかかせましょう。」不意に伊藤は言った。
「えっ?どういうことだ?」江村は返した。
「もうあいつは何を言っても無駄です。もう言葉で分からせることはできないでしょう。かと言って殴ることも相手の親に何されるかわからないですし、私たちの教師生活も危うくなってしまうのでだめです。
もう彼女を辞めさせるしかないです。しかし、退学にしようにも、彼女はずる賢く退学にならない程に悪いことをしている。となると、向こうがやめるようにこっちが仕向けるしかありません。
もう屈辱的な恥をかかせてやるんです。
そしてヤツに莫大な心の傷をつけま
しょう。彼女はプライドはとても高いです。
すごい恥をかいたら、もう学校にはいられなくなるでしょう。ここをやめてしまうくらいショッキングな恥をかかせましょう。
彼女がもちろん私たちがやったとは知られずに。」
「いいなそれ!」伊藤の提案に江村は快諾した。
「あいつのせいで俺はストレスがたまって眠れない日々が続いた。高校は義務教育じゃないんだ、いちいちめんどうみる必要はない、もう上の言うことを聞かん人間は見捨てられるってことを身をもって分からせなくてはいけない。それにあいつが恥をかくのであれば、それは一石二鳥だ。だがどうするんだ?」
と江村は返した。
「それは相手をまずはよく知ることです。彼女の行動を観察しましょう。私にまかせてください。先生とは違う視点で観察しますから」
そして一週間後。
また二人だけの職員室。
伊藤は江村に報告する。
「彼女の特徴が分かりました。一週間、校内にいる彼女を観察してみましたが、彼女はその間ある場所に一度も行っていないんです。
どこだと思いますか?」
「さあ…図書室か?」
「いえ、図書室にこの一週間で行っていない人はたくさんいます。彼女も行っていません。でも誰もが行く場所に彼女は行ってないんですよ。どこだと思いますか?先生は1日に何度も行っている場所です。」
「うーん、どこなんだよ、もったいぶらないで教えてくれ。」
「それはトイレです。」
「なに?トイレに一度も入っていないだと!」
「はい。それから。こちらを見てください。」
伊藤は、一枚のレントゲン写真を取り出した。
「これは、学校で撮影した彼女のレントゲン写真です。こちらが膀胱です。」
伊藤は、レントゲン写真で写っているところを指差す。
「うっ、大きいな。」
「ちなみに。」伊藤はもう一枚レントゲン写真を取り出す。
「これは江村先生、あなたのレントゲン写真です。そしてこれが膀胱です。」
そこには、江村のこじんまりとした膀胱が映し出されていた。
大体藍の5分の1だろうか。
「ぐっ、くそ、うらやましい。」
江村は悔しがった。自分は藍より10cm身長が高い。しかし、膀胱の差はこれだけある。
江村は、子供の頃から、膀胱が小さいせいか、よくトイレに行っていた。小学生2年の時には、おもらしして、いじめられたこともある。
それでいじめに負けない様、体を筋骨隆々に鍛え、体育教師になった。
しかし、膀胱は鍛えられない。いくら体を鍛えようと、結局トイレに行く頻度は少なくならなかった。逆に、最近は加齢により、トイレに行く頻度が増えた。ほぼ休み時間ごとにトイレに行っている。
江村はずっと「頻尿」の解けない束縛を背負って生きている。
「なんで…なんでこんなに差があるんだ…くそっ!」
伊藤は続けた。
「さて、これでどうやって恥をかかせるか決めました。」
「なんだ、それは?」
「おもらしさせることです。」
江村は一瞬黙った。
「何?おもらし?だと?」
「はい。人間っていうのは、自身のあるものを覆されると、すごく恥をかきますよね。江村先生だって、自分は生徒指導の名人と自負していましたが、ヤツを上手く指導できない。それでかなり屈辱でしたよね?」
「う、まあな。」
「彼女は勉強も出来るし、スポーツも出来る。しかし、それがダメになるよりも、この自分の鉄壁の膀胱が破れる。それが一番屈辱じゃないでしょうか。」
「なるほど…いい案だが、しかし、もし俺たちがやったとバレたら、クビになってしまう、いや、それどころか、全国のマスコミにバッシングされて、刑務所行きになっちゃうぞ。」
「大丈夫です。私は化学教師。上手くバレないように工作しますよ。」
「そうか、信頼して大丈夫か。それなら頼むぞ!」
「実行は来週の月曜日です。」
「「待ってろよ、笠田藍!」」

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